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非常に適当な本と映画のページ

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2006.11.26
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カテゴリ:洋書

 イオン・プロダクションが製作した007映画「ムーンレイカー」のノベライズ。執筆したのは脚本に携わっていたクリストファー・ウッド。前作の「私が愛したスパイ」もウッドによってノベライズされていて、その脚本も彼が担当したものだった。ジョーズが前回同様に登場するのもその為。


粗筋

 スペースシャトル「ムーンレイカー」がアメリカからイギリスに輸送される途中、ハイジャックされ、行方が分からなくなった。
 この件でアメリカとイギリスの関係が悪化しては困ると感じたイギリス情報部MI6は、ジェームズ・ボンドにスペースシャトルがどうなったか調べろと命じる。
 ボンドはまずスペースシャトルを建造し、アメリカの宇宙開発プログラムを実質的に握っている大富豪ドラックスを訪ねる。
 ボンドは、ドラックスが怪しいと直ちに悟った。ただ、ドラックスの仕業だとすると、本人が実質的に所有しているスペースシャトルを盗んだことになってしまい、なぜそんなことを、という疑問が上がる。
 ボンドは、ドラックスの書斎で、設計図を見付ける。人工衛星らしいが、何の為のものか分からない。部品の一部は、ドラックスが所有するベニスのガラス工房で製造されていることを掴み、ボンドはベニスに飛んだ。
 ベニスのガラス工房で、ボンドは人工衛星らしきものが組み立てられている様子を目撃した。その人工衛星らしき物体には、毒ガスが搭載されていた。ボンドは毒ガスのサンプルを盗み出すことに成功した。人工衛星らしき物体は、リオに送られていた。
 ボンドはリオに飛ぶ。ドラックスが所有する航空機で、その物体はどこかへ運ばれた後だった。
 MI6の研究開発部主任のQは、ボンドが盗み出した毒ガスを分析したところ、蘭の花から抽出したものであることを突き止めた。その蘭は、ユカタン半島でしか生息しないという。
 ボンドはユカタン半島に飛ぶ。そこのジャングルで、ボンドはドラックスの秘密基地を発見する。ドラックスのスペースシャトルが次々打ち上げられていた。
 ボンドは、訳が分からないままスペースシャトルに忍び込むと、宇宙へ飛び立つ。
 宇宙では、ドラックスが極秘裏に建設した宇宙ステーションがあった。
 そこで、ボンドはドラックスの企みを知る。ドラックスは、人口爆発による環境・芸術作品の破壊を食い止める為、自ら選んだごく一部の人間を宇宙ステーションに滞在させ、残りの人類を絶滅させることにしたのだ。宇宙ステーションはノアの箱船となるのである。ドラックスが自分のスペースシャトルをハイジャックしたのは、計画で利用する予定だったスペースシャトルの一機で機械トラブルが発生した為、イギリスへ借り出される別のスペースシャトルを盗むことを強いられたのである。
 ボンドは、人類を絶滅させる装置である毒ガス入り人工衛星を破壊し、ドラックスの野望を打ち砕いた。


