テーマ:Jazz(1961)
カテゴリ:ジャズ
“車の街”に育まれたミュージシャンたちの共演 表題のモーター・シティというのは、そのまま訳せば“車の街”。つまりは、フォードをはじめとする自動車産業で繁栄を極めたミシガン州デトロイトの別名である。アメリカ合衆国の中西部、五大湖に囲まれた地域に位置し、東はカナダと接する街。そんなデトロイトは、数々のジャズ奏者を輩出し、概ね彼らはミシガン州からだと東側に位置するニューヨークへと進出していった。 本盤の参加メンバーを見ると、ドナルド・バード(トランペット)をはじめとして、ケニー・バレル(ギター)、トミー・フラナガン(ピアノ)、ルイス・ヘイズ(ドラム)の4人が生粋のデトロイト生まれ。なお、ルイス・ヘイズは、“ヘイ”ルイスなる変名でクレジットされている。残る2人、ペッパー・アダムス(バリトン・サックス)とポール・チェンバース(ベース)は、デトロイト生まれではないものの、前者は同市を活動拠点としたミュージシャンで、後者も生まれは異なるもののデトロイトで育っている。 デトロイトと言えば、ソウルやR&Bの大レーベル、モータウン(その由来もまたモーター・タウンからきている)が有名だが、本盤の吹き込みを行ったのは、いくつものすぐれたジャズ盤を制作したベツレヘム・レーベル。詳しい録音データはわからないが、1960年の吹き込みで、場所はニューヨークでの録音とのこと。ベツレヘムは株のディーラーをやっていたスイス出身のガス・ウィルディなる人物が1953年に立ち上げたレーベルで、翌年からジャズ盤制作に取り掛かり、1961年まで稼働した。ニューヨークに拠点を置きながら西海岸にもオフィスを出すという、当時の西と東に分離していた業界としては珍しい試みをしたレコード会社だった(ベツレヘムの有名盤についてはこちらやこちらの過去記事を参照)。 アルバムはドナルド・バードがゆったりかつじっくりとワンホーンで聴かせる1.「スターダスト」で幕を開ける。冒頭のこのトランペットの名演だけでも本盤を手にする価値はある。あと全編にわたって活躍しているのはトミー・フラナガン。スピードに乗った3.「トリオ」のピアノ・ソロが個人的には特にお気に入り。他にペッパー・アダムスの参加曲のなかでは、4.「リベッチオ」のスリリングな演奏がなかなかよい。品性に欠けると評する向きもあるかもしれないが、ルイス・ヘイズのドラムが、案外、本盤でのトーンを決めていて、筆者としてはこれはこれでなかなか功を奏しているように思う。 というわけで、本盤を聴いていく着く先は、やはり当時のデトロイトという町への憧れ。今でこそ、“大ピンチの破産都市”として報道され、治安の悪化なんかが懸念されているが、この当時のデトロイトというのは本当に繁栄し、こういう文化的繁栄を見ていたのかと想像するだけで、何だか胸がわくわくするような気持ちにさせられる。 [収録曲] 1. Stardust 2. Philson 3. Trio 4. Libeccio 5. Bitty Ditty [パーソネル、録音] Donald Byrd (tp) Pepper Adams (bs) Kenny Burrell (g) Tommy Flanagan (p) “Hey” Lewis (ds) Paul Chambers (b) 1960年録音。 【総額2500円以上送料無料】モーター・シティ・シーン/ドナルド・バード&ペッパー・アダムス 下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013年08月24日 13時23分35秒
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