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2007年06月12日
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今日のまとめ

1. ベネチアンの開業はマカオにとって大きな節目である
2. 供給過剰で各社の業績が低迷するリスクがある
3. 長期で見れば先行投資こそが最大の需要刺激要因である


大きな節目を迎えるマカオ

 マカオは今年の夏に大きな節目を迎えます。ラスベガス・サンズ(LVS)のベネチアン・マカオの開業がその節目です。マカオ半島からコーズウェイを渡った対岸のタイパ島に浅瀬を埋め立てて作られた新しい目抜き通りがコータイ通りです。そのコータイ通りで最も重要なカジノがベネチアン・マカオなのです。同カジノは総工費2900億円という大規模開発で、先にオープンしたメルコPBLエンターテイメント(MPEL)のクラウン・マカオの総工費600億円を遥かに凌ぐ規模です。ベネチアン・マカオの開業は9月頃が予定されています。ベネチアンは当初テーブル数850、スロット・マシン数4100で開業し、ゆくゆくは総テーブル数1150、スロット・マシン数7000まで拡張される予定です。


スケール・アップ出来るか?

 さて、投資家が注目している点としてはベネチアンの開業でいままで専らマカオ半島に集中していた観光客がどのくらいタイパ島に流れてくるか?という点です。ごく単純化した説明をすればマカオがスタンレー・ホーのSJMにより独占されていた時代はマカオ全体のカジノ収入はほぼ横ばい、つまりゼロ成長をずっと続けていました。それが2002年に独占が終了し新規参入が許されたのをきっかけにマカオのカジノ収入は年率平均23%で成長してきたわけです。この年率23%成長という数字は立派な実績だと言えます。しかし前回見たとおり今計画されている各社の設備投資計画によるとマカオ全体のキャパシティー(ゲーミング・テーブルの可能着席数+スロット・マシン数)は2006年からむこう5年間で一気にこれまでの3.8倍に膨れ上がります。これを年率に換算すると約40%成長に相当します。マカオ全体のカジノ収入は到着観光客数に左右されますから今までの観光客到着数の実績を大幅に上回るペースでは成長できないと思います。つまり短期的には需要と供給のバランスが崩れ各社の業績が低迷することが考えられるわけです。さらにタイパ島に娯楽性に富んだ魅力的なカジノが相次いでオープンするとマカオ半島のほうが逆に廃れることも可能性としては無いとは言えません。実際、ラスベガスの場合、ラスベガス通りに大型のカジノが相次いでオープンしたので旧市街のほうはすっかり廃れてしまいました。


各社のコータイ通りでの戦略

 ここでコータイ通りにおける各社カジノの位置関係を整理すると先ずコータイ通りの両側の大部分はラスベガス・サンズの所有です。ラスベガス・サンズは自社のブランドであるベネチアンを核テナントとして先ず最初にオープンし、今後、フォーシーズンズ・ホテル、シャングリラ・ホテル、シェラトン・セント・リージス、コンラッド・ヒルトン、フェアモント・ラッフルズという一流ブランドでコータイ通りを固める予定です。コータイ通りに面した土地でラスベガス・サンズの所有になっていない敷地は二箇所だけです。具体的にはコータイ通りの北端の空港側の敷地はメルコPBLエンターテイメントのシティ・オブ・ドリームスの建設予定地となっています。またコータイ通りの南端の本土からの観光客の通過するイミグレーション・オフィスの付近はイー・サンらが企画するTVシティーが配置されます。一方、コータイ通りを離れた場所としてはベネチアンの裏がギャラクシー・コータイです。それから特筆すべき点として既存のマカオにおける最大勢力であるSJMはコータイ通り周辺に殆どプレゼンスが無いことに注意を払うべきです。別の言い方をすれば人の流れがコータイ通りに移ればラスベガス・サンズが勝ち、逆にコータイ通りが閑散となればSJMの勝ちという風にも言えます。


収入構造の変化

 このような立地上の変化に加えてカジノの収入構造の変化も注意深くフォローする必要のある問題です。下の図はマカオとラスベガスのカジノのテーブル当りの一日平均収入(average win per day)を示したものです。

テーブル当りの1日平均収入

 このグラフで見るとマカオのギャンブリング・テーブルはラスベガスのそれより3倍以上もテーブル当りの収入が高いことがわかります。これはマカオの顧客がハイ・ローラーと呼ばれる、大きな賭けを好む玄人っぽい客筋であることを示しています。テーブル当りの生産性が高いことは歓迎すべきことですが、ハイ・ローラーの人口はマカオのキャパシティーが増加したからといってそれに合わせて増えるとは限りません。一般の観光客などへギャンブル人口の裾野が広がるにつれてテーブル当りの掛け金は下がり、テーブル当りの生産性が減少するのはほぼ間違いないと思います。問題はそのテーブル当り収入の下落がどの程度か?ということです。このように今のマカオはベネチアンの開業という大イベントを目前に控えて投資家の不安が極点に達している状態だと言えます。


リスキーな賭けはラスベガスで経験済み

 それではなぜラスベガス・サンズをはじめとする各カジノ業者はマカオにおける事業の成功に自信を持っているのでしょうか。その理由は彼らにとってこの手のリスクはラスベガスで経験済みだからなのです。例えば典型的なラスベガスの事業家であるウイン・リゾーツ(WYNN)のスティーブ・ウインの場合、シーザース・パレス、ミラージュ、べラジオ、ウイン・ラスベガスと次々に大型のカジノをオープンしてきました。そしてそのたびごとに新しい主力カジノから上がる税引き前利払い前利益(EBITDA)はどんどんスケール・アップしたのです。大型カジノが着工されるごとに投資家やラスベガスの地元の住人は「こんどこそ需要が追いつかないのではないか?」と心配しましたが、そのたびごとにそれは杞憂に終わってきたのです。別の見方をすれば新しいカジノやアトラクションに対する先行投資こそがラスベガスのカジノ市場のパイの成長を促す最大の需要刺激要因だったという風にも考えられます。実際、最近オープンしたウイン・マカオはラスベガスでスティーブ・ウインが培ったノウハウをフルに活用した、大変洗練されたホテル/カジノに仕上がっています。また、ベネチアン・マカオは大成功を収めたラスベガスのベネチアンのレプリカ(コピー)であるため基礎工事のリスク(コータイ通りは埋立地です)を除いた施工ならびに工程管理上のリスクは最小限であるといえます。


そのほかのリスク

4月末からマカオから最も近い本土の省である広東省からマカオに渡る際のビザの申請手続きが変更になりました。具体的にはビザを申請してから発給を受けるまでの待機期間がこれまでの3日から10日に延長されました。また一回の申請で受けられるビザがこれまでの2回分から1回のみに制限されました。これにより本土の人がマカオを訪れる際の面倒が若干増えたと言えます。現在までのところこの新しい規則が客足に影響している形跡はありませんがほんのちょっとしたルール変更がマカオのカジノの経営環境に影響を及ぼしうることを投資家は痛感しました。





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最終更新日  2007年06月12日 17時04分25秒


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