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カテゴリ:第9話 碧海の彼方
波打つ銀髪を叩きつける雷雨に洗われながら、馬上のアラゴン王子は、自軍の砲撃によって傷めつけられていくビルカパサ軍を厳格な表情で見据えている。 撃ち込まれる一弾一弾が、逃げ場を奪われたインカ兵の群れに着実に突き刺さり、悪魔の振るう巨大な鎌の如く彼らの命を抉(えぐ)り取っていく。 それでも、アラゴンの美麗な横顔で光る鋼色の瞳には、今も全く隙が無い。 「このような雷雨が続いては、我らの砲撃も続行が困難になる。 一刻も早く、完膚無きまでに叩き潰すのだ。 砦ぎわギリギリまで追い込み、さらに包囲網を狭めよ。 決して退却の余地を与えぬよう、攻撃の手を最大限に強めよ」 アラゴンの言葉に、脇で戦闘指揮を執っている副官エドガルドが、長いブロンドを強風に激しく吹き上げられながら、恭順を示した。 「仰せのままに、アラゴン様」 「殊(こと)に、あの軍勢を率いるビルカパサを、決して生きて逃すでないぞ」 「よく心得ております、王子」 そう応えたエドガルドの妖艶なエメラルド色の瞳が、雷鳴を映して鋭利な閃光を放った。 しかし、その時である。 周辺地域一体の偵察に放っていた斥候たちの騎馬隊が、血相を変えて、アラゴンたちの元に駆け戻って来た。 「アラゴン様、大変でございます!!」 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) ≪ビルカパサ≫(インカ軍) 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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