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非常に適当な本と映画のページ

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2007.06.24
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カテゴリ:洋書
 Michael Hastingsは、ユダヤ人作家Michael Bar-Zoharのペンネーム。
 Michael Barakのペンネームでも本を執筆している。
 第一次世界大戦の中東戦争を描いた小説。
 一部実在した人物を登場させている。

粗筋

 第一次世界大戦の真っ只中。
 ドイツと同盟を結んでいたオスマン・トルコ帝国は、イギリス率いる連合軍の攻撃にさらされていた。
 トルコ帝国軍の将官ムラード・パシャは、近々勝利を挙げないと帝都に召還され、敗北の責任を取らされて処刑される運命にあった。
 最近イギリス連合軍に対し連戦連敗しているのは、味方の情報が敵側に筒抜けになっているからだ、と確信し、スパイを探し回る。そんなところ、スパイの身元が判明した。パレスチナ(当時はトルコ帝国領)に居住するユダヤ人女性ルース・メンデルソン。
 ムラード・パシャは、彼女を拘束し、直ちに処刑しよう、と考える。しかし、ドイツから派遣されていた諜報顧問のフォン・トラウブは、それに反対する。処刑するのではなく、利用するべきだ、と。スパイとしては優秀なのだから、イギリス軍の動きを探る為のスパイにしてしまえ。彼女が裏切らないよう、父親を人質にし、更にパレスチナにいるユダヤ人居住区を殲滅すると脅せば大丈夫だ……。
 ムラード・パシャは、不安を感じながらも、フォン・トラウブには逆らえない状況にあったので、その提案を受け入れる。
 ルースは、トルコ帝国側のスパイとして中東におけるイギリス連合軍本部があるエジプトに入国した。
 ルースが元々スパイになったのは、ソール・ドンスキーという、恋心を抱いていた男性の為だった。
 ソール・ドンスキーはロシア系ユダヤ人で、帝政ロシア内の反政府組織で活動していたが、組織が壊滅状態になってからは中東に逃れ、イギリスの為に活動していた。イギリスならユダヤ人国家の建国に手を貸してくれる、と考えていたからだ。
 そのソール・ドンスキーは、エジプトにいた。ルース・メンデルソンがムラード・パシャによって連行され、処刑された、という報を受け、ショックを受ける。その直後に、ムラード・パシャがエジプトにスパイを送り込んだらしい、という情報を掴む。ドンスキーは、そのスパイの正体を暴いて、ムラード・パシャを潰してやる、と誓う。
 その頃、ルースは、メアリ・バートレットという偽名でスパイ活動を開始する。イギリス連合軍将校に近付き、情報を得ようとする。
 当時、在エジプト・イギリス連合軍は、今後の対応について意見が真っ二つに分かれていた。
 アレンビー大将は、自身が先陣を切ってパレスチナに侵攻し、パレスチナのシンボル的な存在であるエルサレムをイギリス占領下に置くべきだ、と主張していた。エルサレムはキリスト教の聖地だが、イスラム教の聖地でもある。聖地が異教徒によって陥落したとなれば、イスラム教国家のトルコ帝国は士気を失うだろう、と。
 イギリス軍将校でありながらアラブ人の信頼を獲得し、「アラビアのロレンス」と称されるほどの英雄になっていたロレンス少佐は、その作戦に反対する。エルサレムはイスラム教の聖地なので、アラブ人に解放させるべきだ、と。つまり、アラブ人連合軍を率いている自分こそ先陣を切ってエルサレムに侵攻すべきだ、と。
 パレスチナをユダヤ人国家したいと考えていたドンスキーは、ロレンスの考えには反対していた。しかし、中東での戦争を早期に終結させたいイギリス連合軍上層部は、ロレンスの主張に傾いていた。
 ルースは、イギリス連合軍将校から、ロレンスのエルサレム攻略計画の情報を得る。直ちにエジプトから脱出してパレスチナに向かう。
 ドンスキーは、自分が追っていた女スパイのメアリ・バートレットがエルサレム攻略計画の情報を手にエジプトを脱出したことを知る。直ちに追跡し、捕まえたところ、メアリ・バートレットが、処刑された筈のルースだったと知って驚愕する。
 ルースは、見逃してくれ、と頼んだ。さもないと父親が処刑される、と。当然ながら、ドンスキーは悩む。もし見逃したらエルサレム攻略計画の情報がトルコ帝国に渡ってしまう。イギリスはトルコ軍に大敗し、パレスチナがユダヤ人国家になる可能性も消滅する。しかし、ルースに負い目も感じていた。もし彼女をスパイに仕立て上げなかったら、現在の状況にはいなかった筈、と。
 結局、ドンスキーはルースを見逃してしまう。
 ルースは、直ちにムラード・パシャの元に戻り、ロレンスのエルサレム攻略計画の情報を伝える。その情報を元に、ムラード・パシャはパレスチナに潜伏していたロレンスを捕らえる。辱めた後、解放してやった。更に、ムラード・パシャはルースに言う。お前の父親はとっくに死んでいる、と。彼はルースを再び捕え、監獄に放り込んだ。
 ドンスキーは、自身がルースを見逃してしまったことについて悩んでいた。これでロレンス率いるアラブ人連合軍は壊滅され、エルサレム解放の可能性と、ユダヤ人国家樹立の可能性はなくなった、と。
 しかし、ドンスキーはエジプト国内のイギリス連合軍基地がもぬけの殻だということを知る。
 その時点で、ドンスキーは悟った。ロレンスのエルサレム攻略計画は単なるおとりだった、と。イギリス連合軍上層部は、最初からアレンビー大将にエルサレムを攻略させるつもりだった。しかし、そのまま攻略しても、ムラード・パシャに阻止される。そこで、ムラード・パシャに偽情報を与え、敵軍を見当違いの場所に移動させる必要があった。
 そこで、イギリス連合軍上層部は、ルースに偽情報を掴ませ、ムラード・パシャに届けさせた。イギリス連合軍上層部は、ルースがトルコ帝国側の女スパイ・メアリ・バートレットとして自軍の将校らに近付いていたのを知っていた。そもそも、ルースをムラード・パシャに売ったのはイギリス連合軍上層部。彼女をトルコ帝国軍のスパイにさせたのもイギリス連合軍上層部だった。なぜなら、フォン・トラウブは実はドイツではなくイギリスに通じていたからだ。
 ドンスキーはこのことをイギリス連合軍上層部に突き付ける。ルースはお前らのせいでムラード・パシャの元に戻り、捕まってしまった。お前らの責任で彼女を助け出せ、さもないとムラード・パシャに本当のエルサレム攻略計画を届ける、と脅迫する。イギリス連合軍上層部は、渋々ながらもルースを救出する。フォン・トラウブにルースを逃せ、と命令したのだ。
 イギリス連合軍は、アレンビーに率いられ、エルサレムを占領する。
 敗北を悟ったムラード・パシャはトルコ帝国から逃亡し、革命によってソビエト連邦になったロシアへ亡命する。


