HAVE A NICE DAY

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  『シャッター・アイランド』

  ちょっと前のＪさんのコメントがきっかけで、ついに読了。もう１ミリも希望がないほど追い詰められた緊迫感がすごい。相棒は消えるし、味方は誰もいないし、謎は半端にしかとけないし、脱出できないし、どーすんのよとハラハラ。どんなどんでん返しが来るんだ？　ん？そーして、あの袋とじ部分へ・・・・・そーかそーきたか・・・・・だから、妄想とか悪夢とか妄言とかクスリとか、その手の記述がでてくる話は厭なんだわー。ひっかかっていたアレコレが、あ～ねと一気に腑に落ちたけど、なんだかなぁ。映画の『ミスティック・リバー』は、読んでから見たので話のすみずみまでよーくわかった。どんなミステリー映画でもできる限り原作を読んでから観るようにしている。謎が割れようと犯人を知っていようとぜんぜん平気で面白く観れた。でも、この映画は未知のままでないとつまんない。レオ君の演技が・・・・この映画は読まずに観るべし。ゼッタイに！Ｊennyさん、先に観てください。観たらもう読む気にならないかも（笑...　　　　

  2009.08.14

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  『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』

  ずっと以前にＫ寺さんからお勧めがあって、やっと読みました～白石一文の本は１冊を除いてすらすら読めるのばかりだけれど、これは異色の小説で、短い章が連なり、ストーリーの途中にしばしば思想が挟まる。小説と社会論が混在するハイブリッド・ノベル、と勝手に命名。普通ここまで引用するか？というくらいに盛り沢山で圧倒される。（が、文献数自体は少ない。）大まかにとらえれば、『一瞬の光』と似たようなつくり。仕事のできる男、社内抗争、政治家とのかかわり、美人で仕事もできるいい女がいながらちんけな若い娘にひかれる、家族との希薄な関係、超常現象的なこと、病との闘い、といったエレメントは他の作品でもよくでてくる・・・・つまり、白石一文の集大成的小説のように思えた。この「矢」というのは、主人公曰く「時間」とのこと。「人はどう生きるのか」ひいては「世界とどうかかわるのか」がテーマになっている。しかし、話はごくごく世俗的で興味をひくストーリー仕立てになっている。それにしてもこの装丁はなんだ？！　インパクトあるけどヤダな。直木賞とれるかな・・・・　　

  2009.08.13

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  『 厭な小説 』

  「厭だ」　から始まる短編連作が七話。子供、老人、扉、先祖、彼女、家、小説。全編を貫くのは、厭な上司亀井と部下の深谷。筒井康隆の短編に酷似している。が、さほどハチャメチャではない。改行多くて、会話文も短く、２行に渡る文はほとんどない。厚みのある割には、あっという間に読める。分厚いけれど、驚くほど軽い。ハードカバーのペーパーバック紙。いや～な感じの話ばかりなのに、すいすい読まされてしまう。理不尽で、不幸で、酷く、辛く、気味悪いのに止められないのは、どこかしら滑稽で可笑しみがあるからか、単にのぞき趣味か。でてくる「厭」は意外と共感部分多い。誰もが厭と思うはず。「厭」の字は、「嫌」の数倍イヤなカンジがする。汚いよりも穢い、死体よりも屍体がよりディープな空気を醸すような。過る、滾る、首肯く、剰つ、熟す（こなす）・・・いかにも京極さん。こういった漢字遣いの文章は嫌いでない、むしろ好き。それ相応の手練の文章でないと、そぐわないのがミソ。性悪ジジイが書いたようなひきつった筆字のタイトル、背表紙読めない。煮染めたような茶色でまとめた装丁に破れ偽装で、古本風。ページの周りはホコリと湿気がにじんだかのような鼠色ボカシ。細部にこだわる京極スタイルは一見一読の価値あり。　　　　　

  2009.08.04

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  『謎の1セント硬貨　真実は細部に宿るinUSA 』

  めちゃ忙しい。公私ともにくだらない用事に追われて、ブログ書くどころかまともに本を読むヒマもない。いや、正確にいえば、本を開くと１５分も経たないうちにマブタが閉じてしまう、といった夜が続いている。で、やっと読み始めたこの本。まだ全部読んでないのだけど、さすがマキオちゃん。今まで通りというか、これまで以上に期待を裏切ることなく読ませてくれる。一番好きなエッセイストは？と訊かれれば、迷うことなく向井万起男と言える。もともと千秋さんのことが知りたくて読んでいたら、めちゃ面白くて、最初の本からずっとまったくハズレなし。どれだけすごいかと言うと、マキオちゃんは大リーグオタクなんだけど、野球に全く興味のないこの私が、他だったらぜったい読み飛ばす大リーグ関連の話もきっちり読んでしまうほど。ミステリーマガジンでの連載も始まってこれも毎月一番に読んでる。彼の好奇心の強さは育ち盛りの子供並み。アメリカについて調べまくったいろんなことが書いてある。それが今まで誰も気にしなかった細かいことばっかり。しかも、その手段が「メール」。手当たりしだいにメールを送って訊きまくる。ここんとこがユニーク。アカデミックな人でありながら、どこか子供っぽい。着眼点が違う。だいたいこの二人、日本で上位5％に入るであろう超インテリ夫婦なのに、すごくほんわかしていい雰囲気。というか、なんかオカシイ、ヘン。マキオちゃん、チアキちゃんと呼び合い、会話は単純素朴で田舎の中学生カップルのようなカンジ。「私たち夫婦ほど頻繁にディズニーワールドに行ったことがある夫婦は日本にいないかも」なんてうらやましすぎる～。どんな時も二人とも謙虚で素直。で、科学者らしく観察眼は抜群。本当のインテリは、やたら知識をひけらかしたり難しい言葉やひねった文章で高尚ぶったりしないんだな、とつくづく思うのであった。　　　　　　　　　　　　謎の1セント硬貨　　　　　　

  2009.07.29

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  『告白』 湊かなえ

  売れている本だとは知っていたが、ホントに面白いの？と敬遠していた。「本屋大賞」受賞作だし・・・この賞って、書店員さんがわざわざ言うほど？といった雰囲気のほっといても売れそうな有名作家の本ばっかりで有り難味がない。ところが、これはデビュー作。予想以上によくできていて一気読み。目次を見れば、聖職者、殉教者、慈愛者・・・・といったタイトルの章が並んでいて、大仰なだけにはずすとイタイぞといった雰囲気。だけど、これって、私が好きな多視点の一人称小説なんだ。供述書のような、いわゆる『藪の中』スタイルの小説。同じ物事でもそれぞれの関わり方によって全く違った物語になる、ということを全面に出して書く形式。恩田陸の最高傑作『黒と茶の幻想』、時代考証がすごい『吉原手引草』、長すぎて厄介な『半島を出よ』、ちょっと違うけど『理由』とかがその類。こういう書き方は好みのタイプなのである。文章は素直で、言葉が的確なのでとても読みやすい。優等生的なお話かと思えば、話はなかなかエグいところもあり、意外な終結に驚いた。そこまでやるか！？と思わないでもないが、親子関係とか教育とか深いこと考えないで、エンタメとして読めばいい。　　　　　　　　　　　　告白　　　　

  2009.07.07

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  『サヨナライツカ』

  カバーはザ・オリエンタル・バンコクのサマセットモームスイートの写真。ゴージャスで品があって、エキゾチック。一度泊まってみたいな。表紙を開くとフーシャピンクで段違いになった白い扉のタイトルだけが見える。この本の一番良いところは装丁。二番がなくて、三番が手紙文。結婚直前の「好青年」とホテル住いの「謎の女」のラブアフェアー。この二人がどういう人間で、どうして惹かれあうのか、どういう思いを抱いているのかといった内面の書き込みが希薄。描写はありきたりで、会話も単調で魅力がなく、特に婚約者（妻）の言葉は空々しくて、全体があらすじのようなうすっぺらな文章。「死ぬ時に愛したことを思い出すヒト」がテーマらしい。一途な愛に生きた女と思いたいが、自分を捨ててあっさり結婚したズルイ男を２５年間も思い続けた哀れさに苦笑するのみ。しかもこの男、３０年後に書いた許しを請う手紙の署名が「好青年」。アホか・・・・私だったら怒り狂うぞ。白石一文の小説にあるようなどうしようもない葛藤や心の叫びは、感じられなかった。辻仁成は食べ歩きエッセイ止まりの作家、とマイ認定。（たしかに、ザ・オリエンタルの素晴らしさの秘密はわかりました）映画ではさてどうなるでしょうか・・・・　　　　　　　　　　　

  2009.04.28

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  『祝宴』 DEAD HEAT

  レストランのオーナーシェフが食中毒事件と爆破事件のダブルパンチを受けながらも、見えない敵に果敢に立ち向かっていく物語。フランシス父子共著の１作目。食中毒の原因を割り出す経過が面白く、その意図を探るところがこの話の要。主人公は30代の独身の男、専門職、職業上の危機、住居は破壊され私生活でも壊滅的ダメージ、事件がきっかけで恋に落ちる、というと、先に読んだ２作目の『審判』と構成要素がかなり似通っている。同巧異曲だな～、と言っても悪口ではなく、ここではほめ言葉。骨組みは同じでもまったくちがった話に仕上げているのは見事だ。ただ、こちらは登場人物の書き分けが不足気味で、イメージしにくかったのが欠点。その点、『審判』の方がすっきりとまとまっている。どちらも読み出すと最後まで読まずにはいられない。原題は「ＤＥＡＤ　ＨＥＡＴ」。日本語で「デッドヒート」は接戦の意味で使われるけれど、本来はヒート競技において、二頭が同着となり競技が無効になることで、英語では「同着」という意味。というトリビアのおまけ付き。　　　　　　　　　　　

