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佐遊李葉  -さゆりば-

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2014年02月05日
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カテゴリ:遠き波音
 まだ多聞丸と呼ばれていた幼い日、近江守はいつものように隣の中務大輔の屋敷へ遊びに行き、寝殿の庇の間で火鉢をいじって遊んでいた。

 その日はなぜか人少なで、辺りには誰もいない。退屈していた近江守は、人目がないのをいいことに、火鉢に山のように炭を積み上げてみた。

 赤々とした火が、次第に山を登るように移っていくのが、ひどく面白い。試しに火箸を掴んで、火の中へその先を突っ込んでみると、そこも見る見るうちに赤く変わっていく。

 近江守はその赤さがどんどん自分の手の方へ近づいてくるのを、目を輝かせながら見ていたが、いきなり飛び込んできたものに抱きすくめられて、思わず激しく身を捩(よじ)った。

 細い悲鳴に驚いて後ろを振り返ると、そこにいたのは吉祥だった。

 単の袖で手首を押さえて蹲っている。

 近江守は自分の手の中にある火箸を見た。まだ赤く焼けた先から、何か嫌な臭いがする。

 近江守が青ざめて呆然としていると、吉祥はゆっくり身を起こして手を離した。袖口から覗いている手首に、焼け火箸を押し当てられた痕が赤黒く爛(ただ)れている。

 近江守は自分がしでかしたことを知って、思わず声を上げてわあわあ泣き出した。

 少し経って落ち着いた吉祥は、優しく微笑みながら許してくれたが、近江守は到底自分を許せなかった。

 あの綺麗な真っ白い手に、自分のせいで酷い傷をつけてしまった。

 それは吉祥の腕に残った火傷跡以上に、近江守の心の傷として残っていたのである。


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最終更新日  2014年02月05日 16時48分54秒
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