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元SF小説家・春橋哲史のブログ(フクイチ核災害は継続中)

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haruhasi@ ややこしい記事を読んで下さり、有難うございます きなこ様  度々、コメントを頂戴して有…
きなこ@ Re:フクイチの汚染水(処理水)放出までの経緯 2012年11月~23年8月(10/13) 詳しい経緯のまとめ、ありがとうございま…
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八巻俊憲@ Re:「風評被害」ではなく、「市場構造の変化」という実害(06/02) これまで、「風評被害」に対する適当な解…
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2019.03.07
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​​​​​​​​​「連載」再開

 約4ヶ月半ぶりにフクイチ(東京電力・福島第一原子力発電所)のALPS処理水に関する「連載」です。
 今後、当ブログでは「ALPS処理済み水」ではなく、「ALPS処理水」と記載・呼称します。「処理済み」の水ではないとの判断からです。

 本題に入る前に、「連載」の過去記事にリンクを貼っておきます。
 尚、当ブログに掲載している表・ポンチ絵・グラフの無断転載・引用はご遠慮下さい。

(リンク)
1.​緊急アップ! フクイチのALPS処理済み水に関する説明・公聴会の情報

2.​経産省が「公聴会」を採用した理由と、スリーマイル原発事故の前例

3. ​ALPS処理済み水の処分に関する「説明・公聴会」の開催決定に至る経緯

4. ​フクイチのALPS処理済み水の扱い~タンク用地と137万t容量~

5. ​フクイチ・ALPS処理済み水の扱い~処分方法と準備期間~

6. ​ALPS処理済み水の最終処分~経産省の考える「落としどころ」と理屈を深堀りする~

7. ​フクイチ・ALPS処理済み水の扱い~地上保管を継続する具体案~

8. ​説明・公聴会の前提が変わってきた、フクイチのALPS処理済み水 

9. ​緊急アップ! 看過できない経産省の「説明」~ALPS処理水を「汚染水ではない」と断言して良いのか~

10.​ALPS処理済み水の扱い~私が海洋排水に反対する理由~

11.​ALPS処理済み水の海洋放出に反対~市場構造の変化も、核災害による被害~

13.​ALPS処理済み水の含有核種・濃度は、小委員会にどのように知らされていたのか

14.​場によって、発言と沈黙を使い分ける開沼博准教授のズルさ

15.​9月28日に、吉良よし子参議院議員の事務所で、ALPS処理済み水のレクチャーに同席

16.​ALPS処理済み水に関する公聴会の意義と役割~意見総数は179件~

17フクイチのALPSは、稼働率と除去率がトレードオフ

18.​基準値越えのALPS処理済み水の中でも、特に「ヤバい水」について

関連:​金曜行動「希望のエリア」で、主権者・国民の責任の重さをスピーチ


2018年最後の小委員会で行われた、関谷准教授のプレゼン

 本記事の主題は、2018年12月28日に開催された「第12回 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」で行われた、関谷直也委員のプレゼンです(東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター教授 福島大学うつくしまふくしま未来支援センター・ 客員准教授)。

 ALPS処理水の処分方法を決定するにも、処分方法による市場への影響を予測するにも、消費者(国民)の意識や考えを把握するのは不可欠です。
 これまで、経産省の小委員会では、「トリチウムとは何ぞや」「フクイチ敷地内の水の性状は」という科学的な議論に偏ってきたきらいがありました。公聴会に意見を寄せた人達も「意識の高い人」が主体となっていた筈です。

 国民の意識や考えを客観的に把握する取り組みは、「原発ゼロ」を訴える市民の側も出来ていません。奇妙なことに、この点は「原発推進側」も「反原発側」も共通しています。
 報道機関が行うアンケート(世論調査)も、本来、訊くべきことを外している場合も多く、政策決定の際に参考になる設問・回答になっているかどうか、疑問符が付きます。

 その貴重な、意識や考えを把握する調査を行ったのが、小委員会のメンバーでもある関谷直也准教授です。以下、第12回ALPS小委に提出された資料をキャプチャし、特に重要と思われるところをご紹介します。

 全体をご覧になりたい方は、以下から、PDFをダウンロードして下さい。

(リンク)​漁業と汚染水に関する調査報告​(経済産業省のWebサイト)