  2009.04.17

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  『オリンピックの身代金』

  二段組５００ページ超の長編ながら、興味とぎれることなく面白く読めた。昭和３９年７月から１０月１０日の開会式までの物語で、東京オリンピック直前の変貌していく日本の様子を背景にして描かれている。復興した日本を世界中に披露しようという人びとの熱気が伝わってくる。去年にわか仕立ての北京オリンピックを嗤ってたけれど、かつての日本も同じだったんだ、と知った。人物の設定も面白い。秋田の寒村出身の主人公は東大院生というエリートでありながら、最下層の工事人夫として働く。爆破事件を起こし、人を殺しもするけれど、特に冷酷ということもなく、怠惰でもなく、狂信的でもなく、利己的でもなく、冷静で正直で常識的ですらある。といった、つい同情したくなるタイプ。代々木体育館、武道館、モノレール、新幹線の建設とか、ヒロポンを打って日夜働く出稼ぎ労働者とか、国立競技場の警備とか、あの頃東京は一日１１時間も断水だったなど細部が面白かった。特に、身代金受け渡しの方法が当時の風習を利用したもので面白い。出稼ぎ労働者、下請け業者、在日朝鮮人、ヤクザ、スリの老人、東大の学生運動家が登場して、社会の暗部にスポットをあて、富と貧、光と影、エリートと底辺の対比をたくみに見せている。それにしても毎度お馴染みながら、警視庁内部の対立はいささか過剰なのでは。。。。社会派小説というほど重くはなく、上質なエンタメ。昭和ならではのオリンピックに向けた熱い興奮が心に残る。二度目はそうはいかないよ・・・・なんてね。

  2009.04.15

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  『審判』

  謎の脅迫者におびえる弁護士が主人公のスリリングな物語。フランシス親子の共著で、今までの作品同様に面白さ抜群。競馬や馬にはなんの興味もないのに、読ませられてしまうのはすごい。競馬、裁判、恋の始まり、の３点セットでスピーディーな展開。イギリスの裁判制度について、こんなに詳しく書いた物語は初めて読んだ。イギリス特有の２種類ある複雑な弁護士制度がこと細かに書かれている。単なるうんちくではなく、ストーリーに関係してくるのでくどくはない。なるほど、アメリカの陪審員制度はイギリス由来だったんだ。脅迫と暴力はエスカレートしてっくるし、裁判は窮地に陥ってくるし、父親の命まで危険にさらされる。残りページが少なくなると、どうやって決着をつけるのかとページをめくるのももどかしい。そして、待望のラストは・・・・　やむをえない選択なんだろうな。冷静なる正当防衛。また次なる「審判」が始まるのを示唆して終わる。きれいごとでまとまらず、完全なハッピーエンドでないところは、じつに私好み。　　　　　　　　　　　審判　　　

  2009.04.01

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  面白かった本、本、本

  このところ毎日忙しいのだけど、大概は自分のことじゃないからまあ適当に本を読むヒマはある。つまらなかったら途中でポイ、読了できたら面白かった証拠。最近はアタリの本が多くて、スイスイと一日一冊のペース。いちいちいちゃもんつけてもはじまらないので、良いトコだけをとりあげる。「造花の蜜」と「誘拐児」は、誘拐事件の話。裏にある深～い事情は、「誘拐児」の方が時代設定の妙味もあってドラマチックで面白い。「一瞬の光」と「心に龍をちりばめて」は、あまり得意でない恋愛物だけど背景設定がしっかりしていて読ませる。「完全恋愛」は完璧な恋愛と思いきや、’完全犯罪’と同じコンセプトの言葉で、人知れず自己完結した恋愛ってことで、早い話が一生かけた片思いの話。戦前から戦後にかけての時代背景が面白い長編。「骸の爪」は人里はなれた仏像製作所が舞台で、北森鴻の雰囲気も少々。「背の眼」は山奥の旅館を舞台にしたホラー系で、どちらも道尾秀介の秀作。「鬼の跫音」は一味違った風味の短編集。静かな憎悪、狂気、悪意の世界がひたひたと迫る。「ラットマン」は１０ぺージ目で以前読んだのに気づいた。ああ・・・　道尾作品は子供を主人公にした話が上手くて、中でも好きなのは、「向日葵の咲かない夏」。のっけから母のセリフが伏字で、想像を巡らしながら読む。変だ妙だと思ったポイントがことごとくトラップ。小説ならではの作品で、これはまず映像化できない。「きのうの世界」と「不連続の世界」は、恩田陸の作品。こんな似たタイトルの本を続けて読んだせいで、今となってはどっちがどっちか区別がつかない・・・・短編集の尾道の映画撮影に絡んだ話が面白かった。長編の方はいつものように不完全燃焼。エッセイでは、教養にあふれながらもおバカなエピソードやシモネタありの「目からハム」がさすがの読み応え。すきま時間にパラ読みは、「実は見かけない、アラブの大富豪」と「すっぴんは事件か？」。じっくり読んだのは「日本人への祈り」で、引用された神に関する言葉に深く共鳴。「あなたはなぜ値札にダマされるのか？」は、タイトルがダサいけど中身はしっかり。冒頭のベテランパイロットの大失敗が全編を通してのスウェイの象徴となっている。その他実例が多く、参考になった。スウェイの法則については後ほど覚書でも。なんといってもワクワクしながら読んだのは、「ぼくと1ルピーの神様」。身ひとつで生きていくのは大変だけど、どんなことでも勉強になるんだね。賢いひとは。

  2009.03.22

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  『怖い本』

  著者は、あの平山夢明だからフィクションかと思ったら、実録怪談集。薄い文庫本で、４巻、５巻、７巻の３冊を読んだ。何巻まであるのだろうか・・・・　「新耳袋」よりもグロイ描写とはっきりした霊を見た、という記述が多い。よくある共通項は、腐臭、目玉のない顔、失神した後は離れた場所で発見される、触られた後に赤い痣、霊能者に助けられたなど。３冊も立て続けに読んだら、気持ち悪くなった。　　　　怖い本（4）

  2009.03.06

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• 『ときどき意味もなくずんずん歩く』

  食べるのも眠るのもの面倒で興味がない著者宮田珠己は、旅行好きで、まめに旅に出ていろんなレジャーに挑戦する。2000年～2003年の連載エッセイ。 笑った笑った。「なみのひとなみのいとなみ」を探しに図書館に行って、なかったのでこれを借りたのだけど、面白くて一気読み。こんなとぼけた脱力型のエッセイは他にない。（と言い切ってみる） だいたい、他人の旅行記なんてそうそう面白くはない。といもいブログみたいに写真がほとんどとかサイバラのようなマンガ紀行だと面白いけれど、文字のみの紀行文はよほどの文章力がないとただの記録か報告書（私のがそう）に終わって味もそっけもない。 話しかけるような文で、時として大げさな言葉遣い、自虐と自尊心が入り混じる考察は脱力ものだけど、なかなか客観的で一応筋は通っている。たいして面白いと思えないような事もなぜか大笑いさせられてしまう。ものは書きよう、だな。一番笑った部分を、段落まるごと引用してみる。旅行中の言葉についての話。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヨルダンで、おんぼろ乗り合いタクシーに乗ったところ、乗り込んですぐ運転手の男が何か私に注意する。何を言っているのか現地語だから全然わからないが、この場合状況的に、かつ相手の口調からも八一％ぐらいの確率で、半ドアだと言っていることが瞬時に理解された。そこで、あらためてドアを閉め直すと、さらにまだ何か言うので、依然として半ドアなのかと思って、もう一度しっかりとドアを閉じたところ、運転手がさらに怒りださんばかりに何か注意する。何かはさまっているとでも言うのか、よく見ろ何もはさまってないぞ、と顔で訴えながらドアをバッタンバッタン開け閉めしていると、別の客が「ドアは静かに閉めよと言っているのだ」と通訳してくれたのであった。このように現地語がまったくわからなくてもドアについて運転手が何かを注意した、という点で私は間違っていなかったのである。運転手は顔が真っ赤になっていた。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・このエピソードから作者が導き出した事実は、「旅行中のたいていの問題は言葉なしでもなんとかクリアできる」つまり、「人間は言葉なしでも多くのことを伝え合える」ということ。大笑いしながらも、この話は深い。そして作者は、現地語が話せたほうが面白いし便利なので少し覚えて行った事もあるが、下手に現地語を使うと相手も現地語でなめらかに答えてくれるのでなんと言っているのかさっぱり聞き取れない、挨拶や自己紹介なんて旅の重要な局面ではてんで役に立たない、と試行錯誤の末に、現地で暮らすわけでもなし、たかだか旅行中の話なんだから言葉なしでもなんとかなる、ま、「ありがとう」ひとつだけでも覚えていけばオールラウンドに使えて便利だ、と結んでいる。たしかに！

