カテゴリ:C 【知的生産・情報カード】
ーーー 記事 ーーー 【知的生産】 「考える力が弱い人」には“枠組み”が欠けている 出口 治明 :APU(立命館アジア太平洋大学)学長 5/2(土) 7:55配信 新型コロナウイルスの問題をはじめ、 変化の全く読めない時代を私たちは生きています。 このような有事にこそ、 社会を生き抜く力を子どもたちに与える必要があり、 それが教育の目的の一つでもあります。 『「教える」ということ』の著者で立命館アジア太平洋大学(APU)学長・ 出口治明氏が 「子どもに与えるべき力」 について解説します。 ◆ ◆ ◆ 僕は立命館アジア太平洋大学(APU)の学長に就任した当初から、 わが国の教育の根幹となる教育基本法や学校教育法、 学校教育法施行令などの法令を読み込み、 「なぜ、日本の教育システムはこのような形になったのか」 「何を目指して教育を行い、どんな人間を育てることを教育の根本的な目的としているのか」 などについて考えてきました。 わが国の教育は、教育基本法を礎として進められていますが、 教育基本法第1条では、 教育の目的を次のように規定しています。 「教育は、人格の完成を目指し、 平和で民主的な国家及び社会の形成者として 必要な資質を備えた 心身ともに健康な国民の育成を期して 行われなければならない」 (2006年12月、戦後59年ぶりに改正) すなわち、 「一人ひとりの人格の完成」 「国家・社会の形成者として必要な資質を備えた市民の育成」 を行うことが教育の根幹です。 僕は、教育基本法が定める目的を次のように解釈しています。 【教育の2つの目的】 (1)自分の頭で考える力を養う ……自分が感じたことや自分の意見を、 自分の言葉で、 はっきりと表現できる力 を育てること (人格の完成) alex99 「自分の言葉で、ハッキリと表現する力」 残念なことだが 欧米人と比較して日本人には この、現代人の資質が 「顕著に」不足している (2)社会の中で生きていくための最低限の知識(武器)を与える ……お金、社会保障、選挙など、社会人になるとすぐにでも直面する世の中の仕組みを教えること(社会の形成者として必要な資質を備えること) ◆ ◆ ◆ ■自分の頭で考え、自分の言葉で表現できる人間になる 僕の解釈する教育の目的である、 「(1)自分の頭で考える力を養う」について考えてみましょう。 17世紀の哲学者、パスカルが、著書『パンセ』の中で、 「人間はひとくきの葦にすぎない。自然のなかで最も弱いものにすぎない。 だが、それは考える葦である」 (参照:『世界の名著 第24パスカル』前田陽一 由木康・訳、中央公論社) と述べているように、 人間は思考を行うからこそ偉大であり、 人間の尊厳のすべては、考えることの中にある といえます。 2019年12月以降に世界的な大問題となった新型コロナウイルスがいい例です。 新型コロナウイルスの蔓延はとどまるところを知らず、 2020年4月16日には、日本全国に緊急事態宣言が適用されました。 世の中がどう変化するか誰にもわからないときに、 一番大事なのは、原点から考える力です。 変化に対応するには、 他人の意見に左右されず、 自分の頭で、自分の言葉で、 データを使ってロジカルに考えるしかありません。 だからこそ教育では、 「自分の頭で考える力」を育てる必要があるのです。 alex99 有事には データを使い、ロジカルに、自分の頭で考える ◆ ◆ ◆ ■考える力を身につけるには「先人の真似」から入る スポーツでも芸術でも、 何らかの技術を習得しようと思えば、練習が不可欠です。 人間は不器用な生き物なので、 練習しなければ力を高めることはできません。 脳も例外ではなく、考える力を鍛えるには、練習が必要です。 ではどうすれば、考える力を育てることができるのでしょうか。 僕は、一流の人の真似をすることから始めるべきだと思っています。 考える力は、料理をつくる力と同じです。 まずお手本となるレシピ通りにつくってみる。 食べてみる。味見をして、 「ちょっと塩辛いな」と思ったら、醤油や塩を減らす。 味が薄いのなら、醤油や塩を足す。 その繰り返しで、おいしい料理をつくる力がついていきます。 考える力を身につけたいのなら、 料理のレシピを参照するように、 まず優れた先人の思考の型や思考のパターン、発想の方法 などを学ぶことです。 アリストテレスやデカルト、アダム・スミスなど、 お手本となる超一流の先人の著作を読んで、 彼らの思考のプロセスを追体験し、 他の人と議論を重ねながら、 考える癖を身につけていく。 これが、考える力を鍛える最も普遍的な方法だと思います。 