エピローグ 心残りなこと
はちべーさんの火葬も終わり、お礼やら、支払いやらいろいろなことがやっと終わりました。飼い主もショックから抜け出て、やっと小さい骨壷になったはちべーに「ミルクだよー。」「ご飯だよー。」と普通に声をかけられるようになってきました。実は心残りなことがひとつあります。はちべーさん、病気の発覚後「はちべーだけの特別待遇」として、短時間のベランダ散歩の時間を作っていました。ベランダの床材がはちべーのよわった足でもすべらなかったので、自力で歩いたり、いろんな匂いをかいだり、できたので彼もとても楽しみにしておりました。また、うまく歩けないときには、フリースで彼を包んでからだっこして、風景をみせたり海の方からふいてくる強い風をちょっとだけ体験して、びっくりしたりとそれなりに楽しかったようです。30日のこと、病院から家にもどり、お薬を飲んでご飯を少しずつ食べて休憩しているときに、用事があって私がベランダに出たのですが、そのときにはちべーも「僕もお外にいく!」とテラス窓のところまで、着いてきたのです。部屋の床はクッションフロアですが、やはり多少すべります。あわてて歩くと後ろ足がすべって転んだり、匍匐全身みたいになってしまうのですがそれでも彼は一生懸命自分で歩いて出入り口のところで「だしてー。」と待っていました。30日はかなり寒く、病院からでてきたばかりのはちべーをベランダに連れて行くのはかなり気がひけたのです。そのときは小雨も降っていたので「明日天気がよくなるから、そしたら出してあげるからちょっと待ってね。」とあきらめてもらったのです。しばらく彼は窓のところで「外いくー。」と、待っていましたがあきらめて寝床に戻りご飯と薬を飲んで眠ったのです。でも、彼はその後昏睡状態に入り、楽しみにしていたベランダ散歩はできないまま亡くなりました。今にして思えば「少しでも外を見せてあげればよかった。」と....。人間も含めて「必ず明日がやってくる」保障はなかったこと....忘れていました。骨壷に入った彼を抱いたまま、ベランダから東京タワーを眺めながら、ちと感傷にひたるうりゃでした。