 第12回小委員会を傍聴した時から、関谷教授のプレゼンの内容は当ブログで紹介したかったのですが、土壌中のセシウム濃度のまとめ等に追われて、時間が取れませんでした。

 先ず、調査の概要と、注意事項です。







①現状が把握されていない
(注:①~③までの小見出しは、春橋が便宜上つけたもの)






「あなたは次の言葉を知っていますか?」という設問での、トリチウムに関する回答結果です。右の薄い青色が「知らない」、左の紺色が「知っている」です






 先ず、現状に関する重要な設問とその回答の紹介です。

 水の問題(敷地内に溜められていること・保管容量が限界に近付きつつあること)は、福島県内では3分の2以上が把握しています。これに対して、東京・茨城・宮城では、溜められていることを把握しているのは6割程度、貯留容量が限界に関しては5割強です。
 特徴的なのが大阪で、2つの設問とも、4割前後の人しか把握していません。

 更に、「トリチウム」という言葉を知っているのが、福島県外では4割程度に過ぎません。国政選挙の投票率より低いですね(笑)。
 これでは、「トリチウム」に関して議論したとしても、福島県外の国民はついてこないし、そもそも興味・関心を持ちようもないでしょう。

 Q14の1・2についても、福島県内では約6割、福島県外では約8割の人が知らないとのこと。「基礎知識」とも言える事実が共有されていないのですから、これで国民的議論になるでしょうか。


②処分方法に関する意識





 処理水の処分方法に関する2つの設問です。
 環境への放出を認めるのは1割強。4割強が反対し、残り4割は「分からない」との回答です。世論は「環境への放出には否定的だが、強い否定ではない」と言えるのではないでしょうか。

 具体的な処分方法についての賛否を訊いたのが「Q8」です。海洋排水に関する賛同が、福島県では他の県より増えていますが、それでも15%弱です。
 全国の値で見ると、「当面保管」が約2割、「分からない」が約4割。合わせると6割を超えていますから、Q7の回答とセットで見ると、やはり、「世論は環境への放出に否定的である」と言えるでしょう。


③市場の構造はどのように変化するか









 私は、処理水の海洋放出に反対する大きな理由として、「市場構造の変化が進み、固定化する」ことを上げています。経産省に送る意見を書く際も、農水省の資料に基づいて福島県産の一次産品の価格等を調べて、文章をまとめました。

 そういう意味で、私が最も関心を持って見たのが消費動向に関する意識調査です。

 先ず「福島県産を積極的に避けている」という消費者は全体の1割程度は存在していると思われます。10人に一人が買いたくないと言っている訳です。

 更にQ12-2で、海産物に絞ってみると、その比率は1割を超え、東京では16%を越えています。大阪では2割近くが買わないようにしているとのこと。これは「核災害による消費者意識の変化」であり、この意識の変化が「核災害は市場の構造をほぼ不可逆的に変えてしまう」ことに繋がっています。

 仮に、処理水の海洋排水が実施されたら、消費者の意識はどうなるのか。それを確認したのが、Q12-3です。福島県産の海産物を避けようという消費者は全体の3割程度になると思われます。
 海洋排水の結果、福島県産だけではなく、茨城・宮城等、近隣の海産物も売り上げが減るかも知れません。それを示唆しているのがQ12-4です。2割以上の消費者が「東北地方の太平洋沿岸の海産物を購入したくない」と回答しています。


①~③を踏まえて

 以下は、調査の概要を踏まえて、「海洋排水反対・タンク保管継続」の立場からの、私の意見です。


1.「トリチウムが危険か危険でないか」は世論に訴えても(殆ど)無意味

 現在は、処理水を排水したい側も、排水に反対する側も、「トリチウム以外の核種を最大限除去した上で、トリチウムの残っている水をどうするか」という前提で議論しています。
 排水推進側は「環境や健康に影響は無いか、極めて軽微(或いは証明されていない)」である事を以て先に進めようとしており、排水反対側も「環境や健康に影響がある」として、反論しています。

 私は、この議論は、社会的に受け入れられず、無意味だと思います。排水推進側も、排水反対側も、持論を繰り返し発信・発言したところで、世論の支持や納得は得られないでしょう。福島県以外では、「トリチウム」という言葉を知らない国民が3分の2に上っています。これでは、「トリチウム」について語っても、中身を理解して貰えません。

