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カテゴリ:民俗学・社会風俗・地誌・歴史・博物学
山川菊栄評論集(著者:山川菊栄/鈴木裕子|出版社:岩波文庫) 文庫が出たときにすぐ買ったのだが、途中で投げ出してしまったのを、十年後、「幕末の水戸藩」を読んだのを機会に、引っ張り出してみた。 女性問題や労働問題に関する評論を、年代順に並べてある。 平塚らいてう、与謝野晶子というあたりとも論争している。市川房枝の言うことにも異を唱えている。 空論ではなく現実に根ざした発言で、説得力がある。公娼の方が、私娼より問題があったことなど初めて知った。 「私は公娼廃止と共に私娼に関しては無干渉主義をとらせたい」(p41)とはっきり述べている。 女性の地位向上のための方策についての提言も多いが、「婦人部独立というがごとき思想は、性別本位の単一組合を認むることとなり、産業別組合組織の根本原則と矛盾するものであるから、将来は絶対にこれを排斥せねばならぬ。」とも言っている。 時代を感じさせるものもある。 一九三七年に書かれた「消費統制と婦人」には、「都会にも海にも遠く、稗(ひえ)やドングリをさえ常食としている貧寒な農村の食物が思いやられる」(p192)とある。椎のみをおやつにするのではなく、常食しているところがあったとは。 この本を読んで、治安維持法が、「男子」普通選挙法と抱き合わせで成立したことを初めて知った。 編者が巻末に注をつけているが、編者の注の方が社会主義者の色が強く出ている。それだけ、山川菊栄の文章が冷静で論理的だということだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.04.01 21:43:12
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