地球人スピリット・ジャーナル2.0につづく
「チベットの『死の修行』」
ツルティム・ケサン 正木晃 2000/1 角川書店
この著者二人によるちくま書房の「チベット密教」を、昨年、図書館の一般開架棚で手にとったは時は本当におどろいた。インドとチベット密教が生み出した最高度の成就法と言われる「吉祥秘密集会成就法清浄瑜伽次第」がテキストとして紹介されていた。その著者コンビとほぼ同じテーマで、同じ時期に出版されているのが、この「チベットの『死の修行』」である。
本書の執筆者の一方であるツルティム・ケサン(白館戒雲)は、ダライラマ14世倪下の師にして当代最高の権威であった故ティジャン・リンポチェ(1901~81)から、1963年に「秘密集会聖者流」の灌頂を受けた。さらに、1969年には、ダライラマ倪下から、本書の原テキストである「吉祥秘密集会成就法清浄瑜伽次第」の講義をたまわった。そのほかにも、「秘密集会聖者流」の生成のプロセス」ならびに「完成のプロセス」に関するさまざまな教えを、すぐれたラマたちから授かることができたのは、今生における最高の幸福とおもっている。p9
チベット密教、その神秘に魅かれたままの私であるが、その文化的風土といい、その伝統といい、そのシステムといい、ほとんど何の知識がないことに我ながら唖然とするだけである。そのような状態でありながら、「最秘かつ最難の修行」p9とされるものに触れていくというのは、はたしてどうなのだろうか。怖いものみたさとともにある、一時も早く逃げ出したい気分は、T・イリオンが陥った心境にさも似ているかもしれない。
この本は、「チベット密教界にあって最秘かつ最難の修行とされる『秘密集会聖者流』の『生成のプロセス(生気次第)』を、ツォンカパによるテキストから翻訳し、できるかぎりわかりやすく解説を加えたものだ」p9という。私はどうも、このような経典類とか術語などを覚えるのが苦手だ。私はどこか他の書き込みで「秘密集会タントラ」を他の経典と混同してしていたが、こちらは「一切如来金剛最上秘密大教王経」と訳されているようだ。
「吉祥秘密集会成就法清浄瑜伽次第」というお経の名前はそうとうに長く、ちょっとすぐには覚えられないが、正式な名前はもっと長く複雑で『[すべての部族に遍く住する]遍主金剛菩薩垂を近修の四加行によって悦ばせる[秘密]集会の清浄瑜伽成就方便次第と名づけるもの』p30というらしい。フー。
正確ではない、しかも偏見に満ちた情報が、なにをもたらすか。それらの結果が、オウム真理教の暴走を生んだというのは、いいすぎだろうか。実際問題として、私たちは、オウム真理教に家族を奪われた方から、市場に流通するチベット密教礼賛の書物と、チベット密教を毛嫌いする専門家たちの書物の、その空隙が、多くの若者たちを迷わせたという批判を耳にしている。
こうした事態には、ダライラマ14世倪下も非常に心を痛めておられ、1998年に来日された際、日本において、あやまった理解が一掃され、正しいチベット密教が広まるようにと、ツルティム・ケサンに直接、本書の出版を依頼された。かつて、私たちは「チベットの『死の修行』」を出版することを、最終的に決意したのである。p11
ふう、ここまで読んだだけでも、ただごとではない。今回は一応ひととおり目をとおしたが、もともと目を通しただけでは、理解できるような代物ではない。たくさんの言語によるマントラがカタカナ表記されていたりして、それを黙読しただけで、その本来の意味がわかるものではない。例えばこういう一文がある。
オーム サルヴァ タターガタ プージャー ヴァジュラ スヴァバーヴァ アートマコハム(オーム 私は一切如来の供養金剛の本質そのものである)
こう唱えて、一切如来の供養金剛の本質こそ、私である、という自負をかためなさい。 p180
その他、たくさんのことが書いてある。ちょっと気になることといえば、ここに書かれているタターガタ(如来)とアガータという言葉の類似性である。ある人が以前に、そのことを指摘してくれていたが、さて、今後、その距離は縮まるのであろうか・・?
ここに来て、私はOshoの言葉を思い出す。
私は、こういったことすべてをすでにOshoに話しました。そして、チベット人たちについて、また彼らがここインドで私たちを助けることができるかどうかということについて、彼にたずねました。彼は答えました。
「いや、彼らは助けることはできない。現代にとって彼らの厳格さは過剰であるし、彼らの霊的精神的進歩の方法は時間がかかりすぎるのに、時間は短いからだ。現代ではすみやかに助けが必要とされるからだ。だから、彼らが大勢の人々を助けることは不可能だ」 「マイトレーヤ」p71
ここからは本当に、足元の怪しい、デリケートな旅路となる。私はOshoのサニヤシンであり、Oshoの瞑想に導かれていることを、明確に自分に明記しておくことが必要になってくるだろう。
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<再読>2008/09/11