  2009.01.31

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  『カラスの親指』

  道尾 秀介の本にはいつもやられる。注意深く読んででいたはずなのに気づかなかった所がいっぱい。何気ないところ、ごくごく小さな出来事に秘密が隠されている。さりげなく、巧妙で、そんなこととは夢にも思わなかった、てな感じでラストに生きてくる。いわゆる「綿密に張り巡らされた伏線」というものだけど、不思議とあざとさは感じない。なぜか？　それは読者の裏をかこうという意図からでなく、あくまでもストーリーのため、エンタメ道まっしぐらのプロットだから。好きな作品の「シャドウ」や「ソロモンの犬」もその部類に入る。この話だって出来過ぎ感が漂いまくって、そーんなバカなとあっけにとられる後日談が用意されてるんだけど、楽しませてくれたからすべて良し。冴えないオッサン詐欺師二人の出会いからしてふざけてるし、転がり込んだ姉妹だって、実はあり得ない位にしたたかで計算高い。莫大な費用の出所もきっちり説明できていて、ホント出来過ぎ。加担した奴らも相当なもんで、実際いくらなんでもそこまでできんだろと思うのだけど、これは小説だからなんでもアリなのさ。「お父さん指だけが全部の指と向かい合うから・・・」というめちゃ薀蓄臭いくだりがワンポイントになっている。　　　　　　　　　　　　カラスの親指　　　　　　　　　　　　

  2009.01.27

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• 『小森生活向上委員会』

  清水ちなみのＯＬ委員会（なつかし！）にも同じ会があったなと追想して、なんの予備知識もなく選んだ文庫本。のんきなサラリーマンてな感じの表紙にほのぼのコメディを想定していたら、まんまと騙された。とぼけたムードのコメディではある。が、気に入らない奴らをバンバン殺していくダークでブラックなストーリー。小森は必殺仕掛け人、しかも仲間がどんどん増殖していく。よく見ると、「映画化決定」なんて裏表紙に書いてあるから、もしも原作に忠実ならＲ指定間違いなしだろう。殺人の後は必ずベッドシーンがあって、お子ちゃまにゃあとてもエロくてグロい代物だし。。。なんて心配してたら、なんとまあ、映画は去年１１月に公開されているのだった。ぜんぜん知らないよー。かなり改変されていると見た。「新しい古井戸を見つけました。」　「それは新しいのか古いのか。」　ここがツボ。（古井戸は死体捨て場として利用）　　　　　　　　　　　　　

  2009.01.26

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  『家族の終わりに』

  リチャード・イエーツ作、原題は「Ｒｅｖｏｌｕｔｉｏｎａｒｙ　Ｒｏａｄ」。映画「レボリューショナリー・ロード」の原作である。テレビの映画紹介で、最後はとんでもない事になるとネタばらしをしていた。がなんのことはない、翻訳本は堂々とネタバレ、身も蓋もない邦題で出ていた。読む前から「家族の悲劇」と丸わかり！　まー、そのまま邦訳したら、革命の話と勘違いされる恐れもあるけどね。でも、いいのか？これでっ！と、ラストはわかったも同然の話ながら、興味をそがれることは１ミリもなかった。ものすごく面白くて一気読み。５０年代のアメリカ、大企業のサラリーマンと美しい妻、どちらも２０代で二人の子供に恵まれ、郊外に家も買った典型的な中流家庭。脳内では映画のレオとケイトでイメージ展開。この二人がぎくしゃくしてくる。理由は、「空虚さ」。それは急に芽生えたものではなく、ずっと昔からあったものだと気づく。その空虚さを埋めようと、「パリ行き」を計画する。その辺りの二人の気持ちのズレと歩み寄りの努力が克明に描かれる。この物語では、ストーリーや二人の行動よりもその裏にある心理描写が秀逸で読み応えがある。夫婦の会話がピリピリと神経質で、どこをとっても凄みがある。友人夫婦との社交的会話の裏にかくされた心の動きや相手の気持ちを読みながらの心理戦がこと細かく描かれている。その様子は滑稽でさえある。年長の友人と精神病院に入院中の彼女の息子が狂言回しとなっているが、彼の言葉がズバリと核心をついている。読んでいてハラハラする緊張感。上手いなー。夫の「絶望的な空虚さ」、「自分が誰だかわからない」と感じる妻。内側から崩壊していく家族を見事に描いている。ちょっと理解できない成り行きではあるけど、そういうこともありましょう。要するに、幸せは気の持ちようですな。　　　　　　家族の終わりに　　　　　　

  2009.01.25

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• 『 誘拐 』 五十嵐 貴久

  ある会社でのリストラ、無理心中、自殺、辞職から始まって、話は総理大臣の孫娘の誘拐事件へと移る。よくあるミステリーと違って、誘拐犯は最初から明かされている。だけど、その意図を隠して読者をひっぱる。犯人を知りながらも、警察と同じ視点から事件を追うことになる構造で、話の先が読めないのがポイント。結局、身代金も受け取らずにあっさり解放した。なぜだ？これから先に取引があって、どんでん返しがあって、そのまた後に事件の発端が明かされる、という仕掛け。う～ん、その手があったか。。。。ホームズばりのノンキャリアが唐突に出てきたり、そんなハズないだろう、といった細かいところの抜けには目をつぶって楽しむべし。トップがバカだと組織がうまく機能しないのは事実で、しわ寄せはまず末端の人間にくる。会社然り、警察然り、そして国家も。犯人よりも立案者よりもターゲットになった総理が一番の悪人に見える終わり方が、今のご時勢にぴったりなカンジ（笑...

  2009.01.10

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  ほんの楽しみ

  読みかけの本がたまってる。過去最大級の量。一日３０時間欲しい、もしくは不眠症になりたい。読み終わらない本がこんなに・・・なのに、今夜も眠い。●初めての面白さ『疑史世界伝』　軽妙な文章でイスラムの世界史がよ～くわかる。『八日目の蝉』　いつも途中放棄の角田光代だけど、これはいけると思う。『美女と竹林』　登美彦が竹を語る語る。ずっとこれ？　美女は？『シロクマのことだけは考えるな』　なんちゃって心理学と思いきや、　　　　　　 意外や意外に納得。東大院卒の心理学者はcute girl。『正直書評。』　一応読了。あとは「金の斧」の本をメモること。『林芙美子　放浪記』　改造社版の原「放浪記」。後に改稿して出た新潮文庫版とはまるで違う凄み。生の声、赤裸々な叫び、ライブ感。●再読の楽しみ　（とはいえ、ほとんど忘れてる）『天空の蜂』今やミステリー作家から「小説家」になってしまった東野圭吾。　　　　　初期の理工系ミステリーの方が断然面白い。原子炉のお勉強も。『インナー・トラヴェルズ』　いや～やっぱり凄いわ、この人。　　　　これ読んだ時は、あれこれ忙しかったなーと懐かしくもあり。『アッコちゃんの時代』　これはもーどーでも・・・・

  2008.11.28

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  『 血液と石鹸 』

  　　　　　　　　　　　　　　　　　　　血液と石鹸奇妙なタイトルにひかれたのと同時に、訳者（柴田元幸）買い。リン・ディンというベトナム出身の知らない作家の短編集。詩も書くらしい。1963年サイゴン生まれ、首都陥落前の1975年アメリカに不法入国し、アメリカ、ベトナム、イタリアで生活。カバー裏にある作者の写真、あ～ヤダ・・・読む意欲がひどく殺がれる。でも、読んでびっくり～！　こんな面白い短編小説は何年ぶり？！「囚人と辞書」　こっけい、でも哲学してる。言葉とは？「わが国北の果ての知事」　話本体よりも枕の部分が面白い。「私たちの新郎新婦」　ドンコイ通り＆マジェスティックがなつかしい。「エルヴィス・フォンは死んだ！」には、思わずニンマリ。ビートルズのファン？「八つのプロット」「一文物語集」「13」　プロットの羅列、ショートショート、独り言、アイデアの豊富さ・秀逸さは天性の才か、豊富な体験の産物か。特に気に入ったのは、皮肉がこめられた「本を持ち歩く男」と「食物の招喚」「飛行機に乗る」は筒井康隆のテイスト、「浮かぶ共同体」は星新一、「非常階段」は乙一、「＄」と「スチュアート・クレンショー」はオー・ヘンリーを彷彿とさせる作品。「ベトコン大学」は短いながらも、満点大笑い！タイトルの『血液と石鹸』は、「ただいま上映中」（これは清水義範風？）という１５本の映画レビュー集に登場する実在しない映画のタイトル。寓話的、哲学的、落語的、皮肉、ユーモア、ブラック、ＳＦ、ホラー、キラー・・・いろんな要素がちりばめられているけれど、あくまでも淡々として抑えた筆致。そこがこの人のすごいところで、アイロニカルな調子がズバリ私好み。読み終わって、思わず読み返す。また違った味わいあり。「言葉」にこだわりがあるのは、その経歴から見て取れる。言葉をテーマにした作品が多く、独自の世界を築いて精彩を放っている。『よく言われるように、言葉づかいとは、人間のふるまいを確実に映し出すものである。コンマでだらだら続く文を書く人間が、やたらと嘘をついたり、朝寝坊したり、酒に溺れたりもしがちであることに気づいてない人がいるだろうか？　あるいはまた、まったく句読点を打たない人間が、大きすぎる服を着がちであることに？』（「キーワード」より）あはは・・・・土屋賢二ばりのこんな自虐もあちこちに。再読にたえる本はなかなか無い。いいね～

