森田剛さん主演、宮本亜門さん演出。3月はじめに鑑賞した舞台の感想などを。
【作品の内容に触れますので、ご覧になりたくない方はどうぞスキップなさってくださいね】
「金閣寺」が舞台化されると知ったのは、横浜の旅を日記にアップする際に
さまざまなサイトを逍遥していたときでしょうか。
近代文学館の三島由紀夫さんの特設コーナーで、「ミシマダブル」のうち
「サド侯爵夫人」か「ヒットラー」のうちのどちらかでも観劇させてくださいと
願掛けをしたことを書いたあたりで、神奈川に完成するホールの?落としでも
三島作品が上演されることを知って、いま一度、遠征しようかと思ったのですが
それは余りの贅沢。
ほどなく無事に「サド侯爵夫人」で大阪行き出来ることになり、
シングルでも充分と喜んでいたところ、当地での「金閣寺」の上演が決まり、
嬉しくも三島作品を3月はじめにダブルで拝見できることになったのでした。
さて、宮本亜門さん演出の舞台は「スウィニー・トッド」以来、二度目。
森田剛さんは、映画「人間失格」の中原中也が秀逸だったので愉しみにでかけました。
まずはパンフレットを購入、出演される方々の美しいポートレイトはもとより
「春の雪」の行定勲監督と宮本さんとの対談、
瀬戸内寂聴さん、平野啓一郎さんの文章が載っていて、これは絶対の買い☆
座席は三階だったのでオペラグラスなしには皆さまのお顔が遠かったのが
残念でしたけれども、舞台奥まで俯瞰で観ることはできました。
溝口=森田さんの孫悟空の輪といった存在の「金閣寺」を
どのように表現されるのか、おそらくはホリゾントを使うくらいで
あとは森田さんの演技にお任せなのかしらと朧に考えていたのですけれども、
タイトルロール的な役回りで、ホーメイ歌手の山川冬樹さんという方が登場。
倍音というのでしょうか、雅楽にも機械音にも聴こえるような響きで
神々しく鳳凰を演じておられて、溝口が苦悩と歓喜の間を逡巡する様子が
より伝わりやすかったように思います。
(「時計じかけのオレンジ」のアレックスに対する歓喜の歌も)
原作は二度ほど読んだくらいで、柏木(高岡蒼甫さん)と鴨川(大東俊介さん)の印象は、
あまり強くなかったのですけれども、舞台では溝口と三位一体、
ペルソナになっているようにみえて。
この世に結び付くための、こうありたいと願うモデルが去ったとき、
自己破壊に向かうきっかけが繰り出されたように捉える心も、
やはりあったのでしょうか。
本火の葬儀を執り行った道詮和尚(瑳川哲朗さん)は原作よりも魅力的で、
溝口の幼さがさらに際立ったように。
一方、有為子=生け花の師匠=美しい女を演じた中越典子さんは
とっても好きな女優さんなのですけれども、あの朗らかな声は
常に業火を宿したような女性たちのイメージには、やや遠かったかなと。
もう少し近くで拝見していたら、また印象は違っていたかもしれません。
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