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 小説ブログ 「GO!GO!花園」

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ようこそおいでくださいました。Madam Garden こと花園夫人です!

オムニバス短編小説で、駐在員団地のばたばたな日常を書いてます。

この物語はフィクションであり、実在する企業、団体、人物などとは関係ありません。C国は架空の日本の隣国…っていうか明らかに中国ですね。でも、Q市はあくまで架空の一都市です。登場人物も特定の個人をモデルとするものではなく、すべて作者の想像上の産物です。

作者の注意散漫なうっかり体質による読み苦しい間違いも多々あるかと思います。広い心で付き合ってください。

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2010年11月04日
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C国Q市に駐在する日本人駐在員の集まる駐在員団地で奥様たちが繰り広げるオムニバス物語。フツーな人がいないといわれるGOGO団地。人の多く住まうところ、愛あり、憎しみあり、噂あり。駐妻の秘密の花園。


GOGO花園って何?って方は、第一回のコチラから
この章をはじめから読むにはココ

久しぶりの更新で自分でもどこまでアップしたかわからなくなってしまいました。
それにしても楽天が重い。
 


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呪われた館の望さんの巻 (9)恨みと呪いの館 (後編)



  その日、望の夫の吉田浩二はめずらしく早く帰宅した。予定では、出張先から夜7時にQ市の空港に戻ることになっていた。しかし、午後の会議が先方の都合でキャンセルになり、急遽振り替えて午後一番の便に乗って帰ってきた。空港に着いたのは午後3時、まっすぐ帰れば、4時前には自宅に戻れる。Q市の事務所によれば仕事はいくらでもあるので一瞬迷ったが、浩二はタクシーの運転手に運転手に自宅を行き先として告げた。ここしばらくかなり仕事がきつかったので、今日くらいゆっくりしてもいいだろう。引越し以来、忙しくてほっておいている妻と娘のことも気になる。

  しかし、早めに帰った我が家には、難題が宅に待ち構えていた。外出先から戻ったばかりの様子の妻が興奮した様子で、死人だの霊だの、わけのわからないことをまくしたてる。これでは、事務所の机に上にある無尽蔵な書類の山のほうがましだったかもしれない。

「…ということで、K物産は呪われてるのよ。ここの家に前はいってた人はK物産の人だっていうじゃない、5ヶ月で出て行っちゃって。きっと後任者ってことでその女の人が霊になって出てきて、それで
住めなくなったのよ。」

「で、何でその人の霊が、わが家にも害を及ぼすわけ?」

「だから、その愛人の霊がこの家に憑いててTって人の後任者が呪われて。わたしたちも。」

「そんな、業務じゃないんだから、霊まで後任者に引き継ぐかよ。そうだとしても、ウチはK物産じゃないんだから関係ないじゃん、引き継がないよ。」

「霊が…その、自縛って言うの?そおいうのになっちゃったとか。もしくは、もう日本の駐在員自体が恨めしいのかも。」

「そんな、駐在員全部って、そんな大雑把な呪い方しないって。」

「だから、もう恨みがすごすぎて、日本人はみんな恨めしいのかもよ。それとも、下等な霊で分けわかんなくなってるのかもしれないし。」

「いくら反日デモがはやってるからって、霊まで反日になるか。まあ、饅頭盗むなんてのは確かに下等だよなあ。でも下等霊ってのは、なんかもっと動物とかそおいうの霊のことをいうんじゃないの?」

  適当に答えながら、浩二は家に帰ってきたことを後悔した。こんなことだったら、今から会社に顔出して、事務処理でもしようか。でも、妻の剣幕は収まりそうにない。仕事でくたくたになって帰ってきて、待ち構えてた妻から「下等霊」の話を蒸し返されるのは辛すぎる。それにしても、いつもはのほほのんとしている妻が今日に限ってどうしたんだろう。引越しのストレスでちょっとおかしくなってるのではないだろうか?

  そのとき、立って話す二人の横にあったガラス窓に、何かが風で吹き飛ばされてきて張り付いた。今日は風が強いので、ほこりっぽい外の空気を嫌う望は窓を開けていない。飛んできたのは、赤い紙で、どういったわけか、冊子の窓枠のどこかに挟まれたらしく、窓にくっついて離れない。

  大事な話をしているのに、夫がまじめに取り合ってくれないのでいらいらしていた望は、がさがさいいながら窓に張り付いた赤い紙を見て、眉を寄せた。それは、真っ赤な、朱色ではなく、黒味がかった赤い、質の悪いざらざらした感じの紙で、マジックで黒い文字が書かれている。赤地に黒、なんだかまがまがしい。このままでは窓枠に挟まって、ばたばた言ってうるさいので、窓を細めに開けて、紙を引っ張り込んだ。手にとって書いてある文字を見た望は悲鳴を上げた。

「ひいっ」。

「お、おい、どうした?」

「この紙、気持ち悪い。呪いがどうのって書いてある。呪い!あの女の呪いよ!」

  望は、紙を放り出して震えている。妻の様子が、ちょっとここまで来ると尋常ではない。浩二は、けげんそうに紙切れを拾い上げると、紙切れを見つめた。C国語で何か書いてある。書きなれた感じはするが、癖のある漢字はお世辞にも上手いとは言えない。

「……違うよ、これ、呪いなんかじゃないよ。」

「じゃあ、なんなの。なんなのよっ。」

  望の声は完全に裏返っている。望の様子に気おされつつ、浩二はできるだけ落ち着いた口調でこたえた。

「ほら、よく見ろよ。僕にも正確にはわからないけど、これ、金婚式なんかのお祝いの飾り付けじゃないの?結婚して50年がどーのこーのって書いてあって…、ほら見てよ。これ、字が下手だけど呪いじゃ全然ないでしょ。」

「…。」

「ほら、しめす偏だっけ、なんだっけこのネみたいなやつ、あ、ネ偏か、これがつぶれて分けわかんなくなってるけど、これは祝うって字だろ。呪いじゃない、おめでたい何かだよ」

「え…あ、ほんとだ、これ…祝う? 」

ああ。いわれてみればその通りだ。非常に癖のある字でわかりにくいけど、これは確かに「祝」だ。

「そうだよ。しっかりしろよ。」

「じゃあ、なんなの」

「なんか、わかんないけど、どっかのC国系のうちから飛んできたんじゃないの?レストランとか」

そういえば、隣の9棟の一階の家が昨日の夜パティーかかなにかをしていた。夕方、琴だか胡弓の奏者が呼ばれて演奏しているのが外まで聞こえて風流な感じだったのだが、その後、夜もふけてから爆竹を鳴らして大騒ぎになった。あれは時々の公園で見かけるおじいさんとおばあさんの金婚式のお祝いだったのかもしれない。そのときの、張り紙がそういったわけか家まで飛んできたのだ。


(つづく…)

風邪がはやっているのは、我が家だけですか?
たいしてつらくないけど、セキがとまらず困ってしまう風邪、蔓延中。皆さんもお気をつけて!





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最終更新日  2010年11月04日 16時18分43秒
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