「PEACEMAKER鐵」二次創作です。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。
沖田さんが両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。
総司と歳三は、港町から出て、順調に王都への旅を進めていった。
(このまま、何事もなく王都に着けばいいが・・)
そんな事を思いながら歳三が総司と共に街道を歩いていると、風に乗って遠くから賑やかな音楽と人の笑い声が聞こえて来た。
「町の方から聞こえて来ますね。」
「行ってみるか。」
二人が町へと向かうと、町の広場で旅芸人達が芸を披露していた。
(あの人達、確か前に会ったような気が・・)
総司がそう思いながら広場の舞台の方を見ていると、舞台に一人の少女が現れた。
(やっぱり、あの時の・・)
「どうした、総司?」
旅芸人達の後を総司が追い掛ける姿を見て、歳三も慌てて彼女の後を追った。
「待って、待って下さい!」
「あなたは、わたしを助けてくれた・・」
ユニコーン一座の団員・キキは、そう言って総司を見た。
「まぁ、貴族のお嬢様がわたし達に何の用かしら?」
キキと総司の間に割って入ったのは、キキの保護者代わりの団員・エミリーだった。
「突然で申し訳ないのだけれど、皆さんと一緒に働かせて頂けないかしら?」
「え・・」
「おいおい、一体何を言い出すんだい、お嬢さん?」
そう言って総司の前に立ったのは、赤毛の大男だった。
「俺は、団長のユリウス。何やら、訳有りのようだな?」
「はい、実は・・」
「まぁ、こんなところで立ち話も何だから、俺達が泊まっている宿へ行こう。そっちの兄さんも。」
「あぁ。」
ユリウス達が泊まっている宿は、運河沿いにあった。
「さぁ、狭い部屋だが、どうぞ入ってくれ。」
ユリウス達が泊まっている部屋は、最上階にある大きな部屋だった。
「うちは大人数だから、少し値は張るがこの宿に泊まっている間は宿代を稼ぐ為に宿屋の仕事を手伝ってんのさ。」
ユリウスにコーヒーを勧められ、それを一口飲んだ後、総司は自分達が抱える事情を彼らに話した。
「そんな・・あのお優しい奥様が・・」
「あなたも苦労したのね。」
ユリウスの母・クララは、そう言った後総司の手を握った。
「まぁ、俺達も色々と事情を抱えているからな。人手不足だし、雇ってやろう。」
「ありがとうございます!」
「ま、そっちの兄さんは用心棒として雇うにしては問題ないが、そちらのお嬢さん・・総司さんは、何が出来る?」
「剣術と馬術、弓術と刺繍が出来ます!」
「そうか。じゃぁ、総司さんは、暫くお袋と一座の衣装係をやって貰おう。」
「はい、よろしくお願い致します!」
こうして、歳三と総司は、ユニコーン一座の団員となった。
「あ~、今日はツイているぜ!あんた達が幸運の女神様を連れて来てくれたのかもしれねぇな!」
町での興行を終え、船で次の町へと移動しながら、ユリウスは上機嫌な様子でそう言って笑った。
「総司さんは、何でも出来るのねぇ。」
「わたしを助けてくれた時、見事な剣術で悪ガキ達をやっつけてくれたもの!ねぇ総司さん、今度わたしに剣術を教えて!」
「えぇ、いいですよ。」
総司はすっかり一座の皆と打ち解け、キキはまるで実の姉のように総司を慕った。
「ねぇ、あなたは魔女の国から来たのでしょう?向こうには、本当に魔女や魔法使いが居るの?」
「いいえ。でも、わたしの故郷には美しい花があるんです。」
「へぇ~」
「その花の花言葉は、“真実の愛”というのですって。」
「わぁ~、素敵!」
「そういえば、土方さんは?」
「あの怖い人なら、団長と話しているよ。」
「ありがとう。」
「キキ、総司さん、ここに居たのね。買い物に行くから、手伝って頂戴。」
「はぁ~い。」
キキと総司、エミリーは、王都の近くにある宿場町の市場で買い物をしていた。
「キキ、そのネックレスは、亡くなったお母さんの形見だと、昔言っていましたね?お母さんは、どんな人だったのですか?」
「亡くなったお母さんは、昨年流行り病で亡くなったの。このネックレスは、わたしと本当のお母さんを繋ぐ絆のようなものなんだって、話してくれたわ。」
「本当のお母さん?」
「わたしは、亡くなったお母さんと、お父さんの養女だったんだって。わたしには、二人のお母さんが居るんだって、亡くなったお母さんが話してくれたの。」
「そうなんですか。じゃぁ、わたしと同じですね。」
そんな事を総司がキキと話をしていると、総司は一人の男とぶつかってしまった。
「すいません・・」
「お怪我はありませんでしたか、レディ?」
そう言った青年は、美しい翠の瞳で総司を見つめた。
「あなたは・・」
「総司、帰るぞ。」
「隊長、隊長なんですか!?」
青年がそう言って歳三の腕を掴んだが、彼の手を歳三は乱暴に振り払うと、そのまま去っていった。
「土方さん、さっきの方、お知り合いですか?」
「さぁな。」
宿場町を出た総司達が王都に着いたのは、木枯らしが吹く頃だった。
「う~、寒い!厚手の上着でも持ってくればよかったな!」
「そうだね。」
これまで順調に稼いでいたユニコーン一座だったが、娯楽が発達し、多様化している王都の人々には、彼らの芸は全く見向きもされなかった。
「どうすりゃいいんだ?」
「ユリウス、あたしにいい考えがあるよ。」
クララは、知り合いの貴族に会いに、総司を連れてある場所へとやって来た。
そこは、教会だった。
「うわぁ~、凄い・・」
教会の中へと足を踏み入れた総司は、美しいステンドグラスの装飾が施された薔薇窓を見て絶句した。
「さぁ、こっちだよ。」
クララが総司を連れて行ったのは、金糸の美しい刺繍が施された紫のストラを肩に掛けた、一人の司祭の元だった。
「司祭様、お久し振りでございます。」
「クララさん、どうも。そちらの方は?」
「うちの一座の衣装係の、総司です。総司、こちらがこの教会の主任司祭の、グスタフ様だよ。」
「初めまして、総司と申します。」
「総司、とおっしゃるのですね。成程、“あの方”に良く似ていらっしゃる。」
「“あの方”?」
「魔女!」
クララの背後で悲鳴を上げた女は、そう言って総司を指した。
「皆さん、この娘は・・」
「誰か、この女をつまみ出せ!」
グスタフ司祭と数人の神父達が女を教会の外へとつまみ出そうとしたが、女は身を捩って暴れた。
「離せ~!」
「申し訳ありません、見苦しいところをお見せしてしまって。」
「あの、グスタフ司祭、さっきのは・・」
「どうぞ、お気になさらず。」
そう言ったグスタフ司祭は、力無く笑った。
「総司さん、こちらの方はわたしの知り合いの、クラディア子爵夫人だよ。」
にほんブログ村
二次小説ランキング