絵画の哲学
清塚邦彦『絵画の哲学』を読了。絵による描写の多様な形態、類似説の検討、イリュージョンの理論、グッドマンの絵画記号論をへて、絵を見る知覚や認知的経験を問うもの。遠近法にまつわる絵画と表象の問題がとりあげられた著作でした。6月12日に発売される『表象18:皮膚感覚と情動――表象から現前のテクノロジーへ』(月曜社)(門林岳史 難波阿丹 飯田麻結+平芳裕子+渡邊恵太+水野勝仁+髙村峰生 サラ・ジャクソン ドミニク・マカイヴァー・ロペス 銭清弘+村山正碩訳)には、自身のプロジェクトに対抗的な論考も含まれており、刺激的な対話(闘争?笑)の場となっています。まず遠近法が絵画の必須要件か、というのがスクリーン表象をめぐるひとつの問題点であり、そうではないという議論がしばしばなされますが、オランダの描写の芸術や、ダダイズム、キュビズムのコンテクストに至るまで、『絵画の哲学』にあるグッドマンのように時代性・地域性に限定する遠近法批判は枚挙にいとまがありません。それだけ遠近法は多種多様であり、西洋において写実的描写の支配的な規範なので反動も強く、まさに遠近法批判から知覚・感性の哲学が編まれてきた歴史があります。遠近法の規範における「触覚」の歴史性は、「表象」のありさま、あるいは「表象文化論」という学問領域の存立基盤にかかわる非常に重要で根深い問題なので、学会誌の公開と同時に、なにかしら応答しなければと考えているところです。とはいえ、ブログやSNSで簡潔に解答ができるはずもなく、自身の単著がないのがまたも悩ましいところ。