レクイエム・フォー・ドリーム
「レクイエム・フォー・ドリーム」をDVDで見ました。この映画は10年ほど前の作品ですが、「気が滅入る陰鬱な映画」ベスト1に選ばれたということと、若き日のジャレッドが出演しているということで、去年の12月からずっと気になっていました。ちょうど12月末には仕事が決まって忙しくなり、やっぱり仕事前にはこういう映画は見ない方がいいだろうと思って(笑)なかなか見るチャンスがなかったのですが、新学期が始まり仕事にも多少慣れてきたので見ることができました。気が滅入る映画ということで、かなり覚悟して見たのですが、結果として私はこの作品ですごく落ち込むということはなかったし、ジャレッドがすごく若くてきれいだったので(太った殺人犯とは大違い)2回、3回と見てもいいなと思いました。まあ仕事に行く前には見ない方がいいですが(笑)母親のサラと息子ハリー(ジャレッド)の2人が中心となって話は進みます。サラは夫を失って未亡人になり、1人暮らしでテレビを見るのが唯一の楽しみになっています。1人息子のハリーは大学を卒業したものの定職につかず、母のテレビを勝手に持ち出して質屋に売ったお金で遊ぶようなどうしようもない息子です。彼女は大好きなテレビ番組に出演して欲しいという依頼の電話がきたことでダイエットを始め、怪しげな医者が出した薬を飲んで薬物中毒になっていきます。息子のハリーは友人タイロンと麻薬の密売を始め、最初はそれで大金が手に入って恋人マリオンと店を持つ計画を立てるのですが、密売がうまくいかなくなってイライラし、結果自分や恋人マリオンも薬に溺れていくことになります。麻薬に手を出すのが悪いと言ってしまえばそれまでですが、サラは最初医者を信じてダイエットの薬と思っているのだし、ハリーも恋人と店を出す夢のための資金稼ぎで密売に手を出し薬に溺れていく、どちらも最初からどうしようもなく薬に溺れていたわけではなく、夢を実現させようとしただけで最後悲惨な結末をむかえてしまうところが恐ろしいと思いました。かなり年をとって顔のしわも目立つサラがなぜダイエットにのめりこんだのか、わけがありました。テレビ出演依頼の電話がきて、彼女は息子ハリーの卒業式に来て夫にも褒められた赤いドレスを着たいと思いました。でも太ってしまったため、うまく着られない、だからこそダイエットを始めたのです。赤いドレスにはえるよう、髪の毛も赤く染めました。私達日本人は赤い髪というとトマトのような真っ赤を思い浮かべるのですが、欧米人のイメージする赤毛はブロンド、金髪が近いようです。「女教皇ヨハンナ」のゲロルト、原作で赤毛と書いてあったのに予告の映像は金髪じゃないの!と不思議に思ったのですが、赤毛とはああいう色なのかとこの映画でも出てきて納得しました。とにかく赤いドレスを着た時は息子ハリーが大学を卒業し、夫もまだ元気だった、彼女の人生で一番幸せな時だったのでしょう。だからこそ彼女は無理なダイエットをし、怪しげな医者が出す薬まで飲んでしまった、自分もダイエットの経験があるし、その気持ちはよくわかりました。一方ハリーも母親のテレビをこっそり質屋に持っていってそのお金で遊ぶようなどうしようもない息子ですが、恋人との将来を考えたり、お金が手に入ればすぐに母にプレゼントしようとするやさしい子でもあります。麻薬の密売という手段は悪いけど、まとまったお金が得られれば店を始めてまともに暮らしていくつもりだったと思います。でもそれがうまくいかずに麻薬に溺れていく、根がやさしくいい子(そして若き日のジャレッドが演じているのでかなりキレイ)なだけにどんどん悲惨な方へ行ってしまう姿は哀れでした。この映画の主要登場人物、サラ、ハリー、マリオン、タイロンの4人は最後いずれも悲惨な状況のまま終わっています。救いようのない結末なのだけど、それでも「気が滅入る陰鬱な映画」第1位にランクインされるほど救いようのない話なのかな、とも思ってしまいました。彼らはみな救いようのない状況でも息子や母、恋人、友人のことを互いに思いやっているし、結果夢とはかけはなれた人生になったけど、それでもまだ夢を見る自由は残されている、もっと悲惨な結末を予想していただけに、この監督が出した結末に私はむしろよい後味を感じました。もちろん「ロビンフッド」のような見て爽快、気分さわやかという映画ではありませんが、私は好きな作品、人生を考えさせられる作品としてランクインしたいです。 【中古】洋画DVD レクイエム・フォー・ドリーム デラックス版 (パイオニア)【10P21dec10】【画】価格:2,440円(税込、送料別)