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2011年05月29日
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テーマ:銀魂(1187)

※銀魂 二次創作。
【5月26日】 1 -近藤さん編ー (前)の続きです。


【5月26日   1 近藤さん編】(後)


「近藤さん、俺も手伝ったんですぜィ」
「ほう、総悟がか、えらいなあ。一体どれを手伝ったんだ」感心して俺が言うと、総悟の鼻の穴が得意気に膨らんだ。
「鯉と、川海老は俺が捕ってきたんでさァ。鯉はきゅうきゅう鳴いて、おねーちゃんがしめられないって言うから俺がばさーっとやったんでィ」
「たいしたもんだなあ、総悟。ミツバ殿はさぞ喜んでいるだろうな」
去年の総悟の誕生日会に俺は初めて呼ばれたのだが、総悟のはしゃぎようは驚くほどだった。ミツバ殿はそんな総悟の様子がずいぶんとうれしかったようで、その後で何度も俺に礼を言うほどだった。総悟は去年の自分のように、ミツバ殿にも楽しい思いをさせたかったんだろうと思った。

「よいしょっ」
ミツバ殿は大きな絵皿を大事そうに抱えながら部屋に入ってきて、机の上に置いた。
「うわぁ」
「おおっ」
総悟と俺は思わず歓声をあげてしまう。
「ふふっ、ちらし寿司でケーキを作ってみたの。近藤さん、ケーキってこんな感じであってるのかしら?」
二人の様子を見て、笑いながらミツバ殿は言った。
箱型の酢飯の上に錦糸卵が全体を覆って、その上には花の形に切られた人参や大根が載せられ、グリンピースが一粒ずつぐるりと周囲を飾っていた。
「あ、あってるとも。ケーキってこういうもんだ、写真で見たのはまさしくこんな感じだった」
俺も実物を見たことはないんだが、写真で見たケーキは確かにこんな風だった。
「あ、姉上。俺ァ…俺ァ」
総悟は涙目で口ごもりながら言うと、そのまま黙ってしまった。
「そーちゃん、ケーキに見えないかな」首をかしげながら弟の目を見て、ミツバ殿は優しく微笑んだ。姉の言葉に勢いよく総悟は首を左右に振り、涙をこらえてちらし寿司を見た。
「ねえ、そーちゃん。上手に分けてよそってくれないかしら」
総悟は頷くと、慣れない手つきで皿の上に三人分をよりわけた。ちらし寿司は三人分を分けてもまだ十分なほどの量だった。ちらし寿司の中には油揚げや椎茸の煮たのや、蓮根やゴマが中に入っていた。
「随分と豪華だなあ。俺はこんなに立派で旨いちらし寿司は食べたことがないよ」
もぐもぐと頬張りながら俺が言うと、総悟は得意そうな顔になった。
「だから言ったじゃないですかィ。近藤さん、姉上の作る料理はどれも絶品なんでさァ」


そして、ミツバ殿へとプレゼントを渡す段になった。
「はい、姉上」
総悟は近くにあるせんべい屋の激カラせんべいを差し出した。最近売り出した品で、とにかく辛いと評判だった。蕎麦に真っ赤になるほど唐辛子を入れるぐらいがちょうどいいミツバ殿にぴったりの品だ。
「そーちゃん、ありがとう。これが激カラせんべいなのね。すごくうれしい、わたし大事に食べるわ」ミツバ殿は一枚だけ取り出すと、真っ赤な色をしたせんべいをおいしそうに口に運んだ。

