孤舟 -59-
次回からの連載作のご紹介タイトルは「かるかや」私が今までに書いた小説中、唯一江戸時代を舞台とした作品です。というか、江戸時代を描きたかったからではなく、この作品のモチーフとなっている説教節という芸能の歴史上しかたなくそうなってしまった……からなんですが。説教節とは、中世に起こった芸能の一つ。元々は、仏典の教えや神社仏閣の縁起などを、普通の庶民でもわかりやすいように、物語として語ったものです。高野聖などの下層宗教家たちが諸国を周りながら広め、江戸時代の初期には大変な人気を博したのだとか。しかし、江戸も宝暦年間辺りになると、浄瑠璃などの新しい芸能に人気を奪われて、すっかり廃れてしまいました。(このように説教節が廃れた時期に時代を設定したかったので、しかたなく江戸時代が舞台になってしまったんですね。江戸時代はあまり詳しくないので、本当はせめて室町時代くらいにしたかったんですが)この作品では説教節「かるかや」を通して、親子・夫婦などの愛憎を描きます。今回も80枚程度の短編です。(ただし、作品の都合上少し細切れに更新していくので、連載回数はちょっとだけ増えます)どうぞお楽しみに!