過半数の「戦争法案反対」の声を無視して強行採決したこの度の国会の在り方をメディアはどのように報道したか、ジャーナリストの阿部裕氏は、4日の「しんぶん赤旗」のコラムに次のように書いている;
圧例的多数の民意も道理も完全に無視した安倍政権と自公与党による「戦争法」強行採決。国会内外は怒りと憤りが燃え盛ったものの、「敗北感」「徒労感」は全くありません。むしろ、「新しい民主主義の始まり」への期待と予兆が沸々と沸き上がる思いでした。
野党の質問をはぐらかし、二転三転する安倍晋三首相や中谷元・防衛相の国会答弁。共産党議員が暴露した「内部文書」については、その存在さえ認めない隠ペい体質・・・戦前の軍部の暴走をほうふつとさせます。
多くのメディアも「世論置き去り-法案反対、常に5割強」(「朝日」20日付)、「安倍さん、これが『美しい国』ですか?-安保法案が壊したもの」(「毎日」18日付夕刊)と指摘しています。
「安保法成立」後も連日デモ、集会が・・・。「安保、若者も団塊世代も学者も語った」(「朝日」21日付)は「政治と生活はこんなに密接なんだと気づき、自分が一番変わった」との予備校生の率直な声を紹介しています。
ところが「産経」は「内閣支持率横ばい42・6%-安保法整備『必要』7割」(22日・FNN合同調査)と世論調査の都合のいい部分だけを強調しています。同じ調査での「不支持」47・8%、「審議を十分つくしたとは思わない」78・4%にはそ知らぬ顔。「安全保障法制の整備」の必要性一般をきいて「多数」を意図的につくるなど世論誘導そのものです。「安倍応援団」のメディアは、事実を直視する姿勢もありません。
デモや集会の取材を通して「報道機関の一員である私はどうなんだ?」と現場記者たちも自問自答しつつあります。「権力に対峙する以前、もうそろそろいいだろうという空気にどれだけ抗い、流されずにいられるか。本気度と力量が試されるのはこれからだ」(「神奈川」19日付「時代の正体」)。まさに覚悟が問われています。
(あべ・ひろし=新聞ジャーナリスト)
2015年10月4日 「しんぶん赤旗」日曜版 35ページ「メディアをよむ-新しい民主主義への覚悟」から引用
産経新聞の意図的な世論誘導はあまりにも露骨です。一般論として「安保法制を必要と思いますか」と聞かれれば、まあ7割くらいが「必要」と答える人がいても不思議はありません。しかし、同じアンケートの回答者の5割近くが「今回の安保法制は不支持」と答え、8割近い回答者が「審議が十分とは思わない」と答えているのを無視して、大きな活字で「安保法『必要』7割」と表現するのでは、これは詐欺のようなものです。こういうことをやっていては、やはり部数は伸びないでしょうね。