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2007年08月23日
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今日のまとめ

1. 本土の個人投資家のH株買いだけでなく国際機関投資家の参戦にも注意
2. A株はマルチプル・コントラクションをおこす
3. H株のバリュエーションは若干底上げが期待できる


 中国国家外貨管理局は8月17日に中国本土の個人投資家の外国株投資を今後順次解禁してゆくと発表しました。今日はこの発表が持つ意味について考えてみたいと思います。

■香港上場株からスタート

 これまで中国本土に住む個人は一年間に5万米ドルまでしか外貨に換えることができませんでした。このルールは今後も維持されます。今回の措置は外国株式を買う場合に限って現行の枠にとらわれずに上限金額を設定せず購入を許すというものです。今回対象となる外国株はいまのところ香港市場に上場されている株に限定されています。香港市場に上場されている株と言った場合、やはり中国本土の個人投資家にとって馴染みのある中国企業に先ず物色の矛先が向かうと考えるのが自然でしょう。つまりH株やレッドチップということになります。将来はこの可能投資範囲は徐々に広げられてゆく見込みです。


■完全な自由化ではない

 さて、実際の手続きですが中国本土の顧客は中国銀行の全国の支店に口座を開設することを許されます。そこから中国銀行の天津支店経由で香港市場へ注文がつながれるわけです。このように窓口を限定するということは中国政府にとってお金の流れを把握しやすいという利点があります。特定の企業の特定の窓口だけを通じて解禁するというやり方は中国のような政治体制の国でしか考えられないことです。窓口が限定されているという意味では今回の発表は完全な自由化とは言えません。


■QDIIは実質的にその役目を終える

 しかし個人投資家の立場からすればこれまで施行されてきたQDII(Qualified Domestic Institutional Investors)プログラムより今回は一段と自由度が増したと評価できると思います。QDII制度は厳格な外国為替制度を維持しようとする国が採用する暫定的な制度です。そこでは極めて制限的でかつ煩雑なペーパーワークを金融機関に課し、その金融機関がスポンサーする形で投資信託などを通じて個人投資家に海外へ投資させるわけです。これは喩えて言えば「団体旅行でのみ海外への渡航を許可する」というルールなのです。つまり旅行社に与えられた枠の中で指定された期日に出発する感覚ですね。これに対して今回の外国株投資の解禁は言わば「個人旅行を解禁する。但し予約は特定の旅行社で行うこと。」という感じです。これなら団体行動に拘束される窮屈はありません。一般にお金は「自由な方へ、自由な方へ」と流れるものです。すると新制度で香港株が自由に買えるようになるとQDIIは早晩廃れると考えた方が良さそうです。(但しこれは個人投資家の取引に関してのみ。機関投資家は今後もQDIIを利用すると予想されます。)


■株価は本土からの資金の到来を一足先に織込みにかかる

 さて、今回の措置でどのくらい中国本土の投資家が資金を香港に持ち出すのでしょうか?。未だ発表直後ですのでこれを予想する事は難しいです。敢えて言えば余り巨額の資金は一度には動かない気がします。ただ、実際の資金の移動が限られているだろうという事と、それが今後のH株やレッドチップ、さらに中国本土のA株の株価形成に影響を与えないということとは別問題です。事実、今回の発表後の過去数日間の各指数の動きを見れば既に影響が出ていることが分かります。具体的にはA株の株価の上値は重く、H株やレッドチップ株の値動きは軽快だということです。これはどうしてかというと今回の発表直前の時点で中国本土のA株と香港のH株との間には約55%近い乖離があったからです。本来同じ株でありながらA株の方がH株より遥かに割高に買われていたわけです。その理由はこれまで中国国内の投資家は海外への送金を制限されており、割高と知りながらもA株を買わざるを得なかったからです。


■長期的には中国株の種類はひとつになる

 中国本土の個人投資家が香港に上場されているH株やレッドチップを買えるようになるということは長い目で見ればこれまでA株、H株、レッドチップなどといろいろな種類に分かれていた中国株の分類が将来的には廃止の方向へ向かうことを暗示しています。これは世界の機関投資家にとって重要な意味を持ちます。その理由はいろいろな種類に分かれていたものが統合されると全体としての流動性が増し、機関投資家が日頃参考にしている運用のベンチマークにおける中国株への配分比率が上昇することが考えられるからです。すると機関投資家としてもベンチマークについてゆくために中国株を買い増す必要が将来的には出てくるはずです。