解説

 第二次世界大戦を舞台とした小説や映画は多くあるが、第一次世界大戦を舞台とした小説はあまりない。
 その意味では、本作は珍しい例といえる。

 本作は、疑問を上げ始めたら切りがない。

 ルースは、ドンスキーに恋心を抱き、ドンスキーも彼女に好意を抱く。
 ただ、その理由がさっぱり分からない。
 ドンスキーは確かに魅力的な男性なのかも知れないが、ルースは彼の為に家族(父親と弟)を犠牲にしている。そこまで魅力的だったのかね、と首を捻ってしまう。
 二人が肉体的に結ばれていたならともかく、そうではなかった。ルースはドンスキーに接吻されただけ。それだけで親族や、同胞を犠牲にする彼女の心境がまるで理解できない。処女だったので、それだけうぶだった、ということなのかも知れないが。
 20世紀初頭は、女性がそういう考えを抱いて当たり前だった、ということか。現在を舞台にしていたら、「女性心理をまるで理解していない」と一蹴されそう。
 一方、ドンスキーも、なぜルースに惹かれたのか、よく分からない。
 女スパイとして活動できるくらいだから、容貌的には魅力的だったのだろう。が、ドンスキーは、イギリス連合軍の情報を盗み出したルースを、単に「情報を持ち帰らないと父親が殺される」の言葉だけで彼女を逃してしまう。イギリス連合軍に多大なる被害を与える可能性がある、ということを知りながら(結局は、彼が彼女を逃すのを、イギリス連合軍は予想していたのだが)。そこまで犠牲を払うほどの女性とは思えない。
「二人は愛し合っているという設定になっています。その点をふまえて読んでください」と作者はさかんに主張していたが、なぜ二人がここまで互いを求め合ったのか、最初から最後まで分からなかった。