  2008.11.23

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  『ＲＵＲＩＫＯ』

  　　　　　　　　RURIKOテレビが普及する以前の娯楽＆芸能界は映画であり、映画俳優の地位と人気はものすごかったとわかる。浅丘ルリ子は美人女優の代表としての名声が高いが、全盛期を知らない。彼女がトップスターだった頃、吉永小百合が新人デビュー、納税額トップの女優は高峰三枝子だった。彼女については石坂浩二と結婚・離婚したこと以外は、まるで知らなかった。満州で生まれ育ち、美男子の父親は甘粕正彦と親しかった。日活では、１年に１０本の映画に出ていた。１０代から喫煙していたが、お酒は飲まない。最初の彼は共演していた小林旭で、長く交際していた。が、実は裕次郎のことがずっと好きだった。でも、子供扱いだったし北原三枝がいて相手にされなかった。のちに旭が美空ひばりと結婚した時の驚き、ひばりとはけっこう親しかったこと、石坂との結婚生活、離婚までの長い別居生活などなど・・・ゴシップ記事の羅列のような流れで引っ張っていく。まったくの創作であろう会話が見てきたようにそれらしくて、上手い。裕次郎夫妻、旭とひばり、ひばりの母と弟などのエピソードも数多いが、読む端から忘れるたぐいのことばかり。両親の因縁、父や姉妹とのこと、満州やバンコクでの生活が特異でこちらの方に興味あり。石坂浩二は昔からスノッブな知識をひけらかしていた妙な男として書かれているのは、「やはり」といった感じですごく納得したし、笑えた。週刊誌あるいは新潮45の芸能界事件簿みたいで、一気読み。“実在の人物をモデルに書かれたフィクションです。”と、お決まりの断り書きがある。会話などはまったくのフィクションだろうが、大きく違ってはいないはず。とはいえ、この裏には、書けない書いてはならない事実が多々あるんだろうな、と想像をたくましくしながら読む。清く正しく賢くて物事に執着しない美女として描かれているが、日活が終わった時や結婚生活ではもっと深い苦悩や挫折はなかったのだろうかと思う。しかし徹頭徹尾、ＲＵＲＩＫＯ賛美の物語。生きている人をモデルにした小説には限界があって当然だからね。

  2008.11.22

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  クライトン訃報

  １１月４日、マイクル・クライトン　がんで死去　６６歳。彼の作品から医学ミステリーにはまった。ドラマ「ＥＲ」の初期シリーズは、もれなく面白かった。いつかの年末に２日連続で１０話以上が再放送された時、お正月準備そっちのけで見た。小説は、必ずしも全部の作品が私にとって面白いわけではなく、「ジュラシックパーク」以前の作品群が好み。最新作の「ＮＥＸＴ」は、オムニバス的構成で、最新情報に満ちていた。前作、前々作は面白くなかったけれど、これでやっと盛り返してきたなという感触があった。それだけに、突然の訃報に呆然となった。熱烈なファンというわけでもなかったのに、けっこうなショック。もっともっと読めると思っていた。残念無念。作家の死では、米原万里さん以来のショック。一番興味深く、驚きをもって読んだのは、小説でも映画でもなく「インナー・トラヴェルズ」（いつの間にか「トラヴェルズ　旅、心の軌跡」と改題改訳）。当時、どの小説よりも面白く衝撃的で、気持ちに訴えかけてくる自伝だった。これを書いたのは、４０歳半ばの頃。生き急いだ感あり。今一度読み返したい。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

  2008.11.05

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  万城目学　『ホルモー六景』

  『鴨川ホルモー』のスピンオフで、短編が６作。前作も面白かったけれど、こっちの方が断然好き。「野生時代」に毎月連載されていたが、バラエティに富んだモチーフでどの作品ももれなく面白くて、クオリティが高い。前作を読んでない人にも楽しめるはずだけど、意味不明の部分があったり、裏話的な要素に気づかなかったして細工の絶妙さを堪能できないので、もったいない。他の話や前作に巧みにリンクしている場面がいっぱい。ホルモーのメンバーをおさらいすると、京大青竜会、京産大玄武組、龍谷大朱雀団、立命館大白虎隊、同志社大黄竜陣。現実には絶対ありえないサークル活動だけど、その辺はどうでもいい。京都の学生たちの学校生活、恋、友情を京都ならではの地域性をふんだんに取り入れて描いている。森見登美彦と多少かぶるが、どっちも面白いからよし。第一景： 地味な高校生活を送ってきた女子二人の出会いを描く。観察が鋭い。第二景： 「ケーニヒスベルクの橋」の京都版。地図＆図版付き。 トポロジーはどうも理解できないが一筆書きは面白い。第三景： 途中、「もっちゃん」の正体が薄々わかってくる。まさかの梶井基次郎。あれ？いつの間にタイムスリップしたのと気づいたら騙されてた。上手い。第四景： これも歴史的人物が登場。Ｊｏｅが新島襄で、あのClark博士と友達だったという事がひょんなことから発覚。そして強引にホルモーと結びつけた所が、すごい。第五景： ホルモーＯＢ＆ＯＧが偶然にも合コン＠丸の内で再会。とっても続きが知りたくなるラスト。第六景： 映画「オーロラの彼方へ」や「イルマーレ」と同じモチーフで目新しくはないが、文体や言葉の違いで「時」を演出するのは、日本語ならでは。ポストでも無線機でもなく「長持」というのが、これまた渋い。万城目学の作品で、「鹿男あをによし」のＴＶドラマは面白かった。ところが、原作は初っ端がトロくて話に入っていけなかったから途中放棄。奈良のせいか、高校教師のせいか・・・・再チャレンジするかどうか迷い中。　　　　　　　　　　　　　　　ホルモー六景

  2008.08.16

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  石田衣良

  『夜の桃』を読んだ。頭使わずにするすると読めた。石田衣良の本をまともに全部読んだのは初めて。 登場人物に興味持てないのが、読めなかった一番の理由。 週刊新潮の連載を見た覚えはあるが、読んだことはない。 で、単行本になったら読めた。主人公が少年じゃなくて中年男だからかな。 仕事で成功し、妻とは仲良く、愛人とも良好な関係という４５歳が主人公。 で、新しい愛人は２６歳の処女で、どっぷり溺れる。 もう出来すぎな設定。 「暗渠の宿」の後に読むと、その落差のもの凄さに笑えてしょうがない。 男の究極の願望って結局こーゆーのだろうな。 まー、とにかくエロい。エロさが売りのファンタジー。 後半はあらすじのようにパタパタと進んで、修羅場も軽くて拍子抜け。 ラストは主人公の軽薄さを強調。リセットというか、懲りない男って感じがよく出ていた。 思った通り、なんか足りないイラの本。 よほどヒマで退屈な時しか読まないな・・・ひまつぶしの読み捨て、そんな位置づけでいいかしら、石田イラ。 　　　　　　　　　　　　　　　夜の桃

  2008.08.12

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  西村賢太　　『暗渠の宿』ほか

  西村賢太の本を初めて読んだ。大森＆豊崎コンビが「飽きない、好きだー」とべた褒めし、角田光代も「現実を超えて現実的」とか「この人にしか書けない」とか誉めてるし、なにより吉祥寺さんが４日付けのブログで大絶賛なので、もーこれは読むしかないから『暗渠の宿』と『どうで死ぬ身の一踊り』の２冊をゲット。 まずは、デビュー作の「けがれなき酒のへど」。恋を求めて風俗に通う男がまんまと１００万円騙し取られて逃げられた話。緻密で姑息な計画で親しくなるが、やはり風俗嬢の方が一枚上手だった。そこに至るまでの心理描写が事細かくて絶妙。へぇー、男ってこんな時にこう思うんだと、参考になるお話。でも、女から見るとかなり笑えるんだなぁ。阿呆だったと気づくの遅すぎ。 ここで思い出したのが、宇佐美游の「ＦＯＸＹ」 。銀座のホステスがいかにして「やらず」に金を貢がせるかを描いた作品で、そんなに上手くいくものだろうか、そんなに騙しやすい男ばかりなのかと疑った。しかし、「けがれなき酒のへど」を読むとそこんとこのプロセスがよーくわかる。金のない男ですらこうして貢がされるのだから、使い道のない金を持っている男を騙すなんざチョロイ、ってこと。この２つの小説を合わせ読むと面白い。 で、表題作の「暗渠の宿」は、やっと一緒に住む女ができました編。しかし、主人公はだんだんと「慊い」思いを募らせ、ＤＶ男へと化す。中編のこの作品に「慊い」の言葉が５回もでてくる。「飽き足りない」ではなくて、「慊い」だ。よっぽど、この言葉と文字が気に入ってるとみえるが、ひょっとして藤澤清造の作品に使われている字ではないか、と想像。激高して暴力をふるう一方、冷静に自己分析して、心の動きを克明に描写しているのが読みどころ。男に過去を話すのは賢明でない、という教訓もあり。『どうで死ぬ身の一踊り』の中からは、「一夜」を読む。この３作品で共通するのが、食べ物や食べている最中での喧嘩。深刻でありながら、なにやら滑稽な雰囲気すら感じる。この変てこ男の感情の起伏の激しさは、面白すぎるのだ。 いにしえの文士然としたエラソーな態度といい、時代がかった言葉遣いといい、近頃稀にみる曲者作家。なかなかクセになる味わい。 　　　　　　　　　　　　　暗渠の宿　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Foxy

