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カテゴリ:洋書
ハーバードの医大を卒業し(医師免許を持っているかどうかは不明)、医学サスペンスの作家として活躍しているロビン・クックの著作。本作では医学サスペンス以外の分野であるSFに挑戦している。 粗筋: 海底調査をしていた潜水艇が、突然海底に吸い込まれる。乗組員がふと目を覚ますと、そこはインターテラという海底の世界だった。 インターテラ人は、乗組員に説明する。インターテラ人は数十億年前に栄えた文明の末裔だった。数億年前まで地上に住んでいたが、気象の変化で海底に住むことになった。地上は、一度はほぼ全ての生命が絶滅したが、残った微生物からまた進化が始まり、その結果現在の地上人が登場したという。つまり、地球では人類が二度登場したのだ。 インターテラ人は、外見上は現在の地上人とそっくりだったが、数十億年も栄えていたことから、全く別の文明を築いていた。 第一の違いが、「死」がないことである。インターテラ人は、老いると、自分の人格や意識をそのまま新たな肉体へ移転する技術を持っていた。人格と意識の移転は、生きている内に行われなければならない。事故などで死亡すると人格と意識は永久に失われる。そのことからインターテラ人は死を非常に恐れていて、怪我の可能性のあるスポーツや、戦争などの争いごとは一切ないという。 潜水艇の乗組員は、なぜ自分らがインターテラに連れてこられたのかと疑うが、やがて明らかになる。インターテラ人は地上人による海底調査が気になっていたので、海底科学の知識のある地上人をさらうことにしたのだ。 残念ながら、インターテラ人はさらった地上人を帰すつもりはなかった。潜水艇乗組員は、インターテラで永遠に留まるのだ。 インターテラ人は、ここは天国のようだからいいではないかと言うが、潜水艇乗組員は賛成しない。何が何でも地上に戻りたい、と考え、計画を実行に移す……。 解説: 書き方によっては単なる馬鹿小説にも成り得たが、ディテールの厚みで辛うじてまともにした感じ。インターテラという別の「人類」の社会もそれなりに説得力があるように思えた(スタートレックで出る異星文化とどっこいどっこいか)。 主な問題は、二つ。 まずは登場人物だろう。 地上人の登場人物は海底科学者のスーザン、海底調査会社社長のペリー、元海軍兵で潜水艇操縦士のドナルド、そして元海軍でダイバーのマイケルとリチャードである。 スーザンとペリーはどちらかというと常識人だが、ドナルドは海軍時代からまだ抜け切れなく杓子定規で、信じられないほど無愛想。マイケルとリチャードは、こんな奴らがどうやって海軍にいられたのかと思うほどの欲馬鹿。 どれもが極端で、いかにも作り物、といった感じなのである。 地上人が自分らの思想(特に宗教観)をインターテラ人に押し付け、逆にインターテラ人も自分らの思想を地上人に押し付ける。宗教心のない自分としては、地上人の世界観の押し付けが、インターテラ人の世界観の押し付けより厚かましく感じた。インターテラ人も文明や科学が進んでいる割には地上人の心理をまるで把握できていないという印象を受けたが。 もう一つの問題がインターテラという世界そのものだろう。 インターテラという世界は数十億年も続いていて、高度な文明を持っているが、防衛能力に完全に欠ける。ドナルドが率いる地上人が反撃に移ってもオロオロするだけなのだ。ここまで防衛力に欠けるとよく数十億年も存続できたな、と思ってしまう。 また、人格を別の身体に移転できるのは本人が生きている間だけで、事故などで手続きをしないまま死亡すると人格が永久に失われてしまう、というのもおかしい。数十億年も栄えていた文明で、人格の移転が可能なら、定期的に人格をどこかに「保存」して、事故死しても「保存」しておいた人格を新たな肉体に移転し、また生存し続けられる、という技術を確立していても不思議ではない感じがする。死を恐れるあまり争いごとがなくなってしまった、というほど臆病な文明なら、そのくらいの技術があって当然だろう。 一方で技術が進んでいるように見え、もう一方で技術に穴がある。そういう面でちぐはぐな印象を受ける。 最後のオチはたどり着く前に分かってしまい、月並みの終わり方だった。 関連商品: お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.11.25 19:08:06
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