■不自然な株価形成は次第に過去のものとなる

 さて、中国本土の個人投資家の投資戦略も今回の発表を機に今後変化してゆくことが考えられます。例えばこれまではH株を香港で出している企業が本土で上場すると上場初日にいきなり50%も高い値段で取引されるというケースが多くありました。しかし今後はそういう非効率な株式の売り出しの方法を中国政府はやめてしまう可能性もあると思います。私がそう考える理由はH株やレッドチップで既に取引されている会社をA 株で本土に上場するということはいろいろな歪曲の原因となってしまうからです。皆さんはH株がA株市場に上場されたとたんに爆騰するのはその会社にとって良いという風にお考えかもしれませんが、これは厄介な問題を引き起こします。なぜなら仮に新株を香港市場におけるH株の実勢価格に近い株価でA株としてオファーしたとして、そのIPO後、株価が急騰した場合、「その株に対する需要が旺盛であったにもかかわらず安く値決めしすぎた」という批判を受ける可能性があるからです。そういう批判をかわすため若しA株IPOのときに高めの価格設定をすると逆に中国本土の個人投資家からは「なぜ我々だけ不当に割高な値段でIPOを買わないといけないのだ」という不満が出るでしょう。新株ではなく政府の持ち株を売り出す場合はこの問題はさらに輪をかけて政治的に微妙な問題になります。これらの問題はいずれも一物二価で本来同一の証券に二つの全然違う値段がついてしまっていることからくる歪曲なのです。


■今回の改革の背景

 中国政府が本土の個人投資家に香港の株を解放するもうひとつの理由は人民元高の圧力を人民銀行だけの力で抑え込めなくなってきていることの表れでもあります。8月12日に発表された中国の7月のインフレ率は+5.6%と過去最高の水準でした。豚肉をはじめとする食品の価格の高騰が原因です。人民銀行はインフレを抑制するために金利を繰り返し引き上げていますが人民元の相場をある一定の範囲内に押さえ込もうとすると輸出代金の人民元への転換のニーズに対して、ドルを買い、人民元を売り向かう役目をしなければいけません。それははからずも中国国内のマネー・サプライを増加させてしまうことになるのです。これを債券の売りオペなどのステリライゼーション(不胎化)により中和させることに躍起になっていますが、穿った見方をすれば、どうやら人民銀行ひとりだけで相場に立ち向かうのは限界に近づいたという風にも取れるでしょう。


■H株の新しい妥当水準を求めて

 さて、中国本土のA株の平均PER(株価収益率)は現在過去12ヶ月の実績EPS(一株当たり利益)に基づいて約45倍、向こう12ヶ月のEPSでは34倍程度で取引されています。一方、H株のPERは過去12ヶ月の実績ベースでは約22倍、向こう12ヶ月では17倍程度で取引されています。A株の水準が高いのはあくまでも「他にお金をもってゆくところがない」という事情から生まれた、きわめて人為的な好需給に助けられた部分が大きかったです。従って今後A株のPERは国内投資家の資金が香港市場へと抜けてゆくことを考えると徐々に緊縮(マルチプル・コントラクション)を起こすと考えた方が自然です。従ってH株のバリュエーションとA株のバリュエーションが鞘寄せするとして、その折り合い地点は両者の中間点ないしはより現在のH株のバリュエーションに近い方だととりあえず考えておいた方が良さそうです。これはH株のEPS成長率を考えても大体確認できることです。即ちH株のEPS成長率は2008年が約25%、2009年が約17%成長と見られています。香港のH株は今後本土からの継続的な資金流入などの株価下支え要因がありますからEPS成長率よりもプレミアム、つまりPEGレシオ(PE to Growth Ratio)にして1倍以上で買われることは十分考えられます。





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最終更新日  2007年08月23日 17時55分58秒


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