俺はなりに選んだのだが、こんなもので喜んでもらえるだろうかと心配だった。女性にあげるなら本当はもっとしゃれたものの方がいいのかもしれないが、何も思いつかなかった。
年頃の女性への贈り物なんて初めてで、総悟に探りをいれたのだが話をしているうちに自分の欲しいものを言い出す有様で、俺は一人で考える羽目になった。
散々迷いに迷って、傘を贈る事にしたのだった。
ある日、ミツバ殿が迎えに来たあとで雨が降ってきて、家にある傘を持たせた。次の日、雨の中総悟を迎えに来たミツバ殿は礼を言いながら傘を返し、「ずいぶんと立派な傘」と褒めた。貸したのはどこにでもあるような男物の傘だった。彼女の傘をふと見ると、何度も張り替えた後があり地紙も随分と変色していた。そういえば、彼女が新しい傘を差しているのを俺は見たことがなかった。
総悟は傘を持つと遊んだり暴れたりで、しょっちゅう骨を折ったり地紙を破いたりしていて新しい拵えになっているのだが、ミツバ殿はいつも同じ傘だった。
俺は店で一番立派な女物の傘を買うと、丁寧に包んでもらった。

「これ、ミツバ殿に似合うといいのだが」
ミツバ殿がよく着ている着物と同じ桃色で、地に花が浮かんでいる。他の女性用よりも大きめで濡れないようになっていると、店のばーさんが勘違いしてニヤニヤしてからかいながら教えてくれた。総悟と二人で入ることもできそうな大きさだった。
「まあ、近藤さん」そう言ってミツバ殿は傘を開きもせずに、じっと眺めていた。
「姉上、開いて見せてくだせェ」総悟が促すと、そうっとこわごわと開いた。
そのまま黙ったままミツバ殿は傘の中で佇んでいて、気に入らなかったのかと俺はちょっと心配になった。

「きれい」

ミツバ殿は開いた傘の中でうっとりとそう言って、くるくると傘を回した。
「花が、咲いているみたいだわ」
傘を止めるると小さな声で呟いて、今度は地紙の花にひとつずつゆっくりと触れた。
「姉上よく似合ってます」総悟は姉を見ながら、小さく何度も頷いて言った。
「近藤さん、こんなに素敵なものありがとうございます。もったいなくて、当分は差せないわ」傘を閉じたミツバ殿は俺に改めて頭を下げると、大事そうに傘を撫でた。


「近藤さん、見ていてくだせェ。来年は俺が姉上にすごいもんを贈りまさァ」
総悟はどこからか紙を持ってくると、そこにケーキの絵を描きはじめた。自分と姉の並んでいる姿や姉の似顔絵を描いて、得意気だった。マヨネーズを描いてにやりと笑うので、
「なんだ総悟、トシがいなくて寂しいのか。だったら」俺が声をかけると大慌てで大きなバッテンをマヨネーズに描いて、そのまま俺の鼻に墨をつけた。
「マヨなんて、端からこうするつもりだったんですぜィ、近藤さん」
「まあ、そーちゃん。駄目でしょ!近藤さん、すみません」
「いやあ、洗えば落ちるから」
俺は慌てるミツバ殿に連れられて洗面台に行き、顔を洗った。
「本当に、すみません」何度も何度もミツバ殿は繰り返すので、俺が恐縮してしまうほどだった。

部屋に戻ると総悟は寝転がって、なんだか眠そうだった。俺とミツバ殿が黙って見ていると、じきに小さな寝息が聞こえた。ミツバ殿がそうっと総悟に薄手の布団を持ってきてかけてやると、薄目を開けた総悟は彼女の袂を掴んで、また目を閉じた。
そのまま総悟を二人で見ていると、総悟が初めて道場にやってきたときの様子が思い出された。
「総悟も随分大きくなったな。ここのところ、しっかりしてきた」
「近藤さんのおかげです。そーちゃん、いつも道場でのこと楽しそうに話してくれるんです。道場に通えて随分変わったわ。」むにゃむにゃと呟く総悟を見つめるミツバ殿の目は、いつもと同じように柔らかく姉というよりも母親のようだった。
「近藤さんと出会えて、そーちゃん…本当に、よかった」
「ミツバ殿はよくやってる」腕組みをして頷く俺の顔を、息をのんでミツバ殿は驚くように見た。「なんて、俺が言えた義理じゃないがな」気恥ずかしくなって、俺はがはがはと笑いながら言った。
「何か大変なことや困ったことがあれば、俺に言ってくれ。ミツバ殿も知っての通りの貧乏道場だが、できる限りのことはさせてもらうぞ。人手だけはあるしな」
「近藤さん、ありがとうございます」伏し目がちに黙って聞いていたミツバ殿は、目の端に涙を湛えて俺に礼を口にした。
「先日の他流試合でな、総悟は随分と活躍して相手も感心しててなあ」
「近藤さんったら。そのあと、そーちゃんが相手の方に対していたずらをしたって」
「総悟のヤツ、知恵が回るからなあ」俺がわざと感心しているように振舞うと、何度も聞いた話なのにミツバ殿は笑ってくれた。

