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テーマ:ニュース(99488)
カテゴリ:環境
三菱商事系の新規電力会社ダイヤモンドパワーと日本化成が、福島県いわき市に建設を予定していた小名浜火力発電所(仮称)について、二階俊博経産相は28日、CO2の排出を削減する「最高水準の設備の導入」を求めた。最高水準の設備投入には当然のことながら追加してのコスト負担が必要になる。建設者側は「発電所の建設が可能か、事業性を吟味して判断する」としており、建設計画の白紙撤回もあり得る事態だ。 大規模開発には環境アセスメントが義務づけられている。日本の制度はあらゆる面で事業者側に有利であり環境保全への実効性において非常に不十分だが、今回の火力発電所計画については、許可権者である経産相から意見を求められた斎藤鉄夫環境大臣が26日、「CO2の排出量が多すぎ是認しがたい」との意見書を提出していた。同計画によれば石炭燃料の小名浜火力は年間200万トン超のCO2を排出、これは単位発電量の比較で現在の平均的な石炭火力の2倍に相当する。つまり、温暖化対策などどこ吹く風のトンデモ計画だったわけで、さすがに環境相も見逃すわけにはいかなかったということだ。 石炭は地球温暖化の主犯といって間違いない。例えば、日本におけるCO2の排出量で最大の中部電力碧南火力から12位までは石炭燃料を使用する事業所がズラッと並ぶ。うち7つは高炉製鉄所、残る5つが火力発電所だ。この際ついでに言えば、さらに20位までに高炉製鉄所が2カ所、火力発電所が6カ所と続く。鉄鋼連盟と電気事業連合が、温暖化対策に頑強に抵抗するのもむべなるかな…なのである。 高炉製鉄の話はまた別にするとして、いま話題の小名浜火力は論外としても、石炭火力発電そのものが元々、単位電力あたりのCO2排出量で平均してLNG火力発電の約2倍と、非常に効率が悪い。ところがいま手元にある京都議定書の基準年1990年から2004年までのデータで、日本における石炭燃料起源のCO2排出量は7800万トンから1億9700万トンへと、実に約1億2000万トンも激増している。主犯はこの間に設備容量と発電量をともに三倍に増やした石炭火力で共犯が産業部門の自家発電、要するにどちらも石炭燃料の発電だ。 ちなみに同じ期間に日本の総CO2排出量は9400万トンの増加だった。つまり石炭火力への大規模なエネルギーシフトがなければ、日本の排出量は90年レベルで維持された可能性が高いのだ。逆に石炭火力の新設を認めず既存の石炭火力を、まあ一気に自然エネルギー…とまでは欲張らなくても、せめてLNGにシフトするなら、いまだって日本のCO2削減量は京都議定書目標の6%減をたちどころにクリアできる。翻って言えば、「産業部門は頑張ってるが家庭で激増」…などといって、一億総懺悔の省エネ国民運動を奨励するのは、責任転嫁のプロパガンダというほかない。 では、なぜ石炭がこんなに引っ張りだこなのか。回答、要するに安いからである。ではなぜこの時期に急に安い燃料に殺到する現象が起きたか。回答、例によって規制緩和、新自由主義で電力販売の競争が自由化されたからだ。さらに、ではなぜ石炭が安いのか。大きな要因のひとつは税金が安いことだ。石油石炭税は現在、原油で1キロリットルにつき2,040円、天然ガスは1トンにつき1,080円、石炭は1トンにつき700円。つまり、石炭へのエネルギーシフトは(財界の意向を受けて)政策的に誘導されたと言っていい。くだんの小名浜火力のワルノリは規制緩和とこの石炭誘導政策の産物にほかならない。 環境相のアセスメント意見はあまりにも当然だ。さすがの経産相もこれは無視できなかったようだが「実行可能な削減を」と、経営への打撃に最大限の配慮を示すことを忘れなかった。発電所は稼働すれば30年は動く。小名浜火力の1号機は12年に運転を始める予定だ。こんなフザケた排出源の新設を許して2050年に低炭素社会などできるわけはない。地球温暖化について人類初の警告を発したジェームス・ハンセン博士は、全米の火力発電所停止こそが自分の生涯最後の闘いだと言っている。 老博士の衰えぬ闘志に敬意を! 小名浜火力を許してはならない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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