 小委員会のプレゼンで関谷教授も言ってましたが、「議論できる土壌が無い」のです。

 海洋排水に反対する側は、経産省や規制委員会に対抗する為、一生懸命に「トリチウムの危険性」を取り上げるきらいがありますが、そこにリソースを注いでも、得られるものは少ないでしょう。世論の決定的な支持を得る決め手にはならないと思われます(繰り返しますが、「聞いて貰えない」状態だからです)。

 但し、国会での質疑や省庁との交渉の中では繰り返し取り上げる必要はあるでしょう。排水推進側に対して、(世論に響くかどうかはともかく)対抗していく取り組みは必要です。

 立場を問わず、「トリチウムや原発のことを勉強しない側が自覚が無いんだよ」と、「知らない側」を批判する人がいるかも知れません。筋論としてはその通りなのかも知れませんが、何を学んでどのように考えるのかは、個人の自己決定権に委ねられるべきことです。筋論として正しいことを言っても、やはり、世論の支持を得られる決め手にはならないでしょう。


2.「環境への放出には否定的」という世論を掴んで、タンク保管継続を訴える

 海洋排水を含む(ALPS処理水の)環境への放出には、世論は否定的です。この世論を捉える必要があるでしょう。
「トリチウムの危険性」だとか「そもそも原発は~」というような理屈を使わず、シンプルに「敷地外に用地を確保して、タンク保管を継続すること」を訴え続けていくのが効果的だと思います。

「場所は?」と訊かれれば、「フクイチ周辺の敷地は中間貯蔵施設用地として確保されている。用途を転用すれば良い」と答えられます。

 このような話をすると、必ず、コストや財源の話を持ち出してくる人達がいます。それに対してはどう答えるか。


3.「核災害は、市場の構造を変えてしまう」ことを訴える

 既に当ブログで繰り返しているように、核災害は、一次産品のブランド価値を毀損させ、市場の構造を変えてしまいます。生産者の努力や思いは関係ありません。それが非情な現実です。一度変化した市場構造は元に戻せません。消費者に、特定の商品や産地のものの購入や飲食を強要はできないのです(一次産品だけではなく、観光業などにも影響を及ぼしますが、ここでは分かり易い例として一次産品を書いています。尚、私は、フクイチ事故では、東電の電気の消費者と、最も大きな被害を受けた被害者が異なるのが最大の問題点だと考えていますが、本記事ではそこには踏み込みません)。

「市場構造の変化」に関しては、過去記事に記載しています。
(リンク)​ALPS処理済み水の海洋放出に反対~市場構造の変化も、核災害による被害~

 処理水の海洋排水に踏み切れば、市場構造の変化が更に深化し、近隣自治体にも波及するかも知れません。そうなっても、誰も補償・賠償はできませんし、実際に、やらないでしょう。市場構造の変化で、どの程度の売り上げや収益が失われるのか、誰にも確からしい予測や計算は不可能な筈です(今までのところ、そのような確からしい試算を提出した個人や組織を、私は知りません。仮に試算できたとしても、賠償が可能なのかという問題もあります)。

 又、ロシア外務省・韓国政府・環境保護団体グリーンピースが(処理水の海洋放出に)反対や懸念を表明している以上、日本の国際的信用の失墜による損失が発生するかも知れません。これも、広い意味での「ブランド価値の毀損」です(このような損失を金銭に置き換えたり、誰かに賠償させるのは恐らく不可能でしょう)。

 これらを考えると、経済的にも「不可逆的な(取り返しのつかない)」影響を及ぼす可能性があります。ただでさえ、3.11が起きたことで国の内外に不可逆的な影響を発生させているのですから、ここに新たな影響を加えたら、一体、どうなるでしょうか。

「国内外に計算できない損失」を発生させるリスクより、タンクの保守・リプレース(更新)等、確からしい見積もりが算出できる方法(=タンク保管の継続)を選択した方が、コストを考える上でも、相対的に遥かに合理的と言えます。

 以上が、「ALPS処理水の扱い」に関しての、現時点での私の考えです。
 昨年、公聴会宛に意見を提出した時と変わっていません。寧ろ、ワシントンポストの記者が東電の記者会見に来たり、国際環境保護団体「グリーンピース」が報告書を提出したことで、昨年の考えが、より、強化されています。


春橋哲史(ツイッターアカウント:haruhasiSF)​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​ ​​​​​​





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Last updated  2022.05.08 13:18:25
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