カテゴリ:西アジア・トルコ
さっきのテレビ・ニュース(フジテレビ)を見ていた叔母が「あんた、○○先生が小泉首相とテレビに出とったよ」と僕の知っている人の名前を挙げた。特徴を聞くとそのようだった。小泉首相はトルコのエルドアン首相との会談の他、どうもアナトリア文明博物館に行ったらしいのだが、その案内でこの○○さんが同行したようだ(たまたまトルコに居たのだろうか)。まああの博物館を案内するならあの人以上の人は居ないだろうし。
明らかに本来はイスラエル・パレスチナ訪問のおまけのような扱いだった小泉トルコ訪問だけに、テレビニュースでの扱いは決して多くない。今は緊急治療室で寝ているシャロン首相と会談していれば、扱いはこんなに小さくなかっただろう。一昨年の春にエルドアン首相が訪日した時には僕も日本にいたのだが、折しもイラク人質事件と重なってしまったせいか、テレビや新聞のニュースでの扱いはほとんど無かった。まあその訪日すら報道されない国家元首も多くいるのだろうから、日本にとっての重要性からいえばこんなものかもしれない。残念なことだが。 (引用開始) <小泉首相>トルコ首相と会談 中東和平の協力を確認 【アンカラ松尾良】小泉純一郎首相は10日午後(日本時間10日夜)、トルコ・アンカラの首相府でエルドアン首相と会談し、中東和平やイラクの安定で緊密な協力を確認した。小泉首相は会談後の記者会見で、イラクに派遣している自衛隊の撤退時期について「よく現地や国際社会の情勢を見極めて判断したい」と述べ、トルコと共同でイラクへの医療支援を検討することも明らかにした。 中東和平について小泉首相は記者会見で、「トルコはイスラエル、パレスチナと良好な関係を持ち、日本とは中東の安定に共通の利益を持ったパートナーだ」と表明。対イラクも含めた支援について「両国が協力できる分野を具体的に詰めたい」と述べた。エルドアン首相はイスラエルのシャロン首相の復帰が困難との見通しについて「イスラエルの政治が決める問題だ。選挙の結果を今予想するのは正しくない」と述べ、イラクについては「すべての民族、宗派が参加した政府の成立が必要だ」と強調した。 現職首相のトルコ訪問は1990年の海部俊樹首相(当時)以来で、小泉首相とエルドアン首相の会談は04年4月のエルドアン首相の来日時につづき2回目となる。 (毎日新聞) - 1月11日2時2分更新 (引用終了) この他会談では、前日明らかになったイランによる核開発再開問題なども話し合われたようだ。トルコにとってイランは隣国、一方イランにとって日本はドイツに次ぐ経済援助国だから(もう中国に抜かれたかもしれないが)、それぞれ影響するところは小さく無いはずなのだが。 小泉首相は明日イスタンブルに移り、日本の援助で作られるボスポラス海峡海底トンネルの工事現場を視察し、またイラン・イラク戦争中の1985年、イラクによる無差別ミサイル攻撃を目前にしてテヘラン在留邦人の救出に向かったトルコ航空の元機長と面会し、礼を述べる予定だそうだ。なかなか粋な演出じゃないか。 小泉首相も「トルコは無類の親日国だ」と言ったそうだが、それはまあ当たっていると思う。もちろんお互い遠く離れていて利害関係が少ない事や(よく「隣国は仲良くしよう」というが、実は隣国同士の外交ほど難しいものは無い)、無知などもあるとはいえ、これは身をもって感じている。「科学技術をもった経済大国」、「戦災(原爆!)からの復興」などの面で、トルコなど西アジアの人々は日本に好意を持っている。もちろん内心嫌っているアメリカに対抗する勢力としての期待もあるのだろう。 ことトルコに関して言えば、そういう「非米勢力」としてむしろ期待を抱くべき中国はあまり話題にならない。トルコ人が同族とみなす東トルキスタン(新彊ウイグル自治区)のウイグル族を中国共産党が支配していること、学校の歴史教育で「トルコ人は匈奴やモンゴルと同族」「万里の長城はトルコ人の南下を恐れて建設された」と教えられており、どこか中国を見下す感情が見受けられる事、そして今のところトルコに入ってくる中国製品の大部分が安価な粗悪品に限られていること(つかそんなものも輸入しないといけないトルコもどうかと思うが)、そして綿花・繊維生産などでむしろ中国製品の圧迫を感じていることも関係しているかもしれない。 まあトルコ人はブルース・リーやジャッキー・チェンを日本人と信じて疑わないなど、どうもごちゃごちゃにしているところがある。僕が「彼らは皆中国人だ」と言うと驚いて、「じゃあ日本にはどういう映画スターがいるんだ?」と聞き返されて返答に窮するのは毎度の事である。大部分の日本人にとってアラブ人・イラン人・トルコ人の区別がなく、どの国もアラビア語を話し、毎日5回の礼拝を忘れず、くねくねした文字を使う、と思っているのと好対照だろう。 ついでに。昨日「日本のメディアはアジア人民の感情を逆なでする報道を繰り返している」とかなんとかどこかの大国の外務省報道局長は言ったそうだが、「アジア」の語源はもともと今のトルコ限定の意味だった(だからトルコの地域の事を「小アジア」と言う)。インドもイランもトルコもアジアでしょう。言葉の使い方が間違ってますぜ。 まあヨーロッパ人がヨーロッパ以外の地続きの地域を「アジア」と一括りにしたように、中国政府にとってのアジアは自国の隣接国もしくはかつて清朝に朝貢した地域だけなのだろう。便利な言葉ではある。世界地理知識の無さはアメリカ人や大部分のヨーロッパ人も似たようなものだろうが(中国人一般の地理感覚についても興味があるところだ)、それは「自分が世界の中心」と思える人々の特権なのかもしれない。 そういう僕だってサハラ以南のアフリカはどこも同じと扱ってしまいがちなのだが。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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