Kenneth Fuchs:Point Of Tranquility
Chandosから出たジョンウイルソンが振ったケネス・フックス(1956-)のアルバムをチェックしていて偶然見つけたアルバム。このブログでは、久々の吹奏楽。このアルバムは2017年にNot On Labelレーベルからリリースされているフックスの作品集「Forever Free (The Music Of Kenneth Fuchs)」と同じ音源のようだが、録音日時が違っているので別な録音かもしれない。このアルバムは殆どが今世紀になってからの作品で、全7曲のうち世界初録音が6曲と意欲的なプログラミング。ディストリビューターによると『ピアノ協奏曲「スピリチュアリスト」などを含むフックスの作品集(8.559824)で第61回グラミー賞最優秀クラシック・コンペンディウム賞を受賞したアメリカの作曲家ケネス・フックスの吹奏楽作品集。フックスは高校在学中に最初の吹奏楽作品を作曲し、その後アルフレッド・リードやパーシケッティに師事して吹奏楽作品への造詣を深めた』とのこと。全体にロン・ネルソン(1929-)のサウンドを思わせる鮮烈なサウンドが印象的だ。シンフォニックで耳に馴染むメロディーはリードやパーシケッティの影響だろうか。アルト・サクソフォンと吹奏楽のための協奏曲「Rush」は2楽章構成でどちらもアルト・サックスのカデンツァから始まる。第1楽章は瞑想的な楽章でソロとバックの有機的なつながりも感じられる。第2楽章はラプソディックな楽章だが、エリック・ウィテカーを思わせるメロディーが少しキモイ。また少しもっさりとして推進力が不足している。アルト・ソロはこのバンドのメンバーのグレッグ・ケース。骨太のサウンドと明快な音楽がいい。ふたつの牧歌は絵画からインスピレーションを得た曲。タイトルチューンのPoint of Tranquilityはカラー・フィールド・ペインティングの画家モーリス・ルイス・バーンスタイン(1912-1962)の同名の抽象画(1959-1960)。Christina’s Worldはアメリカン・リアリズム の代表的画家アンドリュー・ワイエス(1917-2009)の具象画。2曲とも大変な傑作だと思う。「Point of Tranquility」は10分ほどの曲。リズムを感じさせないゆったりと流れていく、瞑想的な音楽。穏やかな曲調だが音は強め。突如として木管や打楽器の鮮烈な一撃が撃ち込まれ、聴き手をドキッとさせる。トランペットが活躍するのが意外だが、違和感はない。「Christina’s World」は13分ほどの瞑想的な気分に浸ることが出来る曲。グレイ系統の色彩で冒頭のダブルリードの木管を中心としたサウンドからして印象的だ。打楽器が多用され、キラキラしたサウンドがとても効果的だ。4分過ぎの金管のファンファーレ風なテーマが始まると、剛直なティンパニと共に、にわかにダイナミックな展開になり胸のすくような興奮を覚える。しばらくまた前の気分が続くが、9分頃からテンポが速くなり、執拗なリズムの繰り返しの中で、エンディングまでの2分間は巨大な盛り上がりが感じられる。自然の威容を感じさせるような、巨大な音楽だ。ファンファーレは3曲含まれていて、どの曲も明快な曲想で爽快な演奏が楽しめる。「From the Field to the Sky」では金管主体で途中何回かブラス・バンドを思わせるような、コルネット?の難しいパッセージが出て来て、なかなか興味深い。ティンパニーが目立つ「United Artists」はファンファーレ序曲と謳われていなければ普通の曲で、リズミックで楽し気な曲想と執拗なリズムの繰り返しでスカッとする。「Forever Free」は行進曲風のファンファーレで、構えは大きいが鈍重でメロディーもあまり面白くない。Klavirでお馴染みのUnited States Coast Guard Bandによる演奏はサウンドが分厚く、技術上も申し分ない素晴らしい演奏。未聴の吹奏楽ファンの方には是非お聴きいただきたい。Kenneth Fuchs:Point Of Tranquility: The United States Coast Guard Band (Naxos 8573567)16bit 44.1kHz FlacKenneth Fuchs:1.Discover the Wild (Overture for Band) (2010) ※2.Point of Tranquility (Idyll for Band After a Painting by Morris Louis)(2017)※ 3.From the Field to the Sky(Celebration Fanfare for Brass and Percussion) (2012)※ live4.Rush(Concerto for Alto Saxophone and Band) (2012)※ Live I.Evening (Cadenza - Adagietto) II.Morning (Cadenza - Allegro)6.United Artists (Fanfare-Overture for Band) (2008) 7.Christina's World(Idyll for Band After a Painting by Andrew Wyeth) (1997) 8.Forever Free(Fanfare-Overture for Band) (2013) ※※world premiere recordingGreg Case(as track 4)Jeffrey Renshaw(Guest Conductor track 4)United States Coast Guard BandAdam WilliamsonRecorded: 4 September 2015 (track1), 5 November 2018 (track2), 16 March 2016 trck3,6), 9 June 2013(track 4,5)10 May 2016 (track7),23 March 2016 (track8)at Leamy Hall,United States Coast Guard Academy, New London,Connecticut, USA