JEWEL
日記・グルメ・小説のこと720
読書・TV・映画記録2718
連載小説:Ti Amo115
連載小説:VALENTI151
連載小説:茨の家43
連載小説:翠の光34
連載小説:双つの鏡219
完結済小説:桜人70
完結済小説:白昼夢57
完結済小説:炎の月160
完結済小説:月光花401
完結済小説:金襴の蝶68
完結済小説:鬼と胡蝶26
完結済小説:暁の鳳凰84
完結済小説:金魚花火170
完結済小説:狼と少年46
完結済小説:翡翠の君56
完結済小説:胡蝶の唄40
完結済小説:琥珀の血脈137
完結済小説:螺旋の果て246
完結済小説:紅き月の標221
火宵の月 二次創作小説7
連載小説:蒼き炎(ほむら)60
連載小説:茨~Rose~姫87
完結済小説:黒衣の貴婦人103
完結済小説:lunatic tears290
完結済小説:わたしの彼は・・73
連載小説:蒼き天使の子守唄63
連載小説:麗しき狼たちの夜221
完結済小説:金の狼 紅の天使91
完結済小説:孤高の皇子と歌姫154
完結済小説:愛の欠片を探して140
完結済小説:最後のひとしずく46
連載小説:蒼の騎士 紫紺の姫君54
完結済小説:金の鐘を鳴らして35
連載小説:紅蓮の涙~鬼姫物語~152
連載小説:狼たちの歌 淡き蝶の夢15
薄桜鬼 腐向け二次創作小説:鬼嫁物語8
薔薇王転生パラレル小説 巡る星の果て20
完結済小説:玻璃(はり)の中で95
完結済小説:宿命の皇子 暁の紋章262
完結済小説:美しい二人~修羅の枷~64
完結済小説:碧き炎(ほむら)を抱いて125
連載小説:皇女、その名はアレクサンドラ63
完結済小説:蒼―lovers―玉(サファイア)300
完結済小説:白銀之華(しのがねのはな)202
完結済小説:薔薇と十字架~2人の天使~135
完結済小説:儚き世界の調べ~幼狐の末裔~172
天上の愛 地上の恋 二次創作小説:時の螺旋7
進撃の巨人 腐向け二次創作小説:一輪花70
天上の愛 地上の恋 二次創作小説:蒼き翼11
薄桜鬼 平安パラレル二次創作小説:鬼の寵妃10
薄桜鬼 花街パラレル 二次創作小説:竜胆と桜10
火宵の月 マフィアパラレル二次創作小説:愛の華1
薄桜鬼 現代パラレル二次創作小説:誠食堂ものがたり8
薄桜鬼 和風ファンタジー二次創作小説:淡雪の如く6
火宵の月腐向け転生パラレル二次創作小説:月と太陽8
火宵の月 人魚パラレル二次創作小説:蒼き血の契り1
黒執事 火宵の月パラレル二次創作小説:愛しの蒼玉1
天上の愛 地上の恋 昼ドラパラレル二次創作小説:秘密10
黒執事 BLOOD+パラレル二次創作小説:闇の子守唄1
FLESH&BLOOD 二次創作小説:Rewrite The Stars6
PEACEMAKER鐵 二次創作小説:幸せのクローバー9
黒執事 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:碧の花嫁4
火宵の月 BLOOD+パラレル二次創作小説:炎の月の子守唄1
火宵の月 芸能界転生パラレル二次創作小説:愛の華、咲く頃2
火宵の月 ハーレクインパラレル二次創作小説:運命の花嫁0
火宵の月 帝国オメガバースパラレル二次創作小説:炎の后0
薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻10
黒執事 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧の騎士2
薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て5
黒執事 現代転生腐向けパラレル二次創作小説:君って・・4
薄桜鬼 現代妖パラレル二次創作小説:幸せを呼ぶクッキー8
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ5
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法7
薄桜鬼異民族ファンタジー風パラレル二次創作小説:贄の花嫁12
火宵の月 現代転生パラレル二次創作小説:幸せの魔法をあなたに3
火宵の月 転生オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は10
黒執事 異民族ファンタジーパラレル二次創作小説:海の花嫁1
