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つまずく石も縁の端くれ

つまずく石も縁の端くれ

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2007年07月31日
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カテゴリ:アート
シャガール、ユトリロ、ローランサン、フジタなどエコール・
ド・パリの画家の展覧会は、見ているのだが、そういえば、キ
スリング展は見たことがなかった。聞けば15年ぶりの回顧展
ということで、前回の展覧会の記憶がない私には、はじめてま
とまったキスリングの作品を見る機会であった。

キスリングの女性像や花束など、あちこちの展覧会や美術館で
よく見かけて、その都度、うっとりとしている。あの絵の具が
磁器のように封じ込まれた濃密な作品に引き込まれるのである。

だから、キスリングの作品はそんな肖像画や花の絵ばかりと思
っていたのだが、この展覧会では、静物画から風景画まで幅広
い題材と、そして画風の移り変わりの様子がはっきりとわかり、
自分にとってのキスリングのイメージを変えるきっかけとなる
ものであった。

まず全体的な印象は、セザンヌ風の静物画から、キュビズム、
フォービズムなどの影響を経て、独自の画風にたどりつくキス
リングは、どの時代にも「赤」を中心にした作品が多いのだな
ぁと感じた。そして、その「赤」が時には艶かしく、時には叙
情的であったりするのである。

「サン=トロペでの昼寝」の妻ルネの赤いドレスは何ともいえ
ない。明るい陽がさすテラスでリラックスする夫婦。その幸せ
な一瞬が見ていて心地よい。

モンパルナスのキキ.jpg

この展覧会のポスターにもなっている「赤いセーターと青いス
カーフをまとったモンパルナスのキキ」のセーターもステキな
赤だ。女優キキの熱情を表現しているのだが、同時に青いスカ
ーフがそれをクールダウンさせて、逆に清楚な感じを抱かせる。
「冷静と情熱のあいだ」の絶妙なバランスだ。

キスリングが、伝統的なオランダ絵画を研究し、それを原点に
描いているということも大きな発見であった。静物画や人物画
にその影響が大きく現れている。例えば、「魚(ブイヤベース)」
の深海魚とも思える多くの魚がカゴに入っている絵は、タッチ
はキスリングのハデハデさが感じられるが、その構図はやはり、
最近Bunnkamuraでみた、プラハ国立美術館展でのオランダだ
ったか、フランドル絵画だったかの魚の絵を思い出した。

伝統的な横たわるヌードの作品も多く、そのほとんどが情熱的
で官能的であるのだが、シーツや背景の布の表現が巧みで、こ
れも、またうまくバランスの取れた絵に仕上がっている。

そのほか、「タス医師の子どもたち」の寄り添いあうふたりの兄
妹も、グッと印象に残る絵。少女のピンクのワンピースの模様
が美しい。「マリーローランサン」の縦長の四角い鼻の表現もお
もしろい。

マルセイユやアムステルダムの建物をリアルに描いた風景画な
ども、キスリングの幅広い画風を知る作品となった。

とにかく、キスリングという画家と改めて出会うことができた
ステキな展覧会であった。





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最終更新日  2007年08月01日 07時49分15秒
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