「人類最古の哲学」 カイエ・ソバージュ<1>
中沢新一 2002/1 講談社選書メチエ
カイエ(Cahier)は、フランス語で「ノートブック」、ソバージュ(Sauvage)は「野生の」の意である。大学の「比較宗教論」の講義録である。5冊シリーズの第一冊。2001年の4~7月の期間にはなされた「神話」に関する部分が収録されている。古事記や日本書記が学校で教えられなくなったことを惜しみながら、神話といわれる何万年もの間に積み上げられた人類の最古の哲学を紐解く。レヴィ=ストロースの「野生の思考」に触れ、アメリカ・インディアンの文化に触れる。
この講義の行き先が、すでに読んでしまったカイエ・ソバージュ<5>「対称性人類学」や「アースダイバー」を経て「芸術人類学」に流れていくプロセスを考えてみれば、このスタートは、まずまず穏やかで、行く手に夢を書き立てるスタートと言えるだろう。
ただ、この時期は、麻原集団事件の悪夢から解放された中沢が、ようやく次のステップに歩み始めたような雰囲気の時期でもあり、また、9.11前夜でもある。この次の<2>で、その新たに21世紀最初におきた大事件を、どのように捉えているかを見るのも、ちょっと楽しみだ。
つづく