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カテゴリ:楽園に吼える豹
レオンは唖然としていた。
誰に対してか。 もちろん新“主人(マスター)”のユイ・京極にである。 彼女が国防総省副長官に就任してから一週間になるが、彼女はかなり優秀である。 藤堂もそうだが、この若さで頭角を現す人間というのはやはり持って生まれたモノが根本的に他の人間とは異なるようだ。 だが、レオンをして唖然となさしめた原因は他にある。 それは―――ユイ・京極の烈女ぶりである。 彼女は若干二十六歳であるから、部下には当然自分よりも年上の男が何人もいるわけだが、彼らに対してもユイは一切遠慮しない。 ずけずけと言いたいことを言うし、時には叱り飛ばしたりもする。 傍から見ているレオンがハラハラするほどきついことも言っていた。 (こんな気の強い女が、アスカ以外にもいたんだなぁ~) 第一印象では、彼女は藤堂に似ていると思ったレオンだが、藤堂でもここまではっきりとものを言うことはないだろう。 そういう意味では藤堂のほうがまだ取っ付きやすいくらいだ。 (けど……大丈夫かねえ) あれだけ遠慮会釈のない振る舞いを続けていれば、必ず敵を作る。 敵ができれば足元をすくわれる。 出る杭は打たれるものだ。 三十に手が届く前に元帥となった藤堂もそうだが、ユイは若い上に女だ。 妬みも嫉みも倍加する。男女差別撤廃など、この世界では建前に過ぎない。 男の嫉妬は、時に女のそれよりも醜く執拗だ。 彼女は有力政治家の後押しを受けて副長官に抜擢されたそうだから、嫉妬の的になるのは間違いなかろう。 その時彼女がどこまで耐えられるのか―――レオンは興味があった。 心配はしていない。好奇心があるだけだ。 アスカならばこういう時、“主人(マスター)”を心配してあれこれと世話を焼くのだろうが、自分はアスカとは違う。 会って間もない人間に肩入れするほどお人好しではない。 それに……たとえ肩入れしようとしても、彼女のほうがそれを拒むのではないかという気がする。 “主人(マスター)”ユイ・京極は、どうも男嫌いの気があるように思えるからだ。 それはおそらく、男ばかりの世界で孤軍奮闘してきた苦労や苦悩からくるものだと思われるのだが、彼女がいる世界で男が嫌いというのは致命的である。 嫌ったところで男が減るわけじゃなし、男と上手く折り合いをつけて仕事をしなければならないことに変わりはないのだ。 (まあ、アスカみたいな例外もいるけどね) アスカは折り合いをつけるどころか、戦車のごとく突っ込んでいき、結果自爆するわけだが。 それでも許されるのは、彼女がSクラスGSというほぼ代替のきかない存在だからだ。 ユイとは立場が違う。 男には負けたくない―――ユイからはそんな気持ちがあふれているし、そう思うのも理解できるが、ちょっと背伸びしすぎなのではないかと―――思わないでもない。 だが、もしレオンがそんな忠告をしようものなら、猛烈な反撃に遭いそうな気がする。 触らぬ神に崇りなし。 はっきり言ってあまり進んで関わりたくないタイプであるし、向こうも正直なところレオンにあまり関心はないようだったので、この微妙な距離を保ったまま、ユイの失脚まで(失礼な話だが)この関係が続くのだろうと―――少なくともレオンはそう思っていた。 つづく ネット小説ランキング、人気ブログランキングに参加しました。 よろしければクリックお願いします♪(*^▽^*) ↓ ネット小説ランキング>異世界FTシリアス部門>「楽園(エデン)に吼える豹」に投票 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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