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カテゴリ:ミュージシャン
(1984年 オリジナル盤) (1986年 Re-mix盤 &歌詞カード) . このアルバムこそボクが 生涯で最も大好きだと断言する純然たるプログレ・アルバム です!! 上の写真を見ていただいてもわかるようにこのアルバムはオリジナル盤とリミックス盤の2種類(CDを合わせると3種類)の音源がある。 ボクはオリジナル盤をずーーっと聴き続けていたのでどうしてもその音に愛着があるのだが、今日はその辺の違いを含めてレビューしたいと思います。 このアルバムを買ったのは1984年で、大須の円盤屋というコアなレコードショップだった。 この時SOPHIAのインディーズアルバムも同時購入している。 前々から“とてつもないアルバムだ”という噂は聴いていたが、見つけた時は「名古屋では手に入るわけない」と半ば諦めていた矢先の出来事で、その日は実家までの帰りの電車内で約1時間ずっとニタニタしていたのを今でも覚えている。 帰宅するなり早速部屋に戻りターンテーブルに乗せ正座して聴いた。 ~♪♪♪ ~♪♪ ~♪♪♪ ~ 正直ビックリした。 こんなに深く真摯で真面目で誠実な音楽は聴いたことがなかったからだ。 例えば『狂気』にしても『宮殿』にしても『魅惑劇』にしても、何らかの遊びの部分があってその瞬間“気を抜ける”というかホッとできる一瞬があるのだが、このアルバムにはリーダー林克彦さんのプログレに対する真正面の情熱がぶつけられておりその気迫に感動すら覚えるくらいの情念がみなぎっている。 正に“プログレ好きが作った”“プログレ好きな人のための”“最高のプログレ・アルバム”なのである!! その世界は針を落とした瞬間から始まった。 「月色の交響曲」と題された1曲目は18'20”にも渡る大作で、パート1-4に分かれている。 (AIN SOPHの「妖精の森」あたりが近い雰囲気だと思います。) イントロ部分はあくまでも静かに幽玄で幻想的な月のイメージを作り上げていきます。 YAMAHAのCP-70やKORGのPoly6、Prophet-Iといったアナログの名機を揃え、包み込むような優しい…柔らかい月の光を表わしているかのようなシンフォニック・プログレで幕を開けます。 世間ではボーカルが弱いとよく言われている中村隆士さんですが、それはとんでもない誤解です。 夢幻のこのサウンドには彼の声でなくてはダメなんです。 彼のか細い優しい声こそ夢幻の世界を作っているのです。 ただし、リミックス盤ではボーカルも取り直しているようで、そのミックスが若干キツイ感じがするのでここはオリジナル盤の消え入りそうな彼のボーカルのままで聴きたかった。 さて、場面は妖精の舞うシーンへと変わっていきます。 ここではいたずらもののパックやオベロン、タイタニアが登場してきます。 そう、「真夏の夜の夢」ですね。 ボクはアンドレ・プレヴィン指揮のメンデルスゾーン劇付随音楽『真夏の夜の夢』が好きでたまに聴くのですが、このクラシックの世界にも通ずる気高さをもロックのフィールドで表現する林さんの才能には尊敬以外の言葉が出てきません。 賑やかな妖精たちの舞いが終わると再び静かな月夜の幻想曲になります。 実はこの部分からラストへの展開は大いなる聴き所で、交響楽とロックとが極めて自然にそして荘厳に融合しあう素晴らしい場面である。 メロトロンを使用していないオリジナル盤の素朴さも捨てがたいが、やはりメロトロンのクワイアーをプラスしたリミックス盤での荘厳なアレンジに身を委ねたい。 そのままパート4に進むが、これぞプログレの真骨頂ともいうべき大団円である。 これだけ素晴らしい管弦楽のアレンジを心得ていらっしゃる林さんなら、是非本物の交響楽団との共演を望みたかったと思わせる本当に素晴らしい盛り上がりとエンディングである。 もうこの1曲でお腹満腹である。 続く「魔法の杖」はオペラチックな中村さんのボーカルが曲を引っ張っていく。 “ナレーター"“アンジェロ"“魔女"“村の人々"の会話形式の歌詞が珍しい。 途中の決して派手ではないが、独特のトーンを持つギターソロも曲に溶け込んでいて好感が持てる。 B面にはまず3曲短めの(といっても5分もあるのだが…)ナンバーが続く。 まずはエレピのアルペジオとハモンドBX-3のバッキングに合わせてボーカルが堂々と歌い上げる「ヴェネチア」からスタートする。 静と動の起伏が激しいボーカルを見事に歌い上げている中村さんに拍手。 ここでもオリジナルになかったメロトロンのストリングスがリミックス盤では有効に使われているが、少しメロトロンに頼りすぎなミックスだと感じる。 メロトロン無しでも十分美しいエンディングであった。 「舞踏ロマンチック」はスターレスやPAMにも通じる変拍子プログレ・ハードなアレンジが聴ける夢幻には珍しいナンバー。 しかしサビのメロディは独特なものがあり、さらに日本のバンドでは思いつかないような展開に思わずニヤリとしてしまう。 