横光利一
短編集「日輪・春は馬車に乗って」を読み終わった。横光利一(1898~1948)には二つの思いがある。教科書的な知識「新感覚派の文学」という表現上の新しい試みの雄(ゆう)なのに読んでいなかったこと、もう一つは中学3年の時「旅愁」を読み始め挫折したこと。(その古い文庫本は上巻だけ残っていたが、下巻とのつながりが違ってきてしまい捨てた。最近、講談社文芸文庫の上巻1,680円、下巻1,785円の文庫としては高額で購入。読みたいという意気込みがある)中短編を読んで正直びっくりした。どれをとっても印象深く面白いではないか。川端康成と保昌正夫の立派な解説を読めば、当時(1920年代)の文学界新潮流(文学の革命をめざす)の何たるかは語りつくされ、なるほどと納得大変勉強になったし、それが現代でも通じる新しさであるのに私はすっかり感心してしまった。火笑われた子蠅御身赤い着物ナポレオンと田虫春は馬車に乗って花園の思想機械日輪みんな印象を書きたいほど気に入ってしまったけど、きりがないので「日輪」についていうと、これぞエンターテインメント、スペクタクル映画、私にはコミック、元祖ファンタジーに思えた。違和感なく夢物語に堪能できたし、卑弥呼という魔性の女性が悲運をたどる不条理は魅力的であった。解説にあったが菊池寛は「映画劇としての面白さ」と強調したという。ネットで検索したら「蠅」は高校の教科書にあるらしく高校生の感想があった。これもカメラの目を通して見たような短編。引き締まった短い絵巻きもの。教材としておもしろいのだろう、納得。昨日のブログの舌の根も乾かないうちにこれだ!今までと同じではないか(笑)いえいえ、今度からは読んだ、面白かっただけになるから。