環境・平和・山・世相　コジローのあれこれ風信帖

　昨日、通勤途上の庭でヤマザクラが咲いているのを見かけた。一見したところ、三分咲き…といったところだったろうか。それにしても早い。

　と思っていたら今朝、海南市東部の谷地状の耕作放棄地に作られたビオトープで、きわめて精密な自然観察を長年粘り強く継続しておられる鳥類専門家から、ヤマザクラの開花を告げるメールが届いた。氏の記録によれば、同地のヤマザクラ開花日は>２００４年：３月２６日>０５年：３月３１日>０６年：３月２５日>０７年：３月２０日>０８年：３月２９日>０９年３月１９日>そして今年１０年が３月１５日だ。氏は「記録的に早い」と観察の報告を結んでおられた。このビオトープでは同じ日にソメイヨシノの開花も確認したが、ヤマザクラ同様、記録的な早さだという。

　今年の冬は寒暖の差がきわめて大きかった。記録的な大雪もあれば、２月に夏日なんてとんでもない最高気温を記録した所もある。今日も千葉では３月中旬としては観測史上最高の気温が記録されたが、明日は真冬に逆戻りして山沿いは吹雪だそうだ。この気候はやはりおかしい。人間の記憶は一過性だが、ヤマザクラたちはそうした気候変動を忠実に受け止めて、その植物生理にインストールされたプログラムを積算温度に従って起動させ、可憐な花を開いたのだろう。

　１１日、鳩山内閣は地球温暖化対策基本法の枠組みを閣議決定した。昨年９月の政権交代直後、首相が９０年比２５％の温暖化ガス削減を打ち上げたときは世界から喝采を浴びたが、その後は経済界からの猛烈な巻き返しを受けて迷走状態に陥り、今回決まった同法の内容はお粗末きわまりない。排出権取引には総量削減に繋がらない原単位目標を加味する方向をにじませ、再生可能エネルギーの導入の志が低い一方で非現実的で危険な原発推進が目立ち、ことあるごとに経済との調和が謳われるといった代物だ。

　鳩山首相が打ち上げた国際公約２５％削減の中期目標は、なんとか法案から落ちずに書き込まれたが、こんな内容で達成できるわけはないし、よその国が積極的に取り組むことが前提といういわば「後出しジャンケン宣言」といった次第であって、そこには人類の危機に挑む気概も低炭素経済社会を世界に先んじて開く野心もない。この旧態依然ぶりでは、経済界の政治的代弁者であった自公政権と大差ないではないか。

　しかしまあ、まだ法案の中身が詰まったわけでもなければ、国会の議論も始まっていない。あきらめてはいけないが、ん～、しかしなあ…　海の向こう、今年１１月に気候変動枠組み条約第１６回締約国会議いわゆるＣＯＰ１６が開かれるメキシコからは、この会議で議長を務める同国の環境相が「ポスト京都議定書の合意はムリ」と、あっさり白旗を揚げている。ヤマザクラの警告を受け止める者は世界のどこにもいないのか。日本が本気で世界のイニシアティブをとりたいなら、世界のどこにも推進勢力が見あたらない今こそがチャンスなのだが。　

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