ここでの聴きものはなんと言っても後半のミニモーグ風のシンセ・ソロですね。 やはりプログレ・ハードを意識した作りなのか? ただし、この曲でもリミックス盤だと過剰気味なメロトロンに耳がいってしまう。 そこまでこだわる必要はないと思うが…。 続く「不思議の国のパレード」はたった2分の小品で、まるでオモチャの楽器で奏でたような雰囲気作りをしている。 そしてそのメロディもそれに添った感じでかわいらしい旋律だ。 前の曲とのギャップもあり、とても楽しい気分にしてくれる。 このアルバムの重要なアクセントとしてこの曲はある。 アルバムのラストを飾るのは10分を超える大作「月の舞い」である。 こちらもパート1と2に分けられている。 月の舞い……Gipsy Queenは精霊の名、人間の男性に恋をしてしまい、 毎夜妖精たちと“想いよ届け”とばかりに踊り狂う。 しかし、精霊の悲しい性、想いもはかなく教会の鐘が響き、 東の空が紫色に染まってくるといつのまにか精霊は すみれ色の朝つゆになってしまう…。 このような内容を演劇調にそして文学調に音楽だけで表現していく。 その表現力は見事というしかなく、静かに物語は始まりやがてドラマチックなエンディングを迎えていく。 教会の鐘の音、朝を喜ぶ小鳥達のさえずり、その中で朝つゆになって消えていってしまうGipsy Queenの切ない気持ちを表わすメロトロンの荘厳なサウンド。 彼女の無念の涙を表わす激しくも儚げなギターソロ。 もうすべてが素晴らしい!! もうこれほどのシンフォニック・ロックは他にないでしょう。 音が、詩が、これほどまでに感情に訴えてくる究極のドラマチック・サウンドがあったでしょうか。 これを聴かずしてプログレを、いやロックを語るなと言いたいほど素晴らしいアルバムです。 みなさん、是非聴いてみてください。 *:..。o○☆*゚¨゚゚・*:..。o○☆*゚¨゚゚・*:..。o○*:..。o○☆*゚¨゚ さて、実はもうひとつ、ここに夢幻のソノシートがあります。 「vento di Primavera」と題されたA面1曲のみのソノシートです。 オリジナル盤の『Sinfonia della Luna』のレコード番号はLUNA-001だったが、これはLUNA-002である。 きっとあのアルバムを制作した直後にリリースしていたものだと思われる。 (アウトテイクか?) ちなみにLUNA-000は林さん自身のプライベート・レーベルのようで、後に所属されるMade In Japan Recordsとは別である。 とはいえ、この楽曲がまた素晴らしいのである!! 以前に紹介したことがあるシングル盤で歌っていらっしゃる森田多香子さんをフィーチャーした美しい曲で、正に夢幻のサウンドを凝縮した1曲である。 いつリリースされたのか、日本語タイトルは無いのか、CDリリースされているのかなど謎がいっぱいのソノシートだがボクの一番のお宝であることは間違いない。 なおPAMのところでチラッと触れたが、『Progressives' Battle '86』(第2弾)のオムニバス・ソノシートでも夢幻は1曲提供している。 こちらは「Per Un Amico L'amore Italia」というタイトルで、正にイ・プーとかが歌い上げたら絶対ハマりそうなカンタトゥーレ風メロディをほとんどメロトロンの生音に近い音で主旋律を弾いている。 確信はないがどうやらこちらでも森田さんがスキャットで参加しているようだ。 その後夢幻はキングレコード(ネクサス・レーベル)からメジャー・デビューしたがそのアルバム『レダと白鳥』はそれほど評判がよくないようだ。 やっぱりこの1stアルバムの出来が良過ぎたためなのでしょうか。 (レビューはいずれまた…) そして、再びインディーズに帰りMade In Japan Recordsから3rdアルバム『過ぎ去りし王国の王女』を発表。 タイトル・ナンバーは1stアルバムを思い起こさせる名演奏だった。 (ちなみにこのアルバム、発売前は『眠り姫と妖精』というタイトルだったんですよ) そして皆さんも知っての通り、林さんはガーデン・シェッドを創立し現在も後進の育成に尽力していらっしゃる。 さて最後にリミックス盤のジャケットがちょっと面白いので紹介しておきましょう。 実はこのジャケット、真ん中に穴が開いていて歌詞カードを差し込むとそこからちょうどギュスターヴ・モローの画が出てくる仕掛けとなっている。 ボクはCDは見ていないんですがこんな仕掛けになっているだろうか? お知らせ: NOVELAのプチクイズ開催中です☆ 詳しくは8/14のレビューをご覧下さい。 (締め切り間近です!! ~8/31) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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