  2008.08.06

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  『文学賞メッタ斬り！たいへんよくできました編』

  大森望と豊崎由美のメッタ斬りシリーズは、この本でもう４冊目。彼らの書評は、単なる批評でなく、今や「芸」の域に達している。今初めて気づいたけど、この二人１９６１年生まれの同い年。写真入れ替えても知らなきゃ違和感ないほどのユニセックス度も同様。それはさておき、小難しく紹介するでなく、したり顔で解説するでもなく、好きか嫌いか、面白いかそうでないかをズバっと言うキレの良さが実にいい。それも、膨大な読書量と知識に支えられてのことで、他者を寄せ付けないものがある。で、漫才のような楽しい語り口で辛辣な感想。彼らに適う者なし。この本では、第1３８回の芥川賞＆直木賞を完全に的中させている。しかし、そんなことはどーでもいい。一番のキモは、「選評、選考委員メッタ斬り！」の章。ここ面白すぎ。おなじみ都知事の「てにをは」の用法の間違いを指摘。構文のまずさ、自由な文法、意味不明さをツッコムツッコム。「おまえこそが知れ！」に一人で大笑い。あと、渡辺ジュンちゃん、宮本テルちゃん、ツモ爺、アトーダさんもヤリ玉に上がっているが、どれも納得。ホント、オカシイ選考委員が多すぎる。そんなに言うならオマエが書いてみろ、と。愛があるのは浅田次郎、というのにも同感。石田イラ、長嶋有とのトークショーもなかなか面白かった。第３回メッタ斬り賞は、「私の男」。そうそう、これにも同感。　　　　　　　　　文学賞メッタ斬り！（2008年版（たいへんよくでき）

  2008.07.31

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  海堂尊

  「チームバチスタの栄光」（2006/01）はテーマといい、キャラといい、衝撃的に面白かった。それからずっと海堂尊の作品には注目している。現役の勤務医なのに、年に２～３作出版しているのがすごい。才能ある人は時間に使い方も上手なんだなという模範例。最近読んだのは、「ジーン・ワルツ」（ 2008/03 ）で、不妊治療と産科医がテーマ。　崩壊寸前の産科医療について書きたかったんだな、というのがよくわかった。論文っぽい部分は飛ばし読み。しかし、少子化対策はこの辺からやらないとダメだな。厚労省を批判する部分には共感。不妊治療を援助したり、分娩費を無料にしたりできないもんかねぇ。他所の国に何千億円差し出すまえに国民を援助してくれよ、と思う。「ジェネラル・ルージュの凱旋」（2007/4/7）も医学の問題点を描いている。救急医療の弱点とAIの必要性をあまりにも力説しているので、はじめにテーマあきりといったかんじ。　AIについては、たかじんの番組に出演して熱弁をふるっていたのが記憶に新しい。「ブラックペアン」（2007/9/21） はペアンという手術器具にまつわる話。外科教室のヒエラルキーによって手術が左右されるという、患者にとっては薄ら寒くなるようなエピソードがいっぱい。ミステリー度の高さではピカイチ。　 「螺鈿迷宮」（2006/11/30 ）は終末医療がテーマ。読んでいる時はそれなりに面白かったが、あとに残るものがない。螺鈿調の表紙の美しさではピカイチ。　「ナイチンゲールの沈黙」(2006/10/6)は、唯一読了できなかった作品。どーも最初からひかれるものがなかった。でも、もう一度チャレンジしたい。「夢見る黄金地球儀」(2007/10)というライトノベルらしき作品もあるが、未読。 　　　　　　　ブラックペアン1988　　　　　　螺鈿迷宮

  2008.07.22

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  北大路公子

  今ダントツに面白いエッセイストが、北大路公子。抱腹絶倒の可笑しさを最新作の「生きていてもいいかしら日記」で堪能。続いて前作の「最後のおでん」を読んでいる。あと、「枕もとに靴―ああ無情の泥酔日記」を読めば、全作品を読破したことになるのだ。「４０歳すぎて独身で親と暮らし、仕事はしてるようなしてないような、趣味は昼酒、もちろん夜も飲んで泥酔」な作者。新たな無頼派登場だ。もうこれから発売されるごとに追っかけますよ。彼女が一生このままでいるか、それとも劇的な波乱に遭遇するのか見届けますぞ、とストーカーなわたくし。だらだらと過ごす日常生活を書いているんだけど、目次の見出しを見てもあまりに普通っぽくてちっとも面白そうじゃない。ところが、読んでみるとこれがなんとも可笑しい。自分を卑下するでもなく開き直るでもなく、負け犬とかお一人様とかの作家みたいにギャンギャン騒がず、自堕落な毎日を楽しんだり嘆いたりキレたり・・・ひたすらユルユルしている様子がまことに愉快天晴れ。そういうつまらないどーでもいいことを書いても読ませるのは、観察力と洞察力と文章力、この三拍子揃ってこそである。〆の文も気が利いて絶妙。「あまのにゅう」という謎の言葉をめぐる回想を書いた「泥酔メールの謎」。ここで決定的にハマル。これを読んで笑わない人とは一生わかりあえないだろう、と思うわたくし。北海道ではワイパーに夏用と冬用があるそうで、寒冷地はなにかと物入りだな～やっぱ老後は南の島に住みたい、と思うわたくし。「私は常に佐藤浩市が隣に引っ越してきた場合を考えて生きている。」とのくだりがツボ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　生きていてもいいかしら日記

  2008.07.08

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  『メモリー・キーパーの娘』

  １９６４年から１９８９年までの医師一家の物語。 こんなに最初から最後までひきつけて離さない小説は久しぶり。 大河小説のようでいて、各章が短編小説のように完成している。ストーリー頼りの小説ではなく、人物の行動や心理描写が細やかで読み手の心にひしと訴えかけてくる。登場人物は少なく、ドラマチックな事件も淡々と描かれていて読みやすい。一人ひとりの気持ちがじわじわと胸に迫ってくる。特に、母親（＝メモリー・キーパの妻）の喪失感は痛々しく切ない。 メモリー・キーパーとは写真ばかり写している父親で、生まれたばかりの双子の片割れの娘がダウン症だったために妻には死産と嘘をついて娘を他人に渡したとんでもない馬鹿野郎のこと。自分の手で取り上げた子をいとも簡単に見捨てたのは、肉親の情よりも医師としての冷静な判断が勝ったのだろう。自身の不幸な生い立ちから考えて、妻のために良かれと思ってやったことではある。しかし、この重い秘密がもたらす歪みがやがて夫婦関係＆親子関係をこわして行く。その様子が節目節目で切り取って語られる。 短命だと予想された娘は温かい家族の下で健康に育って２５歳になったが、父と娘は二度と会うことはなく、実の母との初対面はちぐはぐな会話に終わる。父が死んだ後、母も息子も娘も心機一転して新たな生活を始める終章はさわやか。 産みの親よりも育ての親というラストは、厳しくもリアル。とりかえしのつかない嘘は人生を狂わせるよというお話。　　　　　　　　　　メモリー・キーパーの娘

  2008.06.21

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  『 いのちのパレード 』

  　　　　　　　　　　　　　　　　　いのちのパレード恩田陸は長編よりも短編がだんぜん面白い。さまざまな発想でわくわくさせてくれる。奇想短編シリーズとして「ジェイノベル」に連載された１５編をまとめた短編集。2004年から2007年の作品で、時代や国籍を超えた小説をコンセプトとしている。ＳＦでもなく怪奇小説でもなく、奇妙な味わいで、独特なイメージの世界を堪能。フィニィ、ハイスミス、レンデル、星新一、東野圭吾、宮崎駿、歌野正午・・・・といった作家を彷彿とさせる。「スペインの苔」は傑作。「犬に噛まれた」という表現をモチーフにした物語。安易に常套句を使うことへの批判が辛辣。話もテーマも鋭くてすばらしい。「蛇と虹」は最後のオチがすごい。姉妹の会話が憶測を呼ぶのだけれど。。。逆「葉桜」とはねぇ・・・・まんまと騙された。シュールなお話。「当籤者」は不条理もの。ドラマか映画にあったような話だけど、なかなかコワイ。「いのちのパレード」と「かたつむり注意報」は、ＳＦチックな同じ系統の作品。脳内劇場でアニメーションのよう立ち上がってくる描写が見事。「あなたの善良なる教え子より」はミステリー小説仕立て。東野圭吾が書いてそうなストーリー。「エンドマークまでご一緒に」は抱腹絶倒、大共感。誰もが思っていること、「ミュージカルって冷静に観たら妙な場面ばっかり」を克明に文章化。タモリが大喜びしそうな作品。　書き下ろしの「夜想曲」はほっとするフェアリーテール。静寂で格調高い佳作。これはもう作家のみなさんの願望だろうな。他にも傑作揃いで、装丁もスタイリッシュ。

  2008.06.07

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• 『 豚キムチにジンクスはあるのか 』

  「絲的炊事記」は、実験的で思いつきだらけで怪しげでいい加減でダイナミックな料理のエッセイ。ページごとに笑える。気取った料理エッセイは多いが、これだけ砕けたというか脱力するのも珍しい。結局は、酒の肴になるところが絲山流。男前な雰囲気がぷんぷん。小柄な人のイメージだったけど、174ｃｍもあるとは知らなかった。最初、気になるタイトルのからランダムに読んで、あとで通して読んだ。二度読んでも面白かった。絲山秋子の小説を読み返したことはないが、これは繰り返し読んでも発見があるし、二度笑える。恋こがれた時の「トラバタ」とか。饒舌な語りはさーっと書き流されたようだけど、その実は何度も推敲を重ねた文章ではないか、と思える。自問自答、自虐、冗談、読者をからかうところ、あまりにもテンポが良い。うつ状態で何もできない時期もあるのだけど、そこさえ陰鬱ではない。最後の「親父と作るキッシュ」　だけが異色。大正生まれのお父さんは、洋食のみを作る料理好き。父親に料理を教わりながら一緒に作るって、意外性とほのぼの感があっていい。彼女が大学時代にお父さんの講義（社会調査）を受講していた、というのも意外。唯一マネしてみようと思ったのは、インドネシア調味料の「サンバルソース」。

