「剣と紅~戦国の女領主・井伊直虎~」。高殿円著。
現在放映中の、NHK大河ドラマ「女城主・井伊直虎」の人生を描いた本。
ですが、大河ドラマとは、かなり違う切り口で描かれています。
物語は、後の徳川四天王の筆頭と言われた井伊兵部少輔直政が、
主君として仕えた徳川家康に、
養母である井伊直虎の数奇な人生を語り聴かせると形で始まります。
井伊家は、井伊谷(いいのや)近辺で500年も続いた名門でしたが、
戦国の混乱で、井伊直政が元服前に、先祖代々のすべての所領を失ったのです。
~ここは、先週の大河ドラマでやってました。~
そして、身一つで家康のもとにやってきた直政は、
家康に気にいられ、あっと言う間に家禄を増やし、
19歳で2万石の大名となったそうです。
直政の養母である直虎は、
生まれた時に、井伊家菩提寺の龍泰寺の名僧・黙宗瑞淵が
「この赤子、井伊を守り、天下を動かす者」となろうと予言したのですが、
確かに幼い時より、人には見えない何かが視えたのです。
それは、すぐ先に起こる凶事がみえてしまうのでした。
こんな乱世に、先が見えるなんて良い能力ではないかと思うのですが、
視えたからと言って、その物事を回避できるわけではないので、かえってつらい状況に追い込まれるのです。
ここでは、直虎以外の井伊家の女性も活躍します。
女としての戦い方、剣ではなく、縁(えにし)による戦~嫁ぐことによって縁を結びつけてゆく~を見事に実践してゆきます。
そしてもう一人の不思議な女性、きぬ。
井伊直親(直虎の許嫁であり、井伊家の当主)は、
命を守るため、少年期は、武田領の伊那に隠れ住んでいたのですが、
その地で、直親の子を生んだのが、きぬでした。
大河ドラマでは、若くして亡くなったことになっていますが、
この物語では、直虎に生涯仕え、
直虎の生涯一度の紅~死化粧~をほどこします。
そして小野政次。
大河ドラマと違って、
史実どおり、一応「奸臣」、悪役になっています。
一応というのは、直虎自身は、井伊家を乗っ取った政次をそれほど悪い人とは思っていない感じなのです。
ですが、徳川家康の堀川城攻撃の際に、捕えられ、斬首されます。
これは、史実。
‥ということは、大河ドラマでも、これから、政次役の高橋一生さんは殺されちゃうんですねえ。
残念‥、
先週の放送分の政次は、ぞ~っとするくらい素敵だったのに…。
井伊家周辺の家々の関わり合いなども、丹念に書かれているので、
井伊家や小野家のルーツ、徳川家や、築山殿など、改めて知ることができました。