alex99 退部の古典を読むことも大切だが 私は ・ 偉人の残した名言 ・ ことわざ ・ 成句 等も、コンパクトながら、人類の知恵が詰まっている 手軽に安直に知恵を授かる手段である そういう風にも思っている ◆ ◆ ◆ 人間はそれぞれ顔が違うように、異なった価値観や人生観を持って生きています。 つまり、人間はそれぞれの価値観や人生観という 色眼鏡をかけて世界を見ているのです。 したがって世界をフラットに見るためには方法論(思考の枠組み)が必要です。 僕は、タテ・ヨコ・算数という3つの枠組みを提唱しています。 「タテ」は、昔の人の考え方を知ることです。 人間の脳は、この1万年ほどまったく進化していないといわれていますから、 弥生人と私たちの喜怒哀楽や判断力は同じです。 だから昔の人の考え方が参考になるのです。 「ヨコ」は、いうまでもなく世界の人のことです。 ホモ・サピエンスは単一種で、 黒人や白人といった違いは単に気候の差から 生じたものにすぎないことが 遺伝子分析等から明らかになっています。 たとえば僕は学校で源頼朝は 平(北条)政子と結婚して鎌倉幕府を開いたと習ったので、 日本の伝統は夫婦別姓であることがわかります。 世界を見ると、先進国クラブであるOECD37カ国の中で 法律婚の条件として夫婦同姓を強制している国は (わが国を除いて)皆無です。 この2つの事実を知れば、 「夫婦別姓のような考え方は日本の伝統ではない」、 あるいは、「家族を壊す」などと言っている人は、 単なる不勉強か、イデオロギーや思い込みの強い人 であることがわかります。 「算数」は、「エピソードではなくエビデンス」で、 あるいは「数字・ファクト・ロジック」と言い換えることができます。 平成の30年間を考えると 日本の正社員の労働時間は年間2000時間を超えており (まったく減少していない)、 平均成長率は1%あるかないかです。 アップル・トゥ・アップル(同じ条件のもの同士を比べること)で 人口や国土、資源(の有無)等の条件がよく似たドイツやフランスと比較すると、 彼らは1400時間前後で平均2%の成長を達成しています。 このデータ(エビデンス)から類推される結論は、「日本のマネジメントがなっていない」ということです。こうした明白なエビデンスがあるにもかかわらず、 日本的な経営(マネジメント)が世界を救う などと言っている人がいるのは情けない限りです。 根拠なき精神論ほど社会を害するものはありません。 ■将来を想像するには、過去を見るしかない タテ・ヨコ・算数の中で、 「タテ(過去、歴史)」についてもう少し述べておきましょう。 人間は単純な動物ですから、 「今日よりも明日がいい」 「明日よりもあさってがいい」と、 一直線の考え方に馴染みやすい。 しかし、実際の歴史を見ると、 まっすぐに進んでいるわけではなく、 ジグザグと蛇行したり、 行ったり来たりを繰り返します。 世界がどの方向に進むのか、正直、誰にもわかりません。 しかし、未来はわからなくても、 過去に起きた出来事をヒントにしながら、 将来の選択を行ったり、類推したり することは可能です。 ダーウィンの「進化論」が指摘しているように、 人間が動物である以上、生き残るのは 「賢さ」や「強さ」ではなく、 「運」と「適応」(適切に対応)以外の条件はありません。 すなわち、 運(適切なときに、 適切な場所にいること) を活かして上手く適応できる人のみが生き残るのです。 そして、将来を想像するには、過去を見るしかありません。 悲しいことに人間には過去以外に教材がないのですから、 alex99 私は少し違う考えを持っていて いわゆるSF(SCIENCE FICION)も 大いにヒント・参考になると思っている 本を読んで歴史を学び、 先人をロールモデルとする必要があるのです。 新型コロナウイルスについては 過去の3大パンデミック (14世紀のペスト、15世紀のコロンブス交換、20世紀のスペイン風邪) が参考になるかもしれません。 パンデミックは多くの犠牲を伴いましたが、 新しい世界を切り開く原動力ともなりました。 例えばペストはルネサンスを生みました。 知識はもちろん大切です。 しかし、時代の変化に適切に対応するためには、 自分の頭で考える力こそが重要です。 どのような状況が訪れたとしても、
自分の頭で考え、決断できるようになれば、 自分の道を自分で切り開けるようになるのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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