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2012年07月16日
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テーマ:お勧めの本(7264)
カテゴリ:読書

ミゲル・デリーベス著「異端者」を読み返し始めました。きっかけは
「ジェーン・エア」を原作で読んで映画を見た後、孤児となった主人公
劣悪な環境の寄宿舎学校、気が狂った妻など似ている部分が多い
と思ったからです。主人公が男か女か、背景となっている国と時代
最後がハッピーエンドかどうかなどは大きく違い、「異端者」の場合
題名から想像がつくように最後はかなり悲惨なので誰にでもお勧め
できる本というわけではありません。でも私はスペインの作家とは
相性がよいようで(映画、絵画などもイタリア、スペインあたりが相性
がいい)最初に読んだ時から引きこまれて興味深く読むことができた
本です。

主人公シプリアーノの父ドン・ベルナルドは金持ちで8歳年下の弟が
王室大審院の聴訴官をしているほどの上流階級の家系ですが、長
い間子供ができなくて不妊治療をし、やっとさずかった子が生まれた
直後に妻を亡くしています。そうなると当然残された父と子の関係は
微妙なものになります。「指輪物語」のファラミアなど母を早くに失い
厳格な父には愛されずそれでも父に尽くす息子というのは私の感動
するツボの1つですが、このベルナルド・シプリアーノ父子の場合は
最初から父は息子を親殺しと憎み、息子もまた父を怖れるだけという
最悪の関係です。子育てはすべて若い乳母のミネルビーナに任せら
れ、父は最初は死んだ妻を思って嘆き悲しみ、その後は息子の乳母
に手を出そうとしたり若い愛人を囲って、でも彼女には別の男もいた
ということで怒り狂ってとお金持ちで上流階級ではあってもメチャクチャ
です。ただこういうことは昔はけっこうよくあることだったかもしれないし
若い女に夢中になったということで少しは気が晴れて子供は救われた
かもしれません。妻の死を嘆きながらひたすら職務に励むデネソール
のような父でしたら、子供は本当に息がつまりそうになりますから。

それでもベルナルドは子供が学齢期になれば教育を考え家庭教師を
雇いますが、シプリアーノは父が隣の部屋にいて咳でもしようものな
ら気になって先生の言うことなどまったく耳に入らない、そんなわけで
父に家庭での教育を諦められてしまい寄宿舎学校にやられてしまい
ます。弟イグナシオも後援者となっているそこは孤児が集まるところで
当然のことながら弟は大反対、それでも父は強引に息子をそこに入れ
てしまい、息子も父と離れられてむしろほっとします。シプリアーノは
小柄で小粒というあだ名をつけられますが、それでも力は強く一番威張
って弱い子を欲望の大将にしているようなガキ大将を相手にケンカした
りもします。弱い子は強い子の相手をさせられ、子供が死体を運んで
埋葬を手伝ったりまでする劣悪な環境の学校、それでも主人公はそこ
でたくましく育っていきます。貧乏人や処刑された人の死体を運ぶ時、
街の広場で「憐れな亡くなった人にどうかお恵みを」なんて言って寄付を
子供たちが集め、そのお金を学校の募金箱に入れておく、あるいは金持
ちの葬式の時には子供たちが参加して歌ったりお祈りの言葉を言い、亡
くなった人間もあらかじめそれを頼んでおいてそこでまた寄付が集まり
ます。金持ちの子は家で家庭教師に勉強を教わるから集まって日頃から
歌の練習ができるのは孤児の子供ばかり、そして葬式で寄付すれば
その慈悲の心で故人も救われるというのか、とにかく孤児院と学校が
理由がどうであれうまくお金を集めて経営していくシステムができていた
ようです。後にペストが発生した時には、孤児ならば病人に近づけてもし
うつっても誰も文句を言わないと、病人に食事を運んだり遺体の処理まで
させられています。酷い話で主人公と仲良かった友人も死んでしまいま
すが、それでもそんな中生き抜いたくましさの方が印象的で不思議にも
嫌な気分ではなく読めました。ペストがはやった時父のベルナルドも死
んでしまったのですが、シプリアーノはまったく悲しまない、最後まで
冷え切ったままの親子関係でした。

主人公シプリアーノが生まれた1517年はルターの宗教改革が始まり
(となるとその時の教皇はメディチ家のレオ10世、スペインは狂女王フア
ナの長男カールがスペイン王となってやってきたばかりの頃)混乱して
いた時代です。シプリアーノが学校にいた頃のスペインバリャドリッドでは
エラスムスのことが話題の中心で先生たちも真っ二つに分かれて争って
いました。宗教改革につながる流れの中でエラスムスの思想のどこがそ
れほど問題になるのか、すごく気になりました。

寄宿舎学校を出た後父が死んで孤児となったシプリアーノは叔父の家
に引き取られて家庭教師について勉強を続け、このまま出世街道を歩む
のかと思えば再開した乳母ミネルビーナと過ちを犯してしまいます。まあ
親しみをもった乳母、あるいは継母と過ちを犯すというのも小説ではよく
ある話、しかたがないことなのかなあとも思いました。

再読してみて、今回学校のしくみや酷い環境の中それでもたくましく生きる
主人公というのがすごく印象に残りました。





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Last updated  2012年07月16日 11時29分43秒
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