解説

 めちゃめちゃなストーリーだが、それなりの流れがあり、比較的単純である為理解し易く、何となく合理的な感じがするので不思議。ただ、作中の小さなヒントを読み過ごしてしまうと、なぜボンドが世界各地へ飛び回るのか分からなくなるので、注意して読む必要がある。
 著者のウッドが、作風をフレミングになるべく似せようと努力したこともあって、本作は一応きちんと「ノベル」になっている。単体としても十二分に通用するレベルに仕上がっていて、映画を補完するだけの単なる「ノベライズ」ではない。
 このことから、ページ数は先程読み直した「ワールドー・イズ・ノット・イナフ」より幾分多い程度だが、内容的には二、三倍密度が濃い感じがする。
 この書評対象となったのは訳書だが、洋書の方も読んでいる。そちらでは、撮影が完成する前に執筆された為、一層映画から独自性を保っている。たとえば、洋書ではドラックスを赤髪の男として描いていたが、映画では黒髪(フレミングの原作ではドラックスが赤髪の男だったかららしい)。ボンドは、映画ではかすり傷一つ負わず、恐怖心を全く抱くことなく冒険を繰り広げているが、作中ではボンドは火傷を負うなどかなり怪我をしているし、恐怖感で溺れそうになっている場面も多い。また、予算上映画では省かれた部分(ボンドが船外活動する)も挿入されている。残念ながら、訳書では、訳者が完成した映画を見てそういった部分を修正している。親切のつもりでやったのかも知れないが、はっきり言って大きなお世話。
 せっかくの「小説」を「ノベライズ」に格下げするので、原書のままにして、あとがきで注意書きを入れるようにしてほしかった。
 作中では、ボンドガールのホリー・グッドヘッドが「アメリカ初の女性宇宙飛行士」となっている。当時、ロシアには女性宇宙飛行士が存在していたが、アメリカにはいなかった、ということを改めて認識させる(実際の初のアメリカ人女性宇宙飛行士はスペースシャトル搭乗員サリー・ライドで、映画が公開された後のこと)。

 映画も小説も何度も観たり読んだりしていて、楽しめたが、現在の視点では、作品は色々おかしいところがある:

1 なぜドラックスはイギリスへ輸送中のスペースシャトルをハイジャックしたのか
 ムーンレイカー計画では6機のスペースシャトルが必要だったが、1機が機械的なトラブルで使用できなくなった為、イギリスへ渡る筈だったスペースシャトルを取り返した、とドラックスは説明している。
 しかし、これが危険なのは明らか。現に、ボンドはドラックスを最初から怪しいと睨み、ドラックス周辺を嗅ぎ回った結果、ドラックスの計画を暴き、阻止したのである。ドラックスが5機で計画を遂行できるよう変更していれば、スペースシャトルを派手な方法で取り返す必要はなくなり、無論ボンドに知られることなく人類全滅計画を実施できただろう。
 そもそも、実際のスペースシャトルは予定通りに打ち上げられる方が珍しい。気象条件に左右され易いし、機械的なトラブルが毎回のように発生し、打ち上げが延期になることが多い。6機を打ち上げようとしたら、少なくとも半分は機械的・気象上のトラブルで予定が遅れると見てもいい。ドラックスは予備のスペースシャトルをなぜ用意しておかなかったのか。それともドラックスのスペースシャトルは必ず予定通りに打ち上げられるという期待が持てるほど完成度が高かったのだろうか。

2 スペースシャトルはどうやって建造されたのか
 映画では、アメリカ政府公認のスペースシャトルはドラックスによって盗まれたものと、アメリカの宇宙コマンドーがドラックス宇宙ステーションを襲撃するのに使った2機だけのようだったが、ドラックスは他に6機も建造していた。ただ、スペースシャトル建造には莫大な費用がかかる。ドラックスはどうやってその資金を捻出したのか。ドラックスは大富豪らしいが、建造費が空母一隻に匹敵するスペースシャトルを6機も建造するのは生易しいものではないし、仮に捻出できたとしても資金の動きが各国政府に感知されてしまう。たとえ無数の企業を持っていたとしても、全ての部品を自分の会社で製造できる訳なく、かなりの量を外注していただろう。ドラックスはどうやってアメリカ政府などの目を欺いたのか。
 量産の為、1機あたりのコストは安くなっていたかも知れないが。

