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音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

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2013年06月18日
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テーマ:Jazz(1961)
カテゴリ:ジャズ

お宝や希少価値と関係なしに名盤は名盤


 アート・ペッパー(Art Pepper)の全盛期は1950年代にあった。このことはおそらく疑いようがない事実だろうと思う。1970年代の復帰後の作品についての個人的好みはさておき、演奏者として、テクニックにおいてもアドリブの閃きにおいても、50年代が絶頂というのは、大方の意見が一致することだろう。その時期の名盤としてとりわけ有名なのは、コンテンポラリー・レーベルに残した『ミーツ・ザ・リズム・セクション』である。この時期のアート・ペッパーは専属契約を結ぶことになったコンテンポラリーで録音をしたわけだが、実際には、これと前後していくつかのマイナーレーベルにも吹き込みを残している。そうした作品の一つがこの『モダン・アート(Modern Art)』というわけである。

 イントロというマイナーレーベルの盤だけに、かつては“希少盤”、“幻の名盤”などともてはやされた。筆者自身は別にオリジナル盤がどうこうという聴き方をしているわけでもないし、“希少性”には何の価値も感じない。レアな音源で喜ぶのは、そのアーティストの全音源に触れたいと思うような、特別なファンだけでよいと思う。問題は、ときおりそうした希少性と内容の素晴らしさが合致してしまうことがある。ジャズのマイナーレーベル作品にそういうケースは多々あるし、ロックやポップスの大レーベルの作品でも、過去作でいいものがひょっこり廃盤になってしまうこともある。そのようなわけで、希少盤云々ということを抜きにして、名盤は名盤。そんなスタンスに立って、この『モダン・アート』の真価はどこにあるのだろうかを考えてみたい。

 ひとことで言えば、本盤でのアート・ペッパーの演奏は切れ味が鋭い。“鋭い”といっても、音そのものがとがっている(という風に聞こえる曲もあるけれど)というのではなくて、演奏から感じ取られる雰囲気が“鋭利”だと言っていい。この喩えが適切なのかどうかわからないけれど、普通は柔らかくそして激しく竹刀を振り回すところを、真剣を持って立ち振る舞っているような感じがする。その真剣は相手を切り付けるために動いているのではなく、居合いの演武のように時に静かに時に鋭く動く。

 ペッパーが麻薬中毒に悩まされたことはよく知られている。薬による刹那的な快楽と同様、放たれては消えていくアドリブの音もまた刹那的である。その瞬間的閃きや爆発力に魂を込め、精神を集中させている度合の高さが、上に書いた“鋭さ”につながっているのだろう。

 演奏自体はピアノを含むカルテット(当時のアート・ペッパーのレギュラー・カルテット)による演奏で、各メンバーの演奏あってのペッパーのワンホーンなわけだが、その雰囲気を特に支えているのは、ベースのベン・タッカー。冒頭の1.「ブルース・イン」と、締めくくりの8.「ブルース・アウト」は、ベースとサックスのデュエット演奏になっていて、静かに曲が進む中で、居合いのごとき気合と緊張感がひしひしと伝わってくる。もう1曲、この流れで外せないのが2.「魅せられて」で、上記1.から続けて聴くと、この2曲で聴き手側はすっかり本盤の世界に引きずり込まれてしまう。

 その一方で、スピードを伴った緊張感の代表例は、4.「クール・バニー」。チャック・フローレス(ドラム)による全体のペースと流れの持っていき方、その合間でのラス・フリーマン(ピアノ)のさりげない好演が光る。その他に筆者のお気に入りとしては、3.「君微笑めば」や6.「サヴォイでストンプ」も外せない。上で触れたベースの役割も、ドラムとピアノの持ち味も発揮されているうえに、ペッパーによる精神集中度の高い演奏が冴えている。さらりと流してしまわずに、じっくりとその密度を体感すればするほど、本盤は、希少性などと関係なく、やはり名盤というのがよくわかるように思う。



[収録曲]

1. Blues In
2. Bewitched
3. When You're Smiling
4. Cool Bunny
5. Diane's Dilemma
6. Stompin' At The Savoy
7. What Is This Thing Called Love
8. Blues Out



[パーソネル、録音]

Art Pepper (as)
Russ Freeman (p)
Ben Tucker (b)
Chuck Flores (ds)

1956年12月28日(1., 2., 6., 7., 8.)、1957年1月14日(3., 4., 5.)録音。





 
Art Pepper アートペッパー / Modern Art 【CD】







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Last updated  2013年06月18日 21時24分27秒
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