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佐遊李葉  -さゆりば-

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2014年03月06日
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カテゴリ:遠き波音
 その時、ふいに一陣の風が、近江守の頬をなぶった。

 顔を上げた近江守が見たのは、瀬田唐橋の優美な姿だった。

 おそらく吉祥はそこから水面へ身を投げたのだろう。

 あの橋の上に立って、長い黒髪を強い風に靡かせている吉祥の姿が目に浮かぶ。

 夜明け前の薄暗い闇の中で、遠い琵琶湖の波の音を聞きながら、吉祥は何を思ったのか。

 その問いに答えるように、老尼は涙声で呟いた。

「あなた様を見ていると、あの幸せだった懐かしい時代を思い出します。まだ、中務大輔様も北の方もお健やかで、吉祥様も若く美しく、まるで天女のようでございました。本当に、あの頃は楽しゅうございましたね。わたくしのようなものでも、何一つ不自由なく暮らしていられたあの頃を、思い出さずにいる時はありません。きっと、吉祥様はもっとそうだったのでしょう。最期にあなた様に会うことができて、吉祥様も満足なされたのだと思います。ようやく、思い残すことなく、浄土へ旅立てると。そして、今はもう御仏の元で、吉祥様もお楽になられたことでしょう」

 老尼は再び声を上げて泣き出した。

 だが、近江守は俯きながら、誰にともなく小声で呟いた。

「いや、そうではあるまい。ただ、私が愚かだったのだ。何も言わず、私の素性も明かさず、手元に引き取って優しく面倒を見てやればよかった。そうすれば……吉祥は死なかっただろう」


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最終更新日  2014年03月06日 14時33分18秒
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