 敵役であるムラード・パシャの思考も、理解し難い。
 彼はオスマン・トルコ帝国屈指の将校ということになっている。疑り深い人物、ということにもなっている。
 その疑り深い人物が、弱みを握られていたとはいえ、なぜドイツ軍将校のフォン・トラウブの意見を疑いもせずにガンガン受け入れてしまったのか。
 彼が「もしかしてフォン・トラウブはイギリスに通じているのでは?」と一瞬でも疑っていたら、彼は偽情報に踊らされることはなかっただろう。
 オスマン・トルコ帝国屈指の将校が、完全にイギリス連合軍の思惑通りに動いてしまうとは、ちょっとあり得ない。それとも、20世紀初頭の諜報活動はその程度でも成果を挙げられたのか。

 ルースをスパイに仕立て上げよう、という理由も分からなかった。
 ドンスキーの為にスパイ活動をしていた時は、イスラム教徒相手だった。女性を殆ど見たことがない連中を相手にしたので、肌を少し露出するだけで情報をガンガン得られた。
 しかし、ムラード・パシャに捕まり、エジプトに送られた。イギリス連合軍をスパイしろ、と。
 イギリス連合軍の将校らは、イスラム教徒ではないので、女性なんて何度も接している。ルースは、スパイする相手と寝床を共にせざるを得なかった。ルースは、スパイする過程で処女を失う羽目になったのである。その意味では、ハニー・トラップとしては完全に不適切。失敗の可能性はいくらでもあった。成功したのは、偶然に偶然が重なっただけ。
 もっと他の女性にやらせることができなかったのかね。

 歴史的人物の取り扱いも、史実とは異なっていて、読む側としては戸惑いを感じる。
 作中で、ドイツの為にスパイ活動していた女性スパイのマタ・ハリについて数回触れている。
 本作では、マタ・ハリは優秀なスパイで、フランスの重大な情報をドイツに提供していた、ということになっている。が、史実では、マタ・ハリはスパイとしては大したことなかったようである。
 ロレンスは、作中では「実は同性愛者だった」とされている。しかし、史実には、その説は否定されている。ロレンス本人の著作で同性愛について触れられているような部分も見受けられるが、彼が行動を共にしたアラブ民族の一部にその傾向が見られたことを描写していただけで、本人は同性愛者でも何でもなかった、というのが定説である。

 結末も、取って付けたような勧善懲悪。
 ルースやドンスキーを欺いたイギリス連合軍将校は、この後インドに派遣される途中で心臓発作で死亡。
 ムラード・パシャは、第一次世界大戦を生き抜けるものの、後に暗殺される。
 その一方で、ルースやドンスキーのその後については述べられていない。
 不満が残る。

 作者Michael Hastingsは、ユダヤ系作家(らしい)。
 そんな訳で、作中には現在ユダヤ国家イスラエルの敵となっているアラブ民族や、アラブ諸国や、アラブの側に付く者(ロレンスなど)に対する偏見が見受けられる。
 そのことが鼻につくのも難点といえる。

 また、第一次世界大戦やイスラエル建国の歴史について全く知識がないと、小説で起こっている出来事や、登場する歴史的人物(アラビアのロレンス、マタ・ハリ)の重大性が理解できなくなるのも難点。

 ある意味、読者を選ぶ小説といえる。





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Last updated  2007.06.24 11:14:17
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