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佐遊李葉  -さゆりば-

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2014年02月07日
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カテゴリ:遠き波音
 近江守は半身を起こすと、目を閉じたまま自分の胸に寄り添っている顔を見た。

 その眉間に深い皺を刻んだ浅黒い顔には、かつての麗しいの面影は今やどこにもなかった。長い間の労苦と汚辱と絶望が、やつれた寝顔をまるで七十歳の老婆のようにさえ見せている。

 近江守の目に、また涙が盛り上がってきた。

「守殿は、懐かしい匂いがいたしまする」

 ふいにまた、腕の中から呟く声がした。近江守は指先で優しく乱れ髪を掻き揚げてやりながら問う。

「何の匂いだ?」

「都の匂いでしょうか。なぜか、遠い昔を思い出します」

「たぶん、衣に焚き染めている香のせいだろう」

「そうでしょうね。この薫りは梅香でございましょうか。でも、わたくしの家に伝わっていたものとはどこか違うような。一体どこで嗅いだのでございましょう」

「思い出してみるといい」

「そう……あれはまだ、わたくしが父の屋敷にいた頃のこと。お隣は右兵衛督様のお屋敷でした。そこには小さな若君がいらして、よく我が家へ遊びにおいでになったものです。やんちゃで可愛くて。年寄りばかりの陰気なわたくしの家を、いつも明るく照らしてくださいました。父も母も、もう夢中になって、そのお方を可愛がったものです。わたくしもその若君が大好きでした」


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最終更新日  2014年02月07日 16時12分10秒
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