親愛なるストレンジャー、
そちらでの様子はいかが?
この間は、ありがとう。
久しぶりにあなたに会えて、アリーにも紹介できたこと、とても嬉しく思っているわ。
それと、フランキーのお父さん役、ご苦労さま。
あの子、とても喜んでくれて、私も嬉しかったわ。
ところで、実はあれから、ちょっと大変なことがあったのよ。
あなたには、もう関係のないことかもしれないけれど、
よかったら読んでください。
あなたが去った2日後、夜の7時くらいかな、私の店に赤毛の背の高い女性が
とても疲れた様子で入ってきて尋ねたの。
リジー・モリスンの住まいを探している、このあたりじゃないかって。
あなたは少し事情を聞いたと思うから書くわね。
彼女、町から町へ、夫のデイビーから逃れて流れてきているの。
その追っ手かしらと思って、彼女は休暇をとって出かけたはずだから、
まだ帰っていないかもと答えたら、
赤毛嬢、かなり深刻そうな顔をして腰を下ろしました。
そこへ、当のフランキーが半べそになって店に入ってきたの。しかも
「パパが、死んでしまうんだって。」っていきなり抱きついて。
赤毛嬢は立ち上がって叫んだわ。
「もしかしたら、あなたがフランキー?」
大粒の涙をこぼしながらね。
彼女はディビーのお姉さん、つまりフランキーの伯母だったの。
どうも彼、本当に死にかけているらしくて、その日はリジー、
病院まで会いにいったらしいんだけど、
結局フランキーには会わせられないって帰ってしまったんですって。
赤毛嬢は興奮して、すぐにも彼を連れていってしまいそうな勢いだったので
それはようやく止めました。
こんな話を突然聞かされて、もっと混乱してしまうかと思ったけれど、
フランキーは静かに聞いていました。
結局、赤毛嬢は写真を二枚、置いて帰っていったの。
一枚は結婚式の写真。赤毛の男性が、リジーと一緒に写っていたわ。
二枚目は、最近撮ったと思われるベッドに横たわったやつれた男性、
もちろん、一枚目の写真と同じ人。
だいぶ髪色は褪せて白髪が増えていたけれど。
きっとね、フランキーはどこかで本当のお父さんの写真をみたことが
あったんじゃないかしら?
顔はわからなくても、もしかしたら髪の毛の色くらいは知っていたのかも。
そうだとしたら、アッシュブラウンの男性は、一目でパパじゃないって、
見抜かれていたのかもしれないわね。
フランキーは黙って家をでてきたらしく、私はこっそり送っていたのだけれど、
次の日にお店にチップスを買いに来た時は、普段どおりに振る舞っていたわ。
それから数日して、父親が亡くなったことを教えてくれました。
「マリーは、あの男の人が誰だか知ってるの?」って聞かれたから
「少しはね。」って。
「あの人は元気なんだよね。」って言葉にうなづくと、にこっと笑って。
私たち皆のついた嘘を、許してくれたみたいだったわ。
リジーもあの子も、もちろん今、心沈んではいるけれど、
ほっとしたという気持ちもあるでしょうね。
この町に落ち着くこともできるわけだし、
しばらくしたら心も癒えてゆくと思います。
P.S. フランキーが手紙と写真をあなた宛に送ったらしく、
私書箱経由で手元に戻ってきたのをリジーから預かりました。
同封しますので、受け取ってくださいね。
P.S.2 リジーにも、あなたが誰かって聞かれたの。
思わず「私の弟よ」って答えてしまいました。何故かしらね。
9年半もたったら、元の夫も弟みたいになるってこと?
いつか、笑って訂正する日が来ることを願っています。
いつまでもあなたの友人 シャーロット
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