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bunakishike
折に触れて聞いた音楽の感想をだらだらと書いています。
音源は主に海外サイトからダウンロードしたハイレゾで、その他観たコンサートや映画などの感想を綴っています。
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マーラーと妻アルマの関係を描いた一種の伝記映画。
両者とそれを取り巻く人間たちの愛憎が赤裸々に語られています。
こう書くと、何かの映画のキャッチコピーみたいですが、それを地で行くよう |
な映画です。
これを見てマーラーを嫌いになるかどうかは別です。
アルマはマーラーの伝記を書いていてい、だいぶ昔に読んでいたのですが、すっかり記憶の中から抜け落ちていて、この映画を見て新たな事実を知ったようなものです。
普通伝記映画というと主人公の悪い面はあまり出さないものです。
この映画の主人公はグスタフ・マーラーだと思いますが、妻アルマとの関係が赤裸々に語られていて、通常の伝記映画とは一味違うスキャンダラスなテイストがユニークです。
簡単に言うと、アルマの浮気が原因で、夫婦の仲が冷え込んでしまい、相手のグロピウスにマーラーが離婚を迫られるも、アルマがマーラーのもとに残り、彼の死まで尽くすといった物語です。
この映画では夫妻は同等の扱い方をされています。
ここで描かれているマーラーは、歌劇場の歌手と浮名を流す人物として描かれています。
もちろん、アルマはウイーン社交界の花で、恋人も多数います。
いわば似た者同士の男女が、一緒になってうまくいくはずがないともいえます。
何しろ、結婚後も結婚前の関係を両者とも引きずっているのですから。
しかし、アルマの交友関係は派手で、グロピウス(フリードリヒ・ミュッケ)はもとより画家のクリムト、ツェムリンスキーなども登場します。
マーラー亡き後の交友関係もド派手ですが、それはこの映画では描かれていません。
映画ではアルマの無軌道ぶりが良く描かれています。
しかし、どこかの別荘で催されたパーティー中に、アルマが元恋人のマックス・ブルクハルトとことに及ぶなど考えられない痴態を演じますが、何とも言えません。
不倫の相手であるグロピウスがこともあろうにマーラーに、別れてくれというのも、常識を外れています。
ストーリーはマーラーがアルマとのことに悩み、さんざん約束をすっぽかした揚句、フロイトの診断を受けることから始まります。
フロイトの問いに対してマーラーが語ることで物語は構成されています。
■主役は結構似ている
マーラーを演じるヨハネス・ジルマーシュナイダーは風貌も似ていますし、背も低くて、実物のイメージにかなり似ていると思います。
演技もリアルでした。
アルマ役はイタリア生まれのバーバラ・ロマーナ。
アルマのイメージは硬い感じですが、このかたは男好きのする風貌で、なかなか魅力的です。
ただ、体形の崩れがみられ、ヌードはあまり見たくないと思いました。
セクスシーンが何回か見られますが、これもあまり見たくない感じです。
マーラーは14人兄弟の2番目でしたが、兄はグスタフが生まれる前年に事故で亡くなり、グスタフが長男として成長しました。
他の兄弟も大半が短命に終わったそうです。
下から2番目の妹ユスティーネ=マーラー・ロゼ(レナ・シュトルツェ)にしてもらっていました。
名前からわかりますが、ユスティーネはウィーン・フィルのコンサートマスターだったアルノルト・ロゼーと結婚しています。
この妹がアルマの行動を非難する結構重要な役を担っていました。
なお、ブルーノ・ワルターが証言者みたいな役で何箇所かで出ていました。
結構実物と似ていたと思います。
そのほか音楽家では、ツェムリンスキーも出ていましたが、史実通り、不細工なことを笑われていたのは気の毒です。
アルマは最終的な名前が、アルマ・シンドラー=マーラー=グロピウス=ウェルフェルとなります。
この名前でもほかに恋人(ココシュカ)がいたのですから、何とも言えません。
彼女は、マーラーの音楽は好きになれず、グロピウスの建築は理解できず、ウェルフェルの小説には興味もなかったけれど、ココシュカの絵には感動させられたそうです。
しかし、今となっては、高名な男どもが、この女性にひざまずいていたとは、ある種の魔力みたいな魅力があったと思います。
まあ、言ってみれば女王蜂みたいな魅力なんだと思います。
写真を見ると美人ではありますが、悪い意味で意志が強そうで、個人的にはあまり近づきたくない部類の女性です。
しかし、マーラーとの生活では、心のよりどころである作曲を取り上げられ、マーラーへ奉仕することのみを求められました。
現代でしたら、そういうことを無理強いされたら、即離婚でしょうけれど、そういう意味で社交界の花形とはいえ、意思を押し通すのは世間が許さなかったということだと思います。
この映画ではマーラーの交響曲第10番のアダージョがかなりのシーンで使われています。
それも、まともなマーラーの音楽だけでなく、パートをバラバラにして、各パートを裸で聴かせるという試みがなされています。
演奏はエサ・ペッカ・サロネン指揮のスウェーデン放送交響楽団です。
この試みはおそらく、監督のパーシー・アンドロンとサロネンの考え~生まれたアイディアだと思いますが、大変うまく言ったと思います。
普通、一つのパートだけ聞いても、あくまでも断片にすぎないのですが、ここで聞かれる各パートの音楽は、それだけで十分に説得力のある音楽であることが分かります。
もちろん、マーラーのスコアが充実しているのは間違いないですが、
今までこんな試みはされたことがなかったと思いますが、今後模倣されるかもしれません。
ということで、普通の音楽映画と思って見に行くと失望すると思います。
男女関係にだらしがない男女の結婚を描いた物語で、彼らがたまたま音楽家だったという風に思えば、何とも思わないと思います。
個人的には、知らない事実があって、得るものはあったと思います。
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Last updated
2011年06月09日 22時23分36秒
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