妊娠出産プロジェクトへの決意〜阿Qからの伝言〜
日々、霊力を増し続ける背後霊、阿Qおじさん。まだ成仏なされていないようで、結構な御身分です。最近は何をしていらっしゃるのでしょうか?= = =俺は今、マッチングアプリで出会った学問と学問領域を結婚させ、子を孕んでいただく妊娠出産プロジェクトに従事している。ところが最近、独自の調査により、一方の学問に既に婚姻歴があることが判明した。俺はお見合いおばさんとして学問相互の仲を取り持っていくつもりだったが、俺の役割は夫婦関係調整員も兼務に変更された。すなわち倦怠期にある夫婦関係に刺激を与え、いかにして子作りを活発化させるかも、俺のタスクリストに加えられている。そんな訳で、俺は俺がご従事されていたご学問領域を近々恋愛関係へと誘いだす。言うなれば、映画研究やメディア研究を妊娠へと導いていく。てめえらも俺も、例えば映画研究が学問として成立していると頑なに信じ込んでいるだろう。ご存知のとおり、映画にはせいぜい100年余足らずの歴史しかない。確かに一時期、他メディウムの干渉をそれほど経験せずに発達しえた幸福な芸術形式と言えるかもしれないが、一方でテレビ研究はどうだ?50年程度の歴史しか持ちえず、既にそのメディウムとしての存在意義を見失い、昔語りに終始し、学問領域もろとも消滅しかかっとるではないか。メディウムをスペシフィックに扱う学問が成立しているという前提自体、実体なきイメージを投影する装置が生み出した夢かもしれんのだぜ。それゆえに、重彦の「とりあえず」の批評は、極めて実態に即したアプローチなのだ。なにしろ若いから、こいつらは本物の理論を知らない。映画研究やメディア研究はまだ処女だ。だから俺が本物の男を連れてきて、結婚妊娠、出産まで誘導してやるぜ!本物の男=理論をな。ただ、残念なことにこの男は既婚者なのよ。すでに別の学問と婚姻関係にあり、倦怠期に差し掛かっている。でもそれだけ強大で筋骨隆々とした魅力的な男なんだ。俺は注意深くこの男の胡散臭い遺伝子を取り除き、一方で学問領域の散逸したアーカイブからメディウムの遺伝子を洗いだし、隠喩的に結合する作業を行っている。俺は2回の出産歴があるが、さすがに学問を妊娠させた経験はない。だから男の方に結婚の先行事例があったのは好都合だった。しかしながら、妊娠を妨げるファクターも存在する。それは、70年代幽霊どもが学問領域に植え付けた強固な複数形の精神だ。傍流の精神とも言い換えられよう。俺はいずれ、未来からの使者、80年代幽霊として70年代幽霊どもへ宣戦布告し、アーカイブの時代に終焉を告げるぜ。80年代幽霊の矜持は、次回語ろうと思う。それではそれまで、ばいならっきょう!!ばいならっきょう⁉︎