PEACEMAKER鐵 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華14
YOI火宵の月パロ二次創作小説:蒼き月は真紅の太陽の愛を乞う2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女0
火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜18
火宵の月 昼ドラ大奥風パラレル二次創作小説:茨の海に咲く華2
火宵の月 転生航空風パラレル二次創作小説:青い龍の背に乗って2
火宵の月×呪術廻戦 クロスオーバーパラレル二次創作小説:踊1
火宵の月×薔薇王の葬列 クロスオーバー二次創作小説:薔薇と月0
金カム×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:優しい炎0
火宵の月×魔道祖師 クロスオーバー二次創作小説:椿と白木蓮0
薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月10
火宵の月 遊郭転生昼ドラパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁1
火宵の月 現代転生パラレル二次創作小説:それを愛と呼ぶなら1
鬼滅の刃×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:麗しき華1
薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母13
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫20
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:黄金の楽園0
火宵の月 昼ドラ転生パラレル二次創作小説:Ti Amo~愛の軌跡~0
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:鳳凰の系譜0
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:鳥籠の花嫁0
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:蒼き竜の花嫁0
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:月の国、炎の国1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君0
コナン×薄桜鬼クロスオーバー二次創作小説:土方さんと安室さん6
薄桜鬼×火宵の月 平安パラレルクロスオーバー二次創作小説:火喰鳥6
ツイステ×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:闇の鏡と陰陽師4
陰陽師×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:君は僕に似ている3
黒執事×ツイステ 現代パラレルクロスオーバー二次創作小説:戀セヨ人魚2
黒執事×薔薇王中世パラレルクロスオーバー二次創作小説:薔薇と駒鳥27
火宵の月 転生昼ドラパラレル二次創作小説:それは、ワルツのように1
薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計9
F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:海賊と陰陽師1
火宵の月×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉54
バチ官腐向け時代物パラレル二次創作小説:運命の花嫁~Famme Fatale~6
火宵の月 昼ドラハーレクイン風ファンタジーパラレル二次創作小説:夢の華0
火宵の月 現代ファンタジーパラレル二次創作小説:朧月の祈り~progress~1
火宵の月 現代転生パラレル二次創作小説:ガラスの靴なんて、いらない2
黒執事×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:悪魔と陰陽師1