  2008.06.04

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• 『ひかない魚』

  昭和の日で休日。今年は、火曜日の休日が今日と来週しかない（除元日）。水曜日と金曜日の休みは皆無。ハッピーマンデーなんかありがたくもなんともない、とゆーか大嫌い。週中の休みの方がよっぽどありがたい。火曜日の休みが最高にほしい！ お昼は義母を誘って、筑紫野へ。食べたがっていた「鯉づくし定食」をご馳走。鯉は食べない私らは、鰻の蒲焼を。夜は太宰府でお鮨。ということで、魚尽くしの一日。『ひかない魚』は、銀座で35年間営業して、辻邦生の１周忌を機に閉店した「きよ田」の大将の聞き語り回想録。今ではまずありえないことだけど、彼は２０歳という若さで銀座に最初の店を持った。その後「きよ田」を開店して、いつの間にか文人・文化人が常連の名店となった。白洲次郎・正子夫妻、辻邦生・佐保子夫妻、小林秀雄、井伏鱒二、井上靖、今日出海、犬丸一郎、梅原龍三郎、谷川徹三親子・・・・・店は客によって作られるというが、いやはやすごい面子。こんなお店、敷居が高すぎて一般人はとても行けないでしょう。彼らとはプライベートでも親しかった様子。ここまであけすけに語っていいのか、というくらいエピソードてんこ盛りで、読み飽きない。交遊録は野次馬的に読んだが、一番興味深かったのは、「きよ田　あれこれ」の章。短いけれど、示唆に富んでいる。「魚は海が育てるんじゃなくて、山が育てる。山から流れ込む水で。」　これには驚き。仙台や北海道の漁師はひまがあれば山へ行って植林しているという。それも落葉樹じゃないとダメと。自然は循環してるんだなぁ。食べものの仕事してる人はいろいろ食べて研究するものだと思っていた。ところが、新津氏はあまり食べない上に、ものすごい偏食。なんと、酢が嫌い、魚が嫌いだってさ。そんな鮨屋いるの？新津氏が銀座で復活するとのニュースで再読。（ただし、彼自身のお店ではない）ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー＜今日の読書＞ひかない魚　/　新津 武昭、伊達宮 豊 （読了）

  2008.04.29

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• 『へび女房 』

  元武家のおかみさんが甲斐性なしの夫に代わって生活のために「へびや」を始めた、という明治初期のお話『へび女房 』 のほか、同時代の実在の人物をモデルにした短編集。息子の嫁となる上臈に会いに行く場面が圧巻。互いの腹の探りあいで本音を見破る対決がスリリング。会話の流れが上手い。ひねりの利いた結末が感動的。やっぱ、幸せを勝ち取る女は賢いな。「エドの舞踏会」とちょっとかぶる話もあって、興味ある題材ばかり。どれも秀逸。作者、蜂谷涼をググッてみたら、女性だった。どおりで、女の気持ちがこと細かく描かれているわ。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー＜今日の読書＞復讐はお好き？/　カール・ハイセン追伸　/　真保裕一　（読了）

  2008.04.25

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• 『 悪果 』　

  黒川博行の作品を久々に読む。「文福茶釜」（面白かった！）以来だろうか。最近の作品は二文字漢字のタイトルばっかりでピカレスク長編らしく、どうもとっつきにくい。『 悪果 』は直木賞の候補作で、このミス2008年でなん位かに入った作品。かなり面白かった。まず、悪徳警官の関西弁の会話のテンポがいい。警察官が捜査費の捻出や自らの遊興費のためにシノギに励むという話をここまで徹底的に書いたのは初めて読んだ。相当下調べをしたはず。警官にゆすられたかられる金持ちギャンブラーたちも実話のような存在感。特にカラオケ屋のガサ入れ、デパートでの追跡劇は迫力。裏社会にどっぷり染まっていく姿は警察小説ではありがちといえばありがちなんだけど、飽きずに読ませる。また、家庭崩壊もよくあるパターン。悪徳警官に似合いの悪玉妻なんてのがそろそろ出てこないかな。キャラ立ちすぎる？　ちょっとまた、他の作品を読んでみようかと見直した。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー＜今日の読書＞パレード　/　吉田修一日本の黒い霧　/　松本清張

  2008.04.23

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• 『 警官の血 』

  警官一家の三代記。上下２巻の作品は久しぶり。警察小説のマイブームはとっくに過ぎ去ったのでたぶん読み通せないだろうなと思っていたら、サクサクといいペースで読めた。物語は上野公園がメイン舞台になっている。主人公の家があって、殺人事件が起こって、不可解な死に方をしたり、と終始上野付近が背景になっている。上野公園には先月初めて行ったばかりで、イメージが容易に浮かんでくる。上野公園は想像した以上に広くて整備され、この当時とはまったく違うだろうが、土地柄というか雰囲気はなんとなくわかった。もし行ってなかったらこの物語の解釈はちょっと違ったものになったかも。警官であることの誇りや悩みがよく伝わってくる。交番勤めから公安関係へ、という流れが親戚の一家とよく似ていて、格別の感慨。また、人の心の奥底にあるものの恐ろしさを思い知らされる。ミステリーというよりも、家族の物語として読み応えのあるものだった。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー＜今日の読書＞警官の血　下　/　佐々木譲　（読了）被告人、前へ。　/ 阿曽山大噴火

  2008.04.14

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• 『 月島慕情 』

  まーたやられちまったよ。浅田次郎のあざとい話にはすっかり免疫ができてるはずなのに・・・・その手には乗らないよー、いちいち泣かされてたまるかなんて思ってても、だびだびにされちまう。表題作の「月島慕情」、吉原の太夫がほれた男に落籍されて幸せになるはずが。。。。これは一見ホロリとなるような話。でも、月島に行ってとんでもない事実を知ってしまった。偶然にしては出来すぎているけど。。。切ないどころか興ざめな話なのに、語り口の上手さは抜群。「雪鰻」みたいな思い出話にはめっぽう弱い。「めぐりあい」なんて手垢のついたよくある話だし、「冬の星座」の因縁話は少々無理があるし、「インセクト」の勘違いには笑っちゃったけど、面白い。やっぱ、この手の話の上手さは抜群。最後の「シューシャインボーイ」が極めつけ。これは長編にしてもいいくらいにドラマチック。ただし、筋書きもラストも容易に想像がつく典型的な「浅田」小説。それなのにそれなのに、靴磨き名人の心意気にジーンとくる。妙なひねりを入れず淡々として落ち着くところに落ち着くのがいい。なんといっても登場人物の魅力がストーリーを超えている。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー＜今日の読書＞プロ論。　情熱探訪編　（読了）警官の血　上　/　佐々木譲　（読了）

  2008.04.13

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• 『 BESTッス！』

  寝転がって一気読み。といっても、ほとんどが今まで書いた本からの寄せ集めだからして、飛ばし読みで充分。だらけた気分の時はこんな本がちょうどよい。西原へのオマージュ文が本気正気モードで、ここだけ毛色が違ってる。脳出血で倒れて手術と長期のリハビリをしていたこと、お母さんが肺がんで亡くなったこと、熱帯魚にはまった話、あたりが書き下ろし。お笑いの「ダイノジ」の楽屋を訪ねた時、ウケ狙いのコントが大スベリしてダイノジの二人だけでなく吉本のスタッフを巻き込んで大騒ぎになった話が笑える。金髪のガキどもにアヤつけられて戦争になった話とは対極にあるけど、フツウの大人はそう反応するだろう。本人丸くなったつもりでも、いるだけでコワイんだよ、ゲッツ。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー＜今日の読書＞警官の血　上　/　佐々木譲BESTッス！　/　ゲッツ板谷　（読了）

  2008.04.08

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• 『 裁判官の爆笑お言葉集 』

  裁判ウオッチング系の本がちらほら流行っている。裁判員制度導入も追い風になってるし、最近注目の裁判が目白押し。この前の中華の時に、司法修習生のみなっちとこの本の話になった。著者の長嶺超輝は、司法試験を何度か受けた後ライターになった人で、もしかしたらみなっちと同業だったかもしれない人。だから、裁判の見方は、他のお笑い系ライターと違ってセミプロ的。マニアックな視点が面白い。新司法試験は優秀なだけでなく、かなりのタフさが要求される。今年秋で修習があけるというみなっちは、確認してないけどたぶんその一期生。背広がまだ板についてなくて穏やかにほほえむ彼は、根性あるんだな。20代の男は意外と見かけによらない。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー＜今日の読書＞ブラック・ペアン　/ 海堂尊

