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カテゴリ:クラシック音楽
ドロシー・ハウエル(1898 - 1982)というイギリスの女流作曲家の管弦楽曲集。 presto musiで紹介されていて、spotifyで聞いたところ、なかなかいいので、prostudiomastersから¥1600で入手。 wikiによるとドロシー・ハウエルはバーミンガムで生まれ、殆どの作品が未出版。 交響詩「ラミア」やバレエ音楽「クン・シー」が知られているそうだ。 アルバムは7枚ほどで、すべて2000年代に入ってからのレコーディング。 ディストリビューターによると『批評家のジョゼフ・ホルブルックが1921年に出版した現代英国作曲家ガイドに、エセル・スマイスとレベッカ・クラークと並んで、彼が重要だと考えた、たった3人の女性作曲家の1人として紹介された』とのこと。 上記の二人も筆者が最近知った作曲家で、スマイスはシャンドスの交響曲集、クラークは「ライオネル・ターティスに捧ぐ」というティモシー・リダウトのアルバムで聞いたばかりだ。 ハウエルは「ラミア」で成功を収めたものの、1940年以降はその曲が軽視され、2010年のプロムスシーズンで復活するまで待たねばならなかった。 実際このアルバムの5曲のうち「ラミア」以外は初録音だ。 ハウエルは、生前、「イングリッシュ・シュトラウス」と呼ばれていたそうだ。 一瞬して聴き手の心をつかむような力はないが、映画音楽を聴いているような分かりやすく生気に富んだ音楽だ。 物語を思わせるような明快な作風で、色彩豊かなオーケストラもよく鳴っているが、シュトラウス流の金管が豪壮に鳴るとうことはない。 メロディー・ラインがディーリアス風で、田舎の雰囲気を思い起させる。 涼やかな弦のサウンドが印象的だ。 「ユーモレスク」はオリエンタル風味満点のファゴットのソロから始まるイギリス人らしいウイットに富んだ音楽だろう。 洗練されたサウンドでスカッとする。 序曲「ザ・ロック」は速いテンポの明るく快活な曲で、ここでも豊かなサウンドが聞かれる。 テンポを落とした中間部では東洋風なモチーフやディーリアスを思い出させる旋律が出てくる。 「3つのディヴェルティスマン(1940年)」はハウエルの最後の大規模な管弦楽作品だが、初演は戦争のため1950年まで待たなければならなかった。 コミカルでカスタネットが印象的な第1楽章、ゆったりとした時が流れる第2楽章、管楽器の活躍する第3楽章からなる。 第3楽章のへんてこなテーマが異彩を放っている。 イギリスのロマン派を代表する詩人ジョン・キーツ(1795‐1821)の詩による交響詩「ラミア」は14分ほどの作品。 女性に変身したラミアという蛇が、美青年リュキウスに恋をし、結婚するが、詭弁学者のアポローニアスはレイミアが蛇の怪である事を見抜き、これを祓う。 ラミアは消え去り、リュキウスは死ぬという物語。 イギリス人らしからぬ濃厚な表現とストーリーテラーぶりで、イギリスのシュトラウスと形容された理由にも納得できる。 「クーン・シー」はハウエル唯一のバレエのための音楽で演奏時間は21分。 17世紀の中国を舞台に、裕福な官僚の娘クーン・シーと官僚の簿記係であるチャンの悲恋の物語。 彼らが愛し合うことを知った官僚がちゃんを殺し、それを知ったクーン・シーが家を焼き払うが、神々が二人を憐れんで彼らを永遠に一緒に過ごすために鳩にするという物語。 原色的で異国情緒満点の音楽が楽しめる。 指揮者のレベッカ・ミラーはアメリカ、カリフォルニア出身の女流指揮者。 劇的な表現に長けており、ハウエルのアニメ的な魅力を余すところなく表現していた。 BBCコンサート・オーケストラは悪くないが、所々限界が感じられる。 録音はあまり抜けがよくない。 こういう知られていない曲を聴くときに、ブックレットが付いていないのは痛い。 他社では付いているので、付いていない理由を知りたいところだ。 ドロシー・ハウエル: 管弦楽作品集 (Signum SIGCD763)24bit96kHz Flac 1.ユーモレスク(1919) 2.序曲「ザ・ロック」(1928) 3.3つのディヴェルティスマン(1950) 6.交響詩「ラミア」(1919) 7.Koong Shee(1921) レベッカ・ミラー(指揮) BBCコンサート・オーケストラ 録音:2022年6月、セント・ジュード教会(ロンドン) 追伸 念のためリリース元に問い合わせたら、もともとブックレットはなくて、いろいろなところを探しまくって送ってくれた。 何か悪いことをしてしまったようで申し訳なかった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024年03月19日 12時02分08秒
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