立冬の日と「源氏物語」(画像あり)
今日(11月8日)は立冬です。「源氏物語」の中に「立冬」にまつわる話が出てきます。「今日ぞ、冬立つ日なりけるもしるく、うちしぐれて、空のけしきいとあわれなり」物の怪によって亡くなった夕顔の君をしのぶ場面です。今朝(11月8日)の「朝日新聞」朝刊の「天声人語」にこの原文の箇所が紹介されております。立冬に至る以前から、源氏の君は、夕顔のことで心がちひしがれていた源氏の君は少しずつ回復します。そして、美しい庭を眺めながら右近と夕顔の君のことを語り合います。この場面は、「夕顔」の巻に記されております。このことから、源氏の君は紅葉のころから立冬の間まで、ずうっと夕顔の君のことを思い続けていたということがわかります。庭に咲く紅葉を眺めながら右近と夕顔の君のことを語り合う場面として美しい絵にも描かれており、インターネットで見ることもできます。この箇所の原文は、写真3行4字目から6行114字目までにおいて記されております。 夕くれ(暮)の志づ(静)かなるに、そら(空)のけしき(景色)いとあはれにおまへ(御前)のせんざい(前栽)かれがれに、むし(虫)のね(音)もな(鳴)きかれて、もみぢ(紅葉)のやうやういろ(色)づくほどに、ゑ(絵)にか(描)きたるやうにおもしろきをみ(見)わたして・・・・」 今日は、原文の現代語解読文をつけません。漢字を追っていくとおおまかにわかると思います。そのかわり、この原文の箇所がユネスコの画像で公開されておりますので下に掲示します。その下に英文の日本語訳(要旨)をつけます。 英文の訳は次の通りです。(要約です)「夕顔の君が亡くなったあとの一ケ月の間、源氏の君は重い病の中にあった。病み上がりの源氏の君は、やつれてはいるがその姿はあいも変わらず美しかった。静かな夕暮れ時、源氏の君は紅葉が色づきはじめた庭を眺めながら、生前の夕顔の君のことについて右近に尋ねた。夕顔の父は、三位中将であったことや、その父が亡くなったあと、頭(とうの)中将の正室の脅しによって身を隠していたおりに源氏の君と出会ったことを右近が話した。」こうして、源氏の君は「立冬の日」まで、夕顔のことをしのび思い出していることが「源氏物語」の中で描かれております。今日(11月8日)は、立冬の日、すこすづつ寒さが厳しくなってくる季節を向かえました。