07 shoot
お題発布元キミへ紡ぐ言葉。サマ頭を撫でてくれる手のひらが、まるでお父さんのようだった。「なぁ、お前、どこに行きたいの? 何になりたいの?」迷うことは許しても、甘えることは許さない声だった。何かの呪文のように、私の名前を呼んでくれた。誠実な想いと共に。「未花、未花」と。未来の花、だって。わが親ながらずいぶんなセンス。そういえば漢文の授業聞いたときはへこんだなぁ。「未だ、花ならず」なぁんてね。……未来って、いつだよ?いつかきっとって言う言葉はね、きっと、未来のある人しか言っちゃいけないんだよ「未花って言う名前はね……」勝手に話し出される「私」の由来。知らない。そんなの聞きたくないし。「どんな花になるかは、君に選んでほしかったから『未』って言う字を使ったんだよ」未来の花、揺れる、どんな香りで未来の花、開く、どんな色であたたかい手のひらが、まるでお父さんみたいだった。まるでも何も、私はお父さんの手のひらがどんな形でどんな温度なのかも知らなかった。この人と、こんな距離で話すのも初めてだった。「若葉でも花でもなんでもいいよ。汚い感情でも罵倒の言葉でも何でもいいよ。未花が今、僕に見えないように抱え込んでいるものがなんなのか、そろそろ教えて?」抱え込んでいるものなんて、何もない。本当に、戸惑うくらい私は何も持っていない。本当に。「ミライノハナ」「え?」絞り出した声はやっぱり届かなくて、私はまた口を閉ざす。ねえ、空っぽな私の中に、「未来」があるって、誰でもいいから、そうあなたでいいからどうか見せてよ。私に見せてよ。……未来の花、どう咲く?