火宵の月 吸血鬼オメガバースパラレル二次創作小説:炎の中に咲く華1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:黎明を告げる巫女0
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:光の皇子闇の娘0
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:闇の巫女炎の神子0
火宵の月 戦国風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:泥中に咲く1
火宵の月 和風ファンタジーパラレル二次創作小説:紅の花嫁~妖狐異譚~2
火宵の月 地獄先生ぬ~べ~パラレル二次創作小説:誰かの心臓になれたなら2
PEACEMAKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で9
FLESH&BLOOD ハーレクイン風パラレル二次創作小説:翠の瞳に恋して20
火宵の月 異世界ハーレクインファンタジーパラレル二次創作小説:花びらの轍0
火宵の月 異世界ファンタジーロマンスパラレル二次創作小説:月下の恋人達1
火宵の月 異世界軍事風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:奈落の花2
FLESH&BLOOD ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の花嫁と金髪の悪魔6
名探偵コナン腐向け火宵の月パラレル二次創作小説:蒼き焔~運命の恋~1
火宵の月 千と千尋の神隠し風パラレル二次創作小説:われてもすえに・・0
薄桜鬼腐向け転生刑事パラレル二次創作小説 :警視庁の姫!!~螺旋の輪廻~15
FLESH&BLOOD ハーレクイロマンスパラレル二次創作小説:愛の炎に抱かれて10
PEACEMAKER鐵 オメガバースパラレル二次創作小説:愛しい人へ、ありがとう8
FLESH&BLOOD 現代転生パラレル二次創作小説:◇マリーゴールドに恋して◇2
火宵の月×天愛クロスオーバーパラレル二次創作小説:翼がなくてもーvestigeー0
黒執事 昼ドラ風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:君の神様になりたい4
薄桜鬼腐向け転生愛憎劇パラレル二次創作小説:鬼哭琴抄(きこくきんしょう)10
火宵の月×ハリー・ポッタークロスオーバーパラレル二次創作小説:闇を照らす光0
火宵の月 現代転生フィギュアスケートパラレル二次創作小説:もう一度、始めよう1
火宵の月 異世界ハーレクインファンタジーパラレル二次創作小説:愛の螺旋の果て0
火宵の月 異世界ファンタジーハーレクイン風パラレル二次創作小説:愛の名の下に0
火宵の月 和風転生シンデレラファンタジーパラレル二次創作小説:炎の月に抱かれて1
火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず1
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師0
薄桜鬼×天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿1
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰2
火宵の月 異世界ファンタジーハーレクイン風昼ドラパラレル二次創作小説:砂塵の彼方0
魔道祖師×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想うは、あなたひとり2
全2件 (2件中 1-2件目)
1
