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テーマ:DVD映画鑑賞(13967)
カテゴリ:映画/寅さんの『男はつらいよ』
【男はつらいよ~純情篇~】
「おいちゃん、大丈夫かな? どうも頼りねぇな、あの医者は」 「大丈夫だよ。あの医者はちょっとでも自信がねぇと、すぐ他の医者を紹介するんだ。その点信用していいよ」 「情けねぇ医者だなおい、じゃずい分殺してんだろ?」 『男はつらいよ』シリーズも6作目になると、なんとなく、というか完全にパターンが見えて来る。 ラストの失恋して柴又を去るシーンはともかく、寅さんの目を通して親子の情愛を見たり、夫婦間のトラブルを見たり、一般的な人々が抱える様々な問題を取り上げ、見ごたえのあるストーリー展開となっている。 こういう小さなテーマをたくさん集めて、その時代の世相を反映した作品に仕上げる労力は、たとえ毎回パターン化した展開であっても、新しさを感じるから不思議だ。 本作でのマドンナは大映のトップスターである若尾文子である。 それはもう上品なうえに落ち着いた物腰で、チラリと登場しただけでも圧倒的な存在感のある女優さんだ。 和の美しさをかもし出すこの手の女優さんは、現代では珍しい。実際にはとてもサバけた人柄で、女々しいところがないらしいのだが、そんな気風の良さも品よくオブラートに包んで、お淑やかさを前面に演出できるのも、さすがはトップスターのことだけはある。 話はこうだ。 長崎で五島に渡る船を待っていたところ、赤ん坊を抱いた女を見かける。 訊けば女も五島へ渡るつもりらしいのだが、あいにく最終の便が出てしまい、明日まで船は出ない。 金がないから貸してくれという女をかわいそうに思った寅さんは、自分の泊まる宿に一緒に連れて行くことにする。 翌日、五島に渡った女の実家までついて行くハメになった寅さんは、貧しい父親の暮らしぶりを目の当たりにしながらも、娘の甘えを許さない父親の深い情愛に胸を打たれ、東京へ帰りたくなってしまう。 結局、寅さんは柴又へ帰って来ると、どうもおいちゃんもおばちゃんも自分を歓迎しないよそよそしさがある。 訊けば、寅さんの部屋を誰かに貸してしまったとのこと。 寅さんは怒って出て行こうとすると、その下宿人にバッタリ遭遇。 それは、おばちゃんの遠縁にあたる夕子という美しい女性で、亭主と上手くいっておらず、別居のための仮住まいをさせてもらうことになったのだ。 寅さんは、例によって夕子に熱を上げてしまい、旅に出るのを先延ばしするのだった。 見どころとしては、さくらの亭主である博が、タコ社長のところの印刷工場を辞めて独立しようとする動きを見せるくだりだ。 この時の博のとんがり様はスゴイ。これこそが山田監督の演出かもしれないが、学歴にコンプレックスを抱く博が、唯一皆を見返せるのは、独立して自分の工場を持つこと。 つまり、経営者となって人の上に立つことなのだ。 これを達成するにはまず金がいる。ふだんは疎遠になっている田舎の父親に借金を申し込んだり、頼りにならないはずの寅さんを味方につけて、タコ社長を説き伏せてもらおうとするくだりなど、なかなか話の流れに説得力がある。 だが、そんな博の行動を冷静に見つめるさくらは、もっと上をいく。 そんなに物事がトントン拍子には運ばないことを、誰よりも痛感している演出だ。 さらに、夕子が体調を崩してヤブ医者が往診に来るのだが、このあたりも面白い。 ヤブ医者に扮するのは松村達雄で、後においちゃん役となる役者さんだ。 良い意味でいいかげんな団子屋の主人にふさわしい、味わいのある演技を見せてくれることになる。 6作目は、寅さんが寅さんらしく、生き生きと描かれていることに注目だ。 初めて視聴するにも全く問題のない作品にも思える。シリーズ初期の代表作と言っても過言ではないかもしれない。 1971年公開 【監督】山田洋次 【出演】渥美清、倍賞千恵子、若尾文子 コチラ コチラ コチラ コチラ コチラ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013.08.11 05:56:42
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