  2008.03.15

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• 『甲子園への遺言』　門田隆将

  伝説の打撃コーチ高畠導宏の生涯。ドラマ「フルスイング」が始まってすぐに読み始めた。だから、ずっと高橋克美のイメージで脳内再現された。写真を見るとけっこう似ている。そう違ってない、と思うが。。。。亡くなる直前のことから始まる。ガン告知されて書かれた　「無念。もしもの時、取り乱すまいぞ。」という言葉を読んでから思うこと多く、しばらく文字を追えなかった。いずれ誰にでも来る「死を覚悟する時」。その時、何を思うだろうかと。ドラマの原作と思って読んだら意外なことに、学校の話がメインではなくて、子供時代からプロ野球コーチ時代までのことがほとんどだった。野球の才能に恵まれ、頭もよく、人柄も良く、努力の人、そういったことがいろんなエピソードで語られる。並たいていの人望ではこれだけの話は集まらない。プロ野球の知識も興味もないkellyが読んでもかなり面白かった。少年時代から野球好きで阪神＆南海ファンだった亡父は高畠氏をきっと知っていたはず。生きていたら語りあえただろうな、と思って二重にしんみり。これからますます立派な教師になって貴重な人材を育てたであろう人がこんなにも早く、志半ばで逝ってしまい、わいせつ罪で逮捕されたり教え子を脅迫したりする教師がのうのうと生きているのはなぜか、神様と仏様にその理由を訊いてみたいよ。まったく「無念」としか言いようがない。高畠導宏氏は、野球だけではなく、人としての在りようを広く教えた。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー＜今日の読書＞TOKYO YEAR ZERO　/　デイヴィッド・ ピース

  2008.03.14

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  ロバート・サブダ　しかけ絵本の世界展

  人よんで、「紙の魔術師」のロバート・サブダの展覧会へ。「不思議の国のアリス」の絵本の中にあるトランプが宙に舞っているシーンが巨大な作品になっていてびっくり。でも、アリスの顔が可愛くないんだわ・・・・残念！大判の絵本は、手前のボタンを押すと自動的に開くようになっている。決して触らせてはくれない。完成した作品だけでなく、スケッチや製作過程が見れるのが展覧会ならではの魅力。色画用紙の引き出しがたくさんあるアトリエの再現も面白いし、貴重なアンティーク物のしかけ絵本の展示もある。恐竜の世界もお得意みたいで、すごい迫力。人物の顔が怖すぎるよ・・・「オズの魔法使い」が素晴らしかった。竜巻がちゃんとぐるぐる回る仕掛けになっているのが、とても気に入った。バルーンが上がるシーンにも工夫がこらしてある。顔はやはり怖いが。。。お土産はさんざん迷った挙句、クリスマスの小さな本にした。Ｃ・Ｈ・Ｒ・Ｉ・Ｓ・Ｔ・Ｍ・Ａ・Ｓ　を頭文字にした単語がテーマ。お気に入りは「ICICLE」のページ、シンプルでcool。「SNOWFLAKE」の繊細さ、回転する「RIBBON」もステキ。　　　　　　　　　　　　　【ロバート・サブダ　しかけ絵本】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー＜今日の読書＞わたしはここにいる、と呟く　/　新津きよみ

  2008.03.07

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• 『 人柱はミイラと出会う 』

  「人柱」を生業とする男が謎解きをする石持浅海のミステリー短編集。人柱職人の仕事がまことしやかに描かれるので、読者の５％くらいはこんな職業がホントにあると信じるかもしれない。でも、さすがにお歯黒や参勤交代がでてくる時点で、まったく架空の設定だというのがわかる。江戸時代の風習が残る現代の日本が舞台になっている。表題作の他は、「黒衣は議場から消える」　「お歯黒は独身に似合わない」　「厄年は怪我に注意」　「鷹は大空に舞う」　「ミョウガは心に効くクスリ」　「参勤交代は知事の務め」 。タイトルを見ただけですごく面白そうだし、実際に読んでみても、設定と発想のユニークさは抜群。留学生の女の子の視点も描かれて、いっしょに不思議がることもできる。それなのに、事件や謎解きがどうも印象に残らない。設定が面白すぎて、どうしてもそっちに気をとられてしまうのだ。だけど、設定自体を楽しむ、そんなミステリーもあっていい。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー＜今日の読書＞てのひら怪談　/　ビーケーワン怪談大賞傑作選

  2008.02.21

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• 『 私の男 』

  本を読む暇がないとか眠くなるとか読みづらいとかいう事の実態は結局、本がつまらない！なのだ。選択眼が鈍ってる、ともいう。面白い本だと寸暇を惜しんで何を置いても読み進むんだな、と久々に実感。で、初めて読んだ桜庭一樹の本は、ほぼ一気読み。テーマと表紙がアレだから途中で投げるような気がしてたけど、意外や意外。描写の上手さ、ささいな謎に引っ張られる。読書は好奇心なんだな。結婚式の前日に娘と養父と婚約者が会う場面から始まる。その後の意表をついた展開で、とんだ食わせ者の娘だと思わせられるのだが、事情がわかるにつれて切ない雰囲気になってくる。話は時間をさかのぼって、時には語り手が変わって進む。この構成が面白いし、実に効果的。時系列に沿って話が進んでいたら、面白さは半減しただろう。「北」とは？　震災は？　なぜ養父に？　小町は何者？　押入れの中にあるのは？　カメラに写っているのは？　こういった疑問が過去にさかのぼるにつれて明かされていく仕組みになっている。「白夜行」のような桐野夏生が書くようなお話。二人の関係はタブーであり違法なのだけど、暴力はなく痛々しいほどの愛情に満ちている。津波の場面が映画のように脳内に再現されるし、おじいさんが流された氷原の景色が白い残像を残す。イメージたっぷりの小説。最後に「家族」ってなんだろう、と考えてしまう。花の本当の父親はわかったけれど、母は誰・・・・・ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー＜今日の読書＞私の男　/　桜庭一樹　（読了）

  2008.02.20

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• 『 石のささやき 』

  子供を亡くした母親とその弟の物語。事故死と断定されたが、母親は元夫が絡んでいるのではないかと疑う。姉の精神状態はすでに普通でなくなっていて、弟は姉を案じながらも、姉と自分の娘との接近に危険を感じる。姉と弟の心理状態が緊迫していく過程がすごい。部屋中にファックスの紙やメモ紙が散乱する場面では、映画「ビューティフル・マインド」の場面が頭をよぎる。狂気のうちに亡くなった父親が絡んでくると、もう救いようがないなと感じるのだけど、果たしてその通りに。ブリガム行き。狂気は遺伝するかのごとく書かれているが、そうなのだろうか・・・二人称で書かれた教科書体の部分と三人称で書かれた明朝体の部分とが交互になっている。この構成が妙に効果的で、不安な気分が倍増する。誰が「おまえ」と呼んでいるのか？　それがわかった時には、ぞっとする。読後の重苦しさ＆どんより度は、「わたしを離さないで」以来のこと。0930　米子１４日間の出張から帰国。順調に終わったと電話。今日はオフで、これから帰宅。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー＜今日の読書＞石のささやき /　トマス・Ｈ・クック　（読了）ダンシング・ヴァニティ /　筒井康隆甲子園への遺言　/　門田隆将

  2008.02.19

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• 『 いつか、キャッチボールをする日』

  うだつのあがらないプロ野球選手の息子が心臓病と判明、しかも余命短いと宣言されるのが発端。病床にいる息子ともう一度キャッチボールがやりたい、と父は願う。というのが大筋だが、単なる難病ものではなくて、ヤクザ、大金、八百長、刺殺、逃亡、ヘリジャック・・・・・と盛りだくさんの内容でスピーディに話が進む。派手なストーリーなのにワクワク度は低く、難病もの＆父と子の愛情物語なのに感動も薄い。なんだか安直な２時間サスペンスドラマのような感じ。プロ野球に関するマニアックな記述が間にちょこちょこ出てくるが、興味ないのでそこはナナメ読み＆飛ばし読み。ただの薀蓄で、ストーリーには特に関係ないみたい。何もかもが予想通りに運ぶ定食のような話で、鯨統一郎の作品とは思えないような真っ当な小説。ひょっとして野球マニア向けに書かれてる？ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー＜今日の読書＞甲子園への遺言　/　門田隆将いつか、キャッチボールをする日　/　鯨統一郎　（読了）

  2008.02.18

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• 『木洩れ日に泳ぐ魚』

  別々に暮らすことにした若い男女が最後の夜に語り合う。どうしてこんなにも緊張感あふれる会話なのか・・・ある男の死に関する「疑い」のためだけではなさそう。ただの恋愛関係でないことが判ると、がぜんミステリー色が強くなる。お互いの幼い頃の記憶をたどっていくうちに浮かび上がる「疑惑」がじわじわと明らかになっていく。この二人の関係がものすごく特異で、過去の記憶から幼女の死亡事件が掘り起こされるところが圧巻。そんなバカな、と思ってしまうが、あくまでも二人の間での憶測だから真相は闇の中。あのナイフがもっと劇的な役割を果たすのではないかと期待したけれど、意外と普通に終わってしまった。恩田陸らしい曖昧なラスト。ポップな表紙がかわいい。内容とはミスマッチなんだけど・・・・米子　トリノ　バラベラで２公演。平日で２１時開演なのに、８０００人の大盛況。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー＜今日の読書＞木洩れ日に泳ぐ魚 /　恩田陸　（読了）