素材は、黒獅様からお借りしました。「黒執事」「ツイステッドワンダーランド」の二次小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。「僕に、構うな・・」シエルはそう言うと立ち上がろうとしたが、その足は生まれたての子鹿のように震えていた。このまま彼を放っておく訳にもいかず、セバスチャンはシエルを抱いて二階へと向かった。「あなたは人魚でしょう?それなのに・・」「何故、人間になれるのかって?僕達は、あいつらに薬を打たれたんだ。」「薬?」「三年前、僕達はある研究施設に連れて行かれた。その時、あいつが薬を打った。」「どんな薬なのですか?」「人魚を強制的に人間にさせるものだ。それを打たれたら、人間になった人魚は長く生きられない。だから、ジェイドをあの施設から助けたい・・」「無理をしてはいけません!」「うるさい、離せ!」シエルはセバスチャンの腕の中で暴れたが、暫くするとシエルは激しく咳込んだ後、血を吐いた。「彼の肺に、異常が見られます。人魚の肺は我々人間の肺よりも発達しているのですが、この子の場合は肺が発達し過ぎて身体に負荷がかかっている。」「先生、彼は研究施設の者から、人間になる薬を強制的に打たれたようです。彼は、その薬の副作用で・・」「その薬とは関係ないようです。」「そうですか・・」 セバスチャンは、病室のベッドで眠っているシエルの手を握った。 すると、シエルは微かに呻いてセバスチャンを見た。「ここは?」「病院です。あなたの肺は、大き過ぎて身体に負担がかかっています。だから暫く入院する事に・・」「入院だけは嫌だ!」「わかりました、では主治医の先生と相談する事にしますね。」セバスチャンはシエルの主治医を説得し、シエルは入院しない事になった。「余り無理をしない事、それだけを守って下さいね。」「わかりました。」セバスチャンはシエルを車で家まで連れて行った。「これから、あなたはどうしたいのですか?」「仕事を続けたい。お金を貯めて、ジェイドの所へ行くんだ。」「わかりました。ですがあなたは未成年です。働く時間帯は昼だけ、それだけでよろしいですね?」「わかった。」シエルは、週に三日、水槽の中で歌う事になった。「おや、あの愛らしい駒鳥のような歌声を持った人魚の姿が見えないね、どうしたんだい?」「申し訳ありません、シエルは昼にしか歌いませんので・・」「そうかい、残念だね。」シエルはドルイット子爵が苦手だったから、夜の営業時間帯だけ彼が店に顔を出すので、彼と会わなくて済むと思い、安心した。「坊ちゃん、学校に行ってみませんか?」「学校?学校なら海の中でも行ったぞ。」「海の中でも学校はあるのですか?」「まぁな。その学校では、人間と同じように数学や社会、経済学などを習った。」「そうですか。では、人間の学校では、あなたには物足りないかもしれませんね。」「どうして、急にそんな事を言い出すんだ?」シエルはセバスチャンが作ったハンバーグを食べた後、そう言って彼を見た。「このまま、あなたとわたし達の二人だけの世界に生きていいのかと思いましてね。あなたにはもっと広い世界を知って欲しいのです。」「そうか、それも悪くない考えだ。」セバスチャンの提案で、シエルはこの町にある私立の中高一貫の男子校に通う事になった。「一人でネクタイを結べないとは、情けない。」「う、うるさい!人間の服には慣れていなんだ。」「全く、これからはそんな事を言い訳には出来ませんよ。あなたは、“人間”として生活するのですからね。」「わ、わかった・・」朝の支度に手間取ったシエルだったが、何とか学校の入学式には間に合った。「歩き方も少しはマシになりましたね。」「まぁな。」「これは、薬です。あなたが研究施設で打たれた薬とは違って、人間でいられる時間が長くはありません。毎日一錠、欠かさず飲むのですよ。」「わかった。」「では、あなたに幸運を。」セバスチャンは、そう言った後シエルの唇を塞いだ。「何をする!?」「幸運のおまじないですよ。」「そんなもの、要らない!」シエルは顔を赤く染めると、セバスチャンに背を向けて校舎の中へと入っていった。(全く、意地っ張りなんだから・・)入学式に現れたその生徒が、入学式が行われる講堂の中に入って来た途端、全校生徒のみならず、教職員、そして保護者達が彼の美しさに心を奪われた。蒼銀色の髪をなびかせ、美しい紫と蒼の瞳を煌めかせたその少年の傍らには、長身で黒髪の保護者と思しき青年が立っていた。―あの人達、モデル?―もしかして、芸能人だったりして!―まさかぁ!やっぱり、こうなると思った―セバスチャンは内心溜息を吐きながら、自分の隣に立っているシエルを見た。「シエル、緊張していませんか?」「別に。」「そうですか・・」「これからこの学校で、楽しく過ごせそうだ。」入学式が終わり、シエルが教室に入ると、その場に居た生徒達が全員彼を見た。「では、それぞれ自己紹介を・・」「シエル=ファントムハイヴです。趣味は読書、好きな食べ物はガトーショコラです、よろしくお願いします。」シエルはそう言うと、愛想笑いを浮かべた。