近代民主主義を支える「立憲主義」や「基本的人権」「国民主権」を否定する発言を繰り返す自民党議員について、2日の「週刊金曜日」の投書は次のように告発している;
安保法に反対した学生たちを「自分中心、極端な利己的考え」と批判した元自民党の武藤貴也衆院議員。この騒動でもっとも深刻に思うのは、武藤議員の個人的見解というより、あの「発言」や数々の言動が、彼を公認してきた自民党の認識そのもののように考えられることだ。
自民党は以前、『ほのぼの一家の憲法改正ってなあに?』という漫画を作成した。半ば”ヒステリック”な言動で憲法改正を不安視する妻(母親)役の優子(この設定も恣意的だ)が、基本的人権について質問する場面がある。これに対して祖父役の司郎は、胸を張って「基本的人権があるからといって何をしてもいいわけじゃないってことだ!!」と話し、夫(父親)役の一郎が「みんながワガママを主張したら社会は壊れちゃう」と続け、曽祖父役の千造は「今の日本の憲法は個人主義的といえるのう」と断言する。
まるで理性的な男性が感情論一辺倒の女性を諭してやるといった構図だが、これにも大いなる疑問がある。
たとえば、国会で質問に立つ女性議員に対し、安倍晋三首相を筆頭に男性議員らがセクハラめいた野次を飛ばすのも、漫画の中で、優子さんが置かれている立場を彷彿(ほうふつ)とさせる。
基本的人権=ワガママ=個人主義的。現行憲法に対する怨念すら感じるが、日本国憲法=ワガママという認識が自民党の本音であることがわかる。そんな彼らがどんな改憲案を考えているかは言うまでもない。基本的人権や主権在民など民主主義の根幹の部分を、大幅に制約するものにしたいのは明白だ。
たとえば、
磯崎陽輔(いそぎきようすけ)氏(自民党憲法改正推進本部事務局長)は「立憲主義なんて聞いたことがない」と言い、
片山さつき参院議員は「天賦人権論をとるのは止めよう、というのが私たちの基本的考え」と言い、
西田昌司(にしだしょうじ)元自民党副幹事長は「そもそも国民に主権があることがおかしい」と言い、
中谷元防衛大臣は「憲法をいかに安保法案に適用させていけばいいのか」
とも述べている。
安保関連法成立後、自民党は改憲に動くだろう。これこそ安倍氏の悲願でもある。しかし、彼らの考える改憲を認めてはならない。立憲主義をなし崩しにする恣意的な政治を許してはならない。次の選挙では、なんとしても自民党を下野させなければならない。
そのためにも、安保関連法案に賛成した議員は、立憲主義を蹂躙(じゅうりん)する者として、落選させる必要がある。
2015年10月2日 「週刊金曜日」1057号 61ページ「投書-根底にある選民思想」から引用
自民党が憲法改正の宣伝のために作った『ほのぼの一家の憲法改正・・・』は、実に幼稚なマンガで、基本的人権があるから国民がわがままになり、これを放置すると社会が壊れるなどと言っている。これと似たような議論は、夫婦別姓を認めると家族が崩壊するというのもあったが、幼稚な議論もいい加減にしてほしいものである。わが国の自由と民主主義を支える「立憲主義」「基本的人権」「国民主権」を否定する発言を公然と行う者を、処分もできない自由民主党は、自浄機能を失っており、ファシズム政党への道を進んでいるのではないか。こういう政党に政権を任せておくのは大変危険である。次の選挙では、野党を勝たせなければならない。