  2008.02.15

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• 『 ウォッチメイカー 』

  リンカーン・ライムのシリーズ７作目。「このミス」で１位になった作品とは相性が悪いし、そろそろマンネリ化する頃だしで、これだけの長編を読み通せるかどうか自信なかったのに、あっさり読破。先が読めない展開にどんでん返しの連続で、興味がそがれること全くなし。ミステリーの面白さは犯人当てやトリック破りではなくて、犯罪周辺の人間模様にあると常々思っているが、その辺をみっちり堪能。犯行現場にムーンフェイスの置時計を置いていく殺人者「ウォッチメイカー」。冒頭から頭脳明晰で残酷な人物像を描いて、いかにも手ごわそうにみうけられる。連続殺人を匂わせていながら、失敗が続いてあっさり捕まる。ページは半ば過ぎたばかりで、「あれれ、もうおしまい？」と拍子抜けするが、これから二転三転。無関係と思われた事件が絡んでくる。警察の汚職も関わって複雑化。アメリアが刑事となって初めて別の事件を捜査したり、父親の過去にショックを受けたり、進退に悩む、といったストーリーが平行する。これがただのサイドストーリーではなく、「ウォッチメイカー」に関係してくるところが見事。今回、活躍するのは、キネシクスのエキスパートでキャサリン・ダンスというカリフォルニアからきた新キャラ。これが強烈。彼女は「人間嘘発見器」なのだ。お陰で証拠主義のライムは出番なし。キネシクス分析が100％当たるのがあまりにも都合よすぎるのだが、面白い。キャサリンは今後も登場するらしい。キネシクスに興味津々。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー＜今日の読書＞石のささやき /　トマス・Ｈ・クック

  2008.02.14

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• 『 昭和の都市伝説 』

  中扉に「ある男のアルバムより　小さな昭和史」とある。タイトルと違うやん・・・１９４７年生まれの著者の思い出話が中心で、怪談や恐怖譚を期待したら、おもいっきり肩透かしをくらう。巻頭の写真が変だと思ったら、すべて加工してあった。生活編では、「夜にツメを切るな」とか「ヘビイチゴは食べるな」、必ず別れるデートスポット、霊柩車のジンクスなど、昔よく聞いた話。読みながら、思いがけずいろんなことを思い出す。遊び編は、フラフープ、貸本屋、メンコ、２Ｂ弾、缶蹴りなどで、知ってるだけに懐かしい。ヒーロー・ヒロイン編は、ゴジラ、月光仮面、美空ひばり、ブラッシー、知ってるような知らないようなどうでもいい話がほとんどで、ナナメ読み。一番興味あるのは、やはり事件編。２・２６、下山、吉展ちゃん、洞爺丸、三億円、浅間山、かい人２１面相などで、身の回りの噂やコネタがほとんど。しかし、妙に気になる記述が多い。心に残ったベスト３東京タワーは、朝鮮戦争でスクラップになった米軍の戦車を溶かして造られた。森喜朗が目撃して語った「首相官邸の幽霊」。日航１２３便が墜落した当時の機内誌「ウィング」には、上野村の村長の記事が載っていた。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー＜今日の読書＞昭和の都市伝説　/　並木伸一郎 （読了）石のささやき /　トマス・Ｈ・クック

  2008.02.13

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• 『案外、買い物好き』

  村上龍の買い物エッセイ。時期的には、「半島を出よ」の執筆前後が多く、その辺の様子もちらほら書いてある。半分以上がシャツの話で、それもミラノとかローマとかペルージャやパリでの話。「カンブリア宮殿」で時々「おっ！」というような個性的なシャツを着ているのを見かけるが、あの衣装のうちシャツだけは自分で買ってきた私物。シャツマニアとは知らなかったので、てっきりスタイリストの借り物だと思ってた。運転手つきのメルセデスに乗って出かけ、１軒のシャツ店で２０～３０万円分とか、暇つぶしに寄ったガラス店でグラス類をダンボール３箱分とか・・・・大人買いというか、富豪買い。他には、靴、ネクタイ、シガーグッズ、バイク、と全然興味ないのばっかし。ま、はなっから参考にする気はなかったが。なのに読んでしまったのは、なぜだ・・・合間に食べ物話も少々。ところが、彼は日本ではほとんど買い物をしないらしい。で、長い間買い物をしないと、買い物が楽しいという脳の回路が切れてどうでもよくなる、という。たしかにそれはある。この考察の面白さは、次の段落。曰く、「セックスでも似たようなことが言えるらしい。ずっとセックスをしないままでいると性的欲求そのものの回路が断たれてしまうという・・・・」　そして、ブラジルのドライバーもサイパンの日系人もマドリードのチュニジア人もみな同じことを言っていた、と続く。実例付きだぞ。。。。で、「ＰＣで長らく使っていないソフトがフリーズして機能しなくなるのと似ている。」と結ぶ。へぇー、そうなんだ・・・・ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー＜今日の読書＞ケダモノダモノ /　伊東乾石のささやき /　トマス・Ｈ・クック

  2008.02.12

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• 『香菜里屋を知っていますか』

  「”お客さまが持ち込む謎とその解決”、それが当店の裏メニューです。」　ビアバー香菜里屋を舞台にした連作ミステリーが５話。この本でシリーズ完結。もう読めないのがとっても残念。傑作。全体に静かな夜のトーンが貫かれている。この雰囲気が最高。そして、これほど料理が美味しそうな小説は他にない。さりげなく書かれた料理がどれも香りたつような存在感。一見シンプルですぐマネできそうなのばかりなのだが、なかなかどうして。。。「ただそれだけのこと」というマスターは曲者だ。水っぽいマティーニの謎、文庫本のカバーを取り替えた話、過冷却マジック、タンシチューの謎、閉店・・・淡々と語られるが、ストーリーには充分な説得力があり、裏に隠された心情もよく理解できる。別シリーズの冬狐堂と蓮丈が登場する最終作にはただただ唖然。もしかして鴨ネギコンビも？　なんて期待したけど、場違いでぶち壊しになる。出てこなくて当然。「香菜里屋」シリーズを最初から全部読み返したい。今度はゆっくりと料理メモをとりながら。　　メモ　　ヤワタノカミ＝製鉄の神→八幡製鉄　　　　　　 フランクシナトラ＝ジンとバーボンのみをミキシングしたカクテルーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー＜今日の読書＞香菜里屋を知っていますか　/　北森鴻　（読了）

  2008.02.02

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• 『 野蛮人のテーブルマナー 』

  外交＆インテリジェンス活動で培ったノウハウを若いビジネスマンに伝授する、といったビジネスコラムのような趣きで、一般人に応用できそうな事項もちらほらあるが、画期的なものはない。やはり、外交エピソード集として読むのが面白い。ロシアからの「警告」でソフトな毒を盛られた話は恐ろしすぎるが、よくあることだと語る。いつものごとく鈴木宗男礼賛も書かれていて、彼に対する世間の評価が低すぎるのが気にかかってくる。というのは、洗脳されてきたせいか・・・　　国際ジャーナリストの河合洋一郎との対談は外交の奥の奥まで知る者同士の含みの多い会話になっていて、興味深い。彼の書く本は長すぎるし、知識の乏しいロシア関係が多いのでだんだん付いていけなくなって挫折するのが常なのだけど、これは読みやすい。映画「グッド・シェパード」をインテリジェンス映画として高く評価している。たぶん、まだ見てない。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー＜今日の読書＞野蛮人のテーブルマナー　/　佐藤優　（読了）

  2008.02.01

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• 『Ｒのつく月には気をつけよう』

  石持浅海の食と恋にまつわるミステリー短編が７話。３人の男女とゲストが部屋に集まって食事会を催し、身の回りで起こった出来事について語り合う。毎回おいしそうな食べ物とお酒がでてくるという楽しい設定になっている。表題作だけは、ミステリー集で読んだことがあった。聞き流してしまいそうな話からウソを見破るところがミソでって展開の仕方もなかなか。で、今回はシリーズ集になったのを読む。砕いたチキンラーメンの話、ぎんなんの話なんかは、そこまで疑うのか？と可笑しくなるのだけど、思慮深いというか疑り深い人達が酒に酔って話すとああいう流れになるな、と思い当たらないでもない。　豚の角煮の話に至っては、料理ひとつひとつが真剣勝負みたいな受け止められ方で、なんともはや・・・・・カチカチのフランスパンを渡す？　このカップルは珍妙で複雑すぎる。。。。こんなにも深読みや裏読みを要求するような行動は無意味。普通気づかないだろう。どうしてストレートに伝えない？　奇妙な行動や屈折した気持は、ミステリー仕立てにするために作られたようで不自然。強引な謎解きに納得いかないのはこちらの理解不足？　北森鴻のシリーズとついひき比べてしまうので、見劣りする。もっとも、最後の話はきちっとキメていた。人間燻製って・・・（笑ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー＜今日の読書＞野蛮人のテーブルマナー　/　佐藤優

  2008.01.30

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• 『名残り火』

  藤原伊織の小説は、隙がない、明晰、濃ゆい、緻密。コンビニ業界と飲料会社を舞台にした暴行致死事件の真相と犯人探し。登場人物それぞれがかかえる暗い過去が小出しに判明するのがなかなか興味深い。マル・ウォルドン、ウィントン・ケリー、コルトレーン、サラ・ヴォーン、アニタ・オデイ・・・・流れる曲で、その場のトーンがよく伝わってくる。音楽を小道具にする小説は多いが、逆効果になっているとしか思えないものも多い。春樹のとかウザすぎるし。ここでは、ジャズがいいアクセントになっている。ナミちゃんのお店にいる堀江の姿が立体的に浮かんでくるのだった。『名残り火』という静かで地味なタイトルとは裏腹に、最後が派手。復讐も自殺も大きな炎で完結するのがそれまでの静かなトーンと相反して面白い読後感となった。連載終了後、８章まで加筆・改稿された後に作者逝去。最後の長編小説。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー＜今日の読書＞名残り火　/ 藤原伊織　（読了）

  2008.01.23

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