(シエル、上手くやっているのでしょうか?いじめられていないでしょうか?)「オーナー、今月の売り上げです、オーナー?」「すいません、ボーッとしていました。」「今月の売り上げは上々です、オーナー。ですが、ひとつ問題が・・」「問題?」「はい。ドルイット子爵が、あの人魚を夜にも歌わせろと言い出しまして・・」「シエルは、未成年なので夜には働かせる事が出来ませんと、今夜子爵がいらした時に伝えて下さい。」「わかりました。それよりもオーナー、そのガトーショコラ、どうされるのですか?」「えっ?」ボーっとしていた所為で、セバスチャンはガトーショコラを10個も作ってしまった。「・・仕方ありませんね、店に出しましょう。」「はい・・」セバスチャンはシエルの事が心配で、その日は仕事にならなかった。そんなセバスチャンの心配をよそに、シエルはクラスメイト達とすぐに打ち解けていった。「シエル君、セバスチャンさんと一緒に住んでいるんだ?」「まぁね。」クラスメイト達に自分が人魚であるという事は話さず、セバスチャンとは遠縁の親族同士だという嘘を吐いていた。「セバスチャンは、ここでは有名人なのか?」「有名人に決まっているよ!セバスチャンさんは、経済誌で特集を組まれている程の実業家なんだよ!」「一時期、芸能界にスカウトされた事もあったらしいよ。」「ふぅん・・」入学式初日、教室で配布された教科書と資料集をリュックサックに詰めたシエルは、校舎に隣接する図書館でセバスチャンの特集が組まれている経済誌とファッション誌に目を通した。そこには、何故か胸元を肌けさせたセバスチャンの写真があった。経済誌だというのに、そんなセバスチャンのグラビアページが数枚も続いた後、肝心のインタビュー記事は見開き2ページだけだった。初めて会った時からセバスチャンが只者ではない事に気づいたシエルだったが、閉鎖直前のラウンジを一ヶ月という短期間で復活させた彼の経営手腕は見事なものだった。ひとしきりファッション誌のセバスチャンのグラビアページを眺めたシエルが図書館から出ようとした時、彼は一人の男とぶつかってしまった。「す、すいません・・」「怪我は無いかい?」そう言ってシエルが俯いていた顔を上げると、そこにはドルイット子爵の姿があった。「おや、君は・・」「し、失礼します!」何だってこんな所で、あの男に会ってしまったのだろう―そんな事を思いながらシエルが帰路に着いていると、セバスチャンはラウンジで一人の男性と対峙していた。「セバスチャン、今度こそあたしのショーに出て貰うわよ。」「グレルさん、何度いらっしゃっても返事は変わりませんよ、お帰り下さい。」「相変わらずつれないわ~、でも、そんな所もいいわぁ~」美しい赤髪をなびかせた彼は、ラウンジから出て行った。「ただいま。」「お帰りなさい、坊っちゃん。学校はどうでしたか?」「まぁまぁだったな。」「そうですか。」セバスチャンは、シエルのガトーショコラを冷蔵庫から出す為、厨房へと向かった。にほんブログ村
2023.09.02
コメント(0)
素材は、黒獅様からお借りしました。「黒執事」「ツイステッドワンダーランド」の二次小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。セバスチャン=ミカエリスは、その日知人から招待を受けてある場所へと向かっていた。「おやおや、珍しいねぇ。君がこんな所に来るなんて。」葬儀屋と会ったセバスチャンは、渋面を浮かべた。「人付き合いは、この世界で大切ですよ。」「闇オークションに、人付き合いも何もないだろう?」「まぁ、そうですね。」セバスチャンがそう言って溜息を吐くと、闇オークションが始まった。「ご来場の皆様、本日の目玉商品の登場です!」司会者の男がそう叫ぶと、数人の男達が、台車に載せた何かを運んで来た。それは、黒い布に覆われていた。「さぁ皆様、ご覧あれ!人魚の登場です!」布が外され、ドーム型の水槽が現れた。その中には、蒼い鰭を持った人魚が入っていた。蒼銀色の髪に、雪のように白い肌を持った人魚は、怯えているようで不安そうに紫と蒼の瞳で辺りを見渡していた。「それでは、二千万から始めます。」「二千五百万!」「三千万!」セバスチャンは、人魚と目が合った。その瞳を見た時、セバスチャンは雷に撃たれたかのような衝撃を受けた。「三千万が出ました、他に誰かいらっしゃいませんか?では、三千万で・・」「三億。」周囲がざわめく中、セバスチャンは無意識に札を上げた。「他には誰もいらっしゃいませんか?