沖縄戦で起きた集団自決は日本軍の強制によるものだと書いた大江健三郎「沖縄ノート」(岩波書店)を、当時の日本軍責任者とその遺族が名誉毀損で訴えた裁判は、一審で完璧な原告敗訴であったが、それを不服として始まった控訴審で、実は原告側弁護士の数が34人から6人に激減したと、18日の「週刊金曜日」が報道している;
6月25日、「沖縄戦大江・岩波訴訟」控訴審(大阪高裁)の第一回口頭弁論が行なわれた。この訴訟は、太平洋戦争末期の沖縄戦時に慶良間(けらま)諸島で起きた「集団自決」をめぐり、元戦隊長やその親族が大江健三郎著『沖縄ノート』などで「日本軍の命令・関与により集団自決が起きた」旨の記述をされたのは不当として、大江氏と刊行元の(株)岩波書店を提訴したもの。大阪地裁判決(今年三月)では大江・岩波側の名誉毀損を認めず、原告敗訴となった。
控訴審が始まり被告側支援者らが驚いたのは、原告側弁護団の人数の激減ぶりだ。地裁段階で34人いた弁護士がわずか6人に。「何があったのか?」「内紛か?」……。さまざまな憶測が飛び交うが、真相は薮の中だ。
戦争責任問題の訴訟に数多く関わるある弁護士は、「弁護団の人数が途中でこれだけ減るとは、普通ではちょっと考えられない。裁判官への印象も良くない」といぶかる。
原告側は今回、原判決は「『隊長命令』の真実性を認め」ず、同著の「頒布が違法であることを認定している」にもかかわらず、同著を増刷しているのは暴挙として、賠償請求額を増やした。また、一審結審後に「重要な新証言」をしたとする宮平秀幸氏を、なぜか証人申請しなかった。
岩波書店編集局の岡本厚部長は増刷批判に対して、「一審判決では頒布違法などと言っていない。名誉毀損を認めず、私たちが勝訴した。通常の手続きに従って増刷しているだけ」と本誌・筆者に語った。また「『新証言』なるものは、これまでの宮平氏の証言と矛盾している。もし本当に重要な証人なら、なぜ原告側は証人申請しないのか」と語った。 星徹・ルポライター
2008年7月18日 「週刊金曜日」711号 7ページ「金曜アンテナ-沖縄戦『大江・岩波訴訟』原告側弁護士が激減」から引用
元はと言えば、右翼小説家・曽野綾子の誤読をヒントに殉国美談を捏造しようとした者たちのインチキ裁判であるだけに、心ある弁護士が離反したということはあり得る話である。