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カテゴリ:楽園に吼える豹
(はぁ~~、危なかった)
廊下をてくてくと歩きつつ、冷静になって考えてみると、先ほどはクビを言い渡されてもおかしくないほどの険悪な雰囲気だった。 レオンは大抵ヘラヘラと笑顔を浮かべていることが多いから、一見人当たりがよく穏やかに見えるが、実は結構短気である。 アスカという瞬間湯沸かし器が近くにいるからあまり目立たないが、相手が発した言葉にいきなり前触れもなくキレることも多い。 男であろうと女であろうと容赦しないから、またタチが悪いのだ。 普段冷静沈着なユイが感情的になって言い返してきたときにやっと我に返り、何とかフォローを入れてどうにかクビだけは免れたものの、このカッとなると周りが見えなくなる性格を少し呪いたくなった。 これではアスカのことをどうこう言う資格はない。 (けど、クビにならずに済んでよかった。今“主人”が変わるのはよくない) ここのところのアスカや藤堂を取り巻く不穏な空気を、無論レオンも感じ取っている。 藤堂のGSから外されて、アスカに目配りできなくなるのではと危惧していたが、藤堂の上司たるユイ・京極のGSに選ばれるという嬉しい誤算が起きた。 全く異なる省の官僚のGSになるよりは、そちらのほうがずっといい。 上司と部下であるユイと藤堂ならば一緒に行動する機会もままあるだろうし、そうなれば少なくともその時はアスカに注意を向けていられる。 とりあえずは自己の地位を維持できたことに安堵しつつ、同時に少し後悔もしていた。 ユイに関わりすぎたかもしれないという後悔である。 クビになるのを避けるため、少し焦ってフォローをしたせいもあってか、後から考えれば誤解を招くような言動がそこかしこにある。 後で面倒なことにならなければいいが、とレオンはぼんやりと思った。 「ぼんやりと思った」程度であるから、彼に危機感は全くない。 もしユイがレオンに心を寄せたとしても、それ自体は彼の罪ではない。 こちらが手を出さなければ罰せられることはないのだ。 彼にしてみれば、一番大事なのは彼女のGSでい続けることである。 レオンは、その他の些末なことにこだわる意味などないと思っていた。 (だいたい俺もらしくなかったな。あんなこと自分から言うなんて) 先ほどユイに言った発言が本心からのものかどうか、レオンは自分でもはかりかねていた。 藤堂がユイの味方である(少なくとも敵ではない)ということは間違いない事実だと思うが、自分がユイの味方であるかどうかは率直に言って断言できないところである。 もちろんユイが危機に晒されたときは、レオンはGSとして全力を尽くして守るつもりだが、アスカかユイを選べと迫られたら、レオンは間違いなくアスカを選ぶ。 だから、レオンがユイの味方であるというのは、「ユイとアスカの二択を迫られない限り」という留保をつけなければ正確でないということになる。 愛着はなくとも仕事は完璧にこなす。 だがそれは、手段であって目的ではない。 目的はあくまでアスカを守ること。 仕事に勤(いそ)しむのはすべて、目的を達成するために必要なツールだからに過ぎない。 ユイ・京極のGSという地位にいなければ、レオンがアスカの傍にいることはできないのだ。 その時、ふとアスカの言葉を思い出した。 『お前、分かってんだろうな? “主人(マスター)”が女だからっていつもみたいな調子で手ェ出すんじゃねえぞ? もし出したら本ッ気で軽蔑するからな!』 (……わかってるよ、アスカ。そんな馬鹿な真似はしない。 もし俺がユイ・京極に手を出すとしたら、それはお前を守るために必要な時だけだ) つづく ネット小説ランキング、人気ブログランキングに参加しました。 よろしければクリックお願いします♪(*^▽^*) ↓ ネット小説ランキング>異世界FTシリアス部門>「楽園(エデン)に吼える豹」に投票 ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年10月02日 17時01分44秒
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