では、そちらの方が人魚を落札致しました!」セバスチャンが闇オークションの会場から出ると、葬儀屋が彼の前に立ち塞がった。「いい買い物したねぇ。」「ええ。」闇オークションから人魚を落札したセバスチャンは、その足で経営しているラウンジへと向かった。「オーナー、お久し振りです!」ラウンジに入ると、支配人がセバスチャンの姿に気づき、慌てて彼のテーブルへとやって来た。「今日の売り上げは?」「それが、隣の店に・・」「そんな事だろうと思いました。」セバスチャンは溜息を吐きながら、店内の内装を見た。清掃は行き届いているが、壁紙はボロボロに剥がれているし、こんな状態じゃ潰れてしまうのも時間の問題だろう。「今すぐ、全従業員を集めなさい。緊急ミーティングを始めます。」「は、はい!」数分後、セバスチャンは従業員の前で、店を全面改装する事を告げた。「オーナー、それは本当なんですか?」「えぇ。」セバスチャンは店の老朽化が著しい事などを話し、ラウンジの改装工事中は、全従業員は有給休暇扱いにする事を決めた。「え、水槽を!?」「ここは、海が近いでしょう。海をイメージした巨大な水槽を店内の内装に取り入れたいと思いましてね。」「そうですか・・」ラウンジに、巨大な水槽が運ばれた事は、瞬く間に町の住民達の間に広まった。―ねぇねぇ、あそこのラウンジ・・―何でも、新装開店するみたいよ。―へぇ、楽しみ。インフェルノ・ラウンジは晴れて新装開店の日を迎えた。「皆さん、今日から心機一転頑張りましょう!」「オーナー、例のモノが到着しました。」「わかりました。」セバスチャンがラウンジの管理人室に入ると、そこにはあの人魚が入っている水槽が置かれていた。「迎えに来るのが遅くなってしまいましたね、シエル。」水槽の中に居る人魚―シエルは、怒りに滾っている紫と蒼の瞳でセバスチャンを睨みつけた。「あぁ、わかりましたよ。こんな狭い水槽の中に閉じ込められるのは嫌ですよね。さぁ、今から大きな水槽に移動しますね。」セバスチャンは人魚を大きい水槽へと移動させた。「おや、どうしました?」「僕に、見世物になれと言うのか。」「いいえ、あなたの飼育環境を改善したのですよ。さぁ、どうぞ。」「そうか。」シエルは巨大水槽の中に入ると、いきいきとした様子で泳ぎ始めた。「人魚だ、人魚が居る!」「いやぁ、まさか君が人魚を飼っているなんて思いもしなかったよ。」「いいえ、あの子は“特別”な存在ですよ。」「へぇ・・」劉はそう言うと、水槽の中で泳いでいる人魚を見た。「おや、あの子、何処かで見た事があるなぁ。」「本当ですか?」「うん。確か、三年前に双子の人魚が北の海で捕獲されてさぁ、双子の片割れは、政府の研究施設に居るよ。まぁ、要するに人体実験ならぬ、人魚実験だね。」「何故、そんな話をわたしに?」「だって君、あの人魚に惚れたんでしょう?」「馬鹿な事を。わたしは、ただの好奇心からあの子を飼っているだけですよ。」「ふぅん。」二人の会話を、シエルは水槽越しに聞いていた。三年前、自分には双子の兄・ジェイドが居た。生まれた時からずっと一緒だったジェイドと引き離されたのは、漁師が仕掛けた定置網にシエルとジェイドがひっかかりシエルは闇市場に、ジェイドは政府の研究施設へとそれぞれ引き取られていったからだった。(ジェイド、今どうしているのかな。無事だといいのだけれど。)シエルはそんな事を思いながら、耳に着けている蒼いピアスに触れた。このピアスは、三年前にジェイドと揃って着けたものだ。『シエル、僕達は離れていても、ずっと繋がっているからね。』(ジェイド、会いたい。)シエルは双子の兄を想って、静かに歌い出した。―まぁ、素敵な声・・―あの人魚が歌っているのかしら?「おぉ、何という美しい歌声!儚げで麗しい人魚を、わたしという名の水槽で永遠に飼っていたい!」「ドルイット子爵、お帰り下さい。」「また来るよ。その時は、あの人魚の事を詳しく教えておくれ。」「またのお越しを、お待ちしております。」ドルイット子爵を店の前まで送った後、セバスチャンは店の中に戻った。彼が水槽の方を見ると、シエルが何処か寂しそうな顔をしていた。「どうしたのですか?」「な、何でもない。」その日の深夜、セバスチャンが店の二階にある住居スペースで眠っていると、妙な物音が下から聞こえた。(何だ?)セバスチャンが、音が聞こえている下のラウンジへと向かうと、水槽の前に一人の少年が倒れていた。「大丈夫ですか?」その少年は、シエルだった。にほんブログ村
2023.08.25
コメント(2)