ザ・ユタ・ヒップ・クインテット 『ザ・ユタ・ヒップ・クインテット(The Jutta Hipp Quintet/Jutta /New Faces-New Sounds From Germany)』(1)
テーマ:Jazz(1970)
カテゴリ:ジャズ
半世紀以上前の欧州ジャズの最前線 ユタ・ヒップ(Jutta Hipp)は1925年ドイツ生まれの女性ジャズ・ピアノ奏者。この生まれ年からもわかるように、青春時代を戦時下で過ごし、1946年にはソヴィエト軍の侵攻を避けるべく移住したという経験も持つ。30歳でニューヨークに移り住み、2003年に78歳で亡くなるまでそこで過ごした。ただし、ジャズ奏者としては1958年に第一線を退き、活動期間は短かった。よく言われる話としては、彼女は人前での演奏に極度に緊張するタイプで、ライヴ演奏に向かなかったため、早々にシーンから姿を消したというものである。 そんなユタ・ヒップの作品としては、ライヴ演奏を収めた『ヒッコリー・ハウスのユタ・ヒップ(Vol. 1 & Vol. 2)』、ズート・シムズとの共演作『ユタ・ヒップ・ウィズ・ズート・シムズ』という、ニューヨーク進出後の作品がよく知られている(特に後者は筆者のお気に入りでもある)。けれども、本盤『ザ・ユタ・ヒップ・クインテット』は、彼女がニューヨークに渡る前の、彼女の欧州時代を捉えた1枚で、フランクフルトにて録音されたものである。ちなみに、邦盤では『ザ・ユタ・ヒップ・クインテット』がタイトルとされているが、一緒に記載された『ニュー・フェイセズ・ニュー・サウンズ・フロム・ジャーマニー(New Faces-New Sounds From Germany,ドイツからの新しい顔ぶれ、新しい音)』の方を正式タイトルと考える人もいれば、ジャケット表面には『ユタ(Jutta)』とだけ記されているので、こちらを正規なアルバム表題であると見なす人もいる。いわゆる“5000番代”(5000番代についてはこちらを参照)のレコードである。 これが録音されたのは、1954年の4月。ユタ29歳の時である。遠く離れたアメリカの地では、マイルス・デイヴィスが『ウォーキン』を吹き込んでいた時だ。その前後の動きを見ても、アメリカではジャズ界にまさしく革命の波が押し寄せていた。その一方で、ヨーロッパのジャズ・シーンにいたユタ・ヒップの演奏は、いわゆるクール・ジャズ的な雰囲気を湛えている。サックス(テナーのヨキ・フロイント、アルトのエミス・マンゲルスドルフ)を聴いても、トリスターノ派みたいな演奏をしている。 こういう別世界にいたユタは誘いを受け、まもなくニューヨーク行きを決意することとなる。ユタにNY移住を勧めたのは、NY在住の英国人評論家、レナード・フェザーだった。ジャズ界の新たな展開の荒波が起きている場所へとユタを駆り立てたものは何だったのだろうか。この辺の詳しい話は知らないけれど、こういうふうに、場所的には無関係だったミュージシャンが移動し、新たな接点が生まれていくという運命の糸みたいなものを考えながら音楽に耳を傾けるのもたまには楽しい。 ちなみに本盤の元になった音源は、その当時に本国やアメリカでその一部がEPとして発表された他、彼女の死後、『レジェンダリー・ユタ・ヒップ・クインテット1954 フランクフルト・スペシャル』(筆者は未聴)として、全編がリリースされている。 [表題曲] 1. Cleopatra 2. Don’t Worry ’bout Me 3. Ghost of a Chance 4. Mon Petit 5. What’s New 6. Blue Skies 7. Laura 8. Variations Blue Note 5056 [パーソネル、録音] Emil Mangelsdorff (as) Joki Freund (ts) Jutta Hipp (p) Hans Kresse (b) Karl Sanner (ds) 1954年4月24日録音。 下記ランキング(3サイト)に参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓ ![]() ![]() ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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