3 ドラックスにハイジャックされたスペースシャトルはどうやってユカタン半島の秘密基地にたどり着いたのか
 スペースシャトルのエンジンはあくまでも軌道から外れて地球へ着陸する為に使用されるもの。その飛行も大半は滑空で、エンジンは最少限にしか使われず、その分燃料もあまり搭載していない。元に、ロシア版スペースシャトルでは完全滑空方式で、エンジンがない。つまり、通常の航空機のように自由自在に飛べるよう設計された機体ではない。航続距離はかなり短い。
 ドラックスのスペースシャトルは、ベーリング海でハイジャックされた後、どこかで着陸し、ユカタン半島まで船か何かで輸送された筈である。しかし、作中ではその過程は全く説明がなされていない。
 スペースシャトルはどこの飛行場で着陸したのか。なぜ誰にも目撃されなかったのか。洋上で空母に着艦した、というのも有り得ない。スペースシャトルの着陸装置がその衝撃に耐えられるほどのものとは思えないし、機体も大き過ぎる。また、空母に着艦したとなったら、ドラックスは秘密裏に空母も所有していることになり、目立ち過ぎる。
 仮に誰にも目撃されない方法で飛行場に着陸できたとしても、そこからどうやって船まで運んだのか。公道を使わざるを得ないから、目撃されない訳がない。
 仮にスペースシャトルの航続距離が長くて、ユカタン半島まで直行できたとしても、途中で各国のレーダーに引っかかるだろうし、着陸が目撃された筈。

4 宇宙ステーションはいつ、どうやって建設されたのか
 現在アメリカ、ロシア、日本、欧州が共同で国際宇宙ステーションISSを建設している。完成すれば7、8人の搭乗員が数カ月間過ごせるものとなる。建設には5年以上かかり、宇宙ステーションを構成するモジュールはスペースシャトルやロケットなどで何段階にも分けて打ち上げられ、宇宙で組み立てられている。無論、建設費用は莫大で、アメリカでは毎年のように予算削減の危機に瀕している。
 ドラックスの宇宙ステーションからすれば、ISSは芥子の実みたいなもの。ドラックス宇宙ステーションは100人近くが数年間滞在できるようになっていて、ISSにはない人工重力まで備えている。建設費はけた外れの筈だし、構成するモジュールの打ち上げ回数もISSの数倍になり、建設期間も10年以上になっていただろう。それをアメリカやロシアに気付かれることなくやってのけられたとは考え難い。はっきり言ってこれほどの規模のものが設計・開発段階で全く外部に漏れなかったとは信じ難い。

5 ドラックス宇宙ステーションになぜジョーズを連れてきたのか
 ドラックスは、人類をまず全滅させ、自分が選定した人間から生まれた者を宇宙ステーションから地球に戻し、文明を新たに始めることを計画していた。選定されたのは頭脳も容姿も最高の者だけ。他は抹殺するつもりだった。
 こうなると、ジョーズが宇宙ステーションにいたことがおかしくなる。ジョーズは見た目がお世辞にもいいとは言えないからだ。その結果、ボンドから「お前はドラックスに始末される運命だ」と知らされたジョーズは反逆するのである。
 ドラックスがジョーズを連れていかなかったら、ボンドはドラックスを負かす可能性は低かったと言える。なぜ始末するつもりの人間を宇宙に連れていったのか。ボンドが自分が用意した死に場所から脱出し、宇宙ステーションに乗り込むことを予測していたのか。それだったらボンドをもっとストレートに殺していればよかった。

6 ドラックスは宇宙開発資金をどうやって捻出しているのか
 本作では、ドラックスがアメリカの宇宙開発事業を一人で握っていることになっている。それほどの富豪なのだ。しかし、本業が何なのかは結局明らかにされていない。
 作品を読む限りでは航空機製造、ガラス工房、空輸、そして軍事産業などに携わっているようだが、その程度で城館に住み、各国政府を牛耳り、宇宙開発事業をポケットマネーでまかなえるほどの資金が得られるとは思えない。
 現在、最も金持ちなのはマイクロソフト元会長のビル・ゲーツだが、彼ほどの富豪でも宇宙開発を支えるとなったらかなりの負担に感じるだろう。たった数年で破産する恐れがある。

 ま、色々問題点はあるものの、これは本作に限ったことではない。ある意味で007シリーズの頂点にある作品の小説化である。





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Last updated  2006.11.27 09:44:17
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