「いやあ、総悟にはな、俺も」
ミツバ殿が俺の背後にある何か一点を見ていた。そして、ぼうっとして見つめた後、はっと気がついて顔を赤くして、総悟の方を見るように下を向いた。
俺は、トシが来たのだとすぐに分かった。
振り返ると、むっとしているように口をへの字に曲げたトシは怒っているようにすら見えるが、俺の目には緊張しすぎて精一杯かっこをつけている姿にしか見えなかった。

「遅かったな、トシ」
「近藤さん、遅く来いって言ったろ」
ミツバ殿を見ないようにぼそりと硬い表情で言うトシを見て、これは俺にはからかえないなあと思った。
「なんだ、やけに静かだと思ったら寝てんのか」
「はしゃぎすぎたんだろうなあ。さっきまでは起きてたんだがな」
三人であどけなく眠る総悟を見ていると、普段のにぎやかな情景が嘘のようだった。
「こうしてみると、こいつも普通のガキにしかみえねえな」
「剣をもたせると誰もが驚くほどの使い手になるのになあ」
「使い手っていうよりも、ただの悪ガキだろ」トシが突っ立ったままでにこりともしないで言うところを見ると、昨日総悟に面白半分に前髪を切られそうになったことに、まだ腹を立てているのかもしれない。
「お二人といると、そーちゃんとっても楽しそうだから、わたしうれしいんです」
ミツバ殿は総悟の額にかかった髪を愛おしむ用に撫でながら、じいっと弟の顔を見つめ続けていた。
三人の話のタネになっているとも知らず、総悟は姉の袂をまだ離さずに眠りの中にいた。

そうやってぽつりぽつりと話をしていたが、ミツバ殿とトシが一向に顔を見合わせない様子を見て、俺は気をきかせることにした。
「さあ、俺はそろそろ道場に戻るか」
「じゃあ、俺も」
「トシ、まだお前はゆっくりしていけ。ミツバ殿の手料理をちゃんとご馳走になったほうがいいと思うぞ、総悟も言っていたが絶品だぞ」
俺はトシの手を掴んで、縁側に無理に腰をかけさせた。トシは多分座敷に上がれといえば、上がらずに帰ってしまうだろう。そういうヤツだ。
「じゃあ、ミツバ殿。呼んでくれてありがとう。今日は本当に楽しかった」居住まいを正して頭を下げると、ミツバ殿は総悟に袂をつかまれたままの姿勢で頭を下げた。
「私こそ、本当にありがとうございました。近藤さん、傘大切にしますね」
「うむ、次は総悟の誕生日だな。もしよければうちの道場でやっても構わないだろうか」
俺がそう言うとミツバ殿はぱっと顔を明るくして喜んだ。総吾とよく似た笑顔だった。
「ありがとうございます、近藤さん」頭を俺に下げて「よかったわね、そーちゃん」ミツバ殿は弟を見てそう呟いた。


俺はぎこちない二人をそのままにして沖田家を辞した。
もう夏が来たかのような午後の道だが木陰を選んで歩くとまだ五月の涼しさが残っていて、俺は雲ひとつない青空を見ながら早く雨が降ればいいのにと思った。







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最終更新日  2011年05月29日 18時23分01秒
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