「聖なる場所」 地球の呼び声 ジェームズ・A.スワン /葛西賢太・訳 1996/05 春秋社
SPS主宰者の「じつは自然は気前がいい 」に先立つ一冊。鎌田東二が日本語序文を書いている。
私が本書の著者ジェイムズ・スワンに会ったのは、1990年(正しくは1991年・引用者注)に仙台で行なわれた「スピリット・オブ・プレイス・センダイ」においてである。「スピリット・オブ・プレイス」はスワンが中心となって推進してきた、環境と文明と人間の調和ある関係を構築し再編していくためのシンポジウムやワークショップに名づけられた名称である。環境心理学を専攻してきたスワンは、聖地として伝承されてきた特別な場所が環境と人間とのかかわりを考える上できわめて重要な意味と役割を持っていることに注目し、シャーマンや地球物理学や建築家やエコロジストなどさまざまな職種や立場の人に呼びかけ、場所の精神性や霊性を掘り起こす催しを粘り強くつづけてきた。ii
この本は転記すべきところが多すぎるので、恣意的に現在の私が関心あるところだけ抜書きしておく。
数週間後、機会あってチェロキー族の呪医、ローリング・サンダーにこの夢を話することができました。彼は病気を治療し天候を変える優れた能力を持っています。その能力については研究者たちの記録文書もあります。私の話を聞きながら、彼は椅子にもたれ、トウモロコシパイプをしばらくふかしていました。「ジム、ラップ人について調べるべきだ。そこで君はきっと何かおもしろいことをみつけるだろう。」13p
YMCAの場合と、シャスタ山の麓のパンサードウ付近などの、神聖な泉のそばで行なうスウェット・ロッジの場合とでは、態度も経過も違い、まったく異なった結果にいたりうる。私は大学陸上競技をし、卒業後はダイエットのために、いろいろなサウナに行ったが、これらの健康ランドで、どっと汗を流したり、何らかのヴィジョンのみたり、何者かの声を聞いたように感じたりしている人を見たことはない。インディアンのスウェット・ロッジでは、こういうことはいつもおこっているのだ。p37
チェロキー族の神話には、自分たちの祖先がプレアデス星系から出たという言及があり、北米インディアンの創造神話では、遥かな星々から人々が渡来したと語る創造神をもっている部族もたしかにいるのだ。大昔に何が起こったかなど、誰にもわかるものではない。p51
チェロキー神話にプレアデス、とはちょっと驚き。
チェロキーの人々が、指導霊ジョメオキはノースカロライナ州のパイロット山に住んでいるといい、プノペスコットの人々が、ワシの翼と人の胴と鹿の角を持っている霊ポモラはメイン州のカターディン山に居ついているといい、メキシコのゾック族は、七つの頭を持っている大蛇ツァアツァンがチマラパ山にいるという。p58
1954年のある日、私は(サウスダコタ州の)ブラックヒルズを車で走っていました。ブラックヒルズにいると、高くて深い祈りと観想の中にはいっているようだと、自分の日記に書いたのを覚えています。草の葉一枚一枚が、この世の光ばかりではなく別のところからの光も受けて、輝いていました。この体験で私の魂は力づけられました。私はこのときには、そこが力を持った場所だということを知りませんでした。(レア・ホワイトの私信より)p86
この記述は、1953年春、シャスタ山の麓をドライビング中に、チェロキー青年・多火手の身の上に起こったことを連想させて、非常に興味深い。
編集者でもあり記者でもあるパトリシア・コリングスは、シャスタ山の万年雪の残る境界線まで車で上がっていき、道端に車を止めると、そこから歩きだした。雪と静けさだけの世界で、澄み切って青い空は強烈だった。その時かすかに鐘の音がちりんちりんと聞こえてきた。音楽のようだった。その音は下から聞こえてくるというよりも、四方八方から聞こえてくるのだった。p104
詩人ミハイル・ペルディチェフスキーは、パンサー・メドゥからそれほど遠くないところで、シャスタ山へ歩くよう命じられたように感じた。この場所は過去何世紀もの間、インディアンが儀式のために使っていた場所である。出し抜けに「私を守ってください」という声が聞こえた。その後まもなく彼女は、広大なスキー場がまさにその場所に建設されようとしていることを知った。それでその声が、助けを求める山の声であることがわかった。組織をつくったりした経験はなかったので、彼女は環境保護の運動の中に身を投じ、開発計画に抗議するために「シャスタ山を救う会」(Save Mount Shasta)という団体を作った。彼女が語っているところによれば、起こってくることに身をまかせると、睡眠時間が一日三・四時間でも大丈夫なようになり、そして夢も山の情景や象徴でみたされるようになった。こうした体験に触発されて、700人分の署名を集め、スキー場開発計画中止の請願を出すに至ったのである。p126
風水師は、竜や獅子や蛇や鳥などの神話的シンボルが、大地を表わすための単なる隠喩にどどまらないという。彼らは力を持った霊的存在なのである。p231
ここまでくると何でもありありとなってくるが、チョギャム・トゥルンパの「シャンバラ」を思い出した。
東インドの聖者シュリ・オーロビン度が「大精神」あるいは「超精神」と呼んだ宇宙的な知性は、シャーマニズムを実践するものにとっては特に重要なものである。p244
「土地の面倒を見てやると、今度はこちらが面倒をみてもらうことになる」と、ドン・ファンはカルロス・カスタネダにいっています。これはまっとうなアドバイスです。p259
個人的にSPSをレポートした文章が残っているので、近日中にHPにアップすることにする。