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佐遊李葉  -さゆりば-

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2014年03月04日
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カテゴリ:遠き波音
 すべては自分のせいだというように、老尼は肩を落として項垂(うなだ)れる。近江守は近江郡司の下卑た顔を思い出しながら言った。

「でも、その男には古い妻がいて、すぐに吉祥を捨ててしまったというではないか」

「はい。その古妻というのは、この地の豪族の娘でしてね。孫息子が吉祥様を連れて戻ったという噂が広まると、すぐに古妻の親戚どもが騒ぎ出しました。その上、この女はひどく気性が荒くて。始終嫌がらせをしたり、悪口を言いふらしたり。終いには、私どものいた館に踏み込んで、散々に荒らしまわる始末。それで、孫息子も古妻に恐れをなして、こちらには通ってこなくなったのですよ」

「それから吉祥は郡司の本宅の方に?」

 老尼は唇を噛み締めながら答えた。

「争いの源を一先ず親元に引き取って、事をきちんと治めたいとのとのことでした。親戚どもとも話し合って、孫息子の次妻としていずれ添わせるからと。でも、父親の郡司の方が、すぐに吉祥様に手をつけてしまって。わたくしは約束が違うと申しましたが、わたくしの娘はとうの昔に亡くなって、郡司の舘は後妻が牛耳っていました。それに、孫息子も面倒なことが嫌いで、すでにわたくしなど気に止めなくなっておりましたから、どうすることもできません。それで、わたくしは遠く離れた尼寺へ押し込められ、吉祥様はそのまま郡司の妾に。吉祥様がお年をお召しになり、郡司も飽きてしまってからは、もう下女同然の扱いでございました。わたくしはもう無念で。吉祥様にはお詫びの仕様もございませぬ」

 老尼はそう言うと、とうとう泣き伏してしまった。近江守は老尼へ掛ける言葉も見つからず、ただ老尼の悲しみと苦悩を思いやって、その小さな背を撫でるだけだった。


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最終更新日